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20 規則破りの強さ

 逡巡は一瞬。アクアリリィは的確に現状を把握し、乱入者であるルーファスに協力を申し出る。


「お願いします!」

「よし、なら行こうか、なっ!」


 アクアリリィは一旦後ろに退き、それを剛腕の怪人が追う。だがその間にルーファスがその体を差し入れ怪人の攻撃を受け止める。見た目で言えば怪人の大きさとルーファスの大きさはかなり違い、それほど強そうに見えないルーファスが一方的に負けそうに見えるがルーファスはあっさりとその攻撃を受け止めた。


「なにぃ!? その見た目で以外に力が強いじゃねえか!」

「当たり前だろ。お前と一緒でこれでも改造された怪人だ。まあ肉体特化のお前ほどではないだろうけどな」

「怪人! どこの『悪の組織』の奴か知らねえが、なんで『正義の味方』に加勢しやがる!」

「もともとはお前らがルールを破ったからだろ。まあうちの首領ならそれもまた『悪』とか言いそうだが、それでも『悪』の美学でルールを守るのもまた『悪』とかもいいそうだし。どうでもいいか。別に『正義の味方』の手伝いをしてるんじゃなくて、後々のためにお前らを叩き潰すつもりなだけだ」


 『悪の組織』として『正義の味方』の手伝いをすると言うのはまた話が違う。今回に関しては全ての組織が入り乱れての乱戦状態であり、状況的にお互い手を組むことはあっても一方的な手伝いではない。そもそもの原因はここの『悪の組織』にあり、それさえなければこんな状況にはなっていなかったはずである。ルーファスにとってはそもそもからしてどうでもよく、基本的にはお仕事、自分の組織の首領の意図を考慮しての行動である。まあ、面倒ごとは嫌いなのでさっさと仕事を終えて帰りたいのが本音だろう。


「おおおおおおおおおおおおおっ!」

「…………」


 剛腕が振るわれる。それを涼しい顔でルーファスはあっさりと受け止める。変わらない。威力が変わっても、力の掛け方が変わっても、受けるその力が変わらない。受け方が変わらない。全くと言っていい程、ルーファスは状況的に変わらない。


「何で! 何でそんな簡単に受けられる!」

「さあ? 何でだろうな」


 口の端を少しだけ上げて笑うルーファス。ルーファスは怪人としての改造を受けているが、しかしそれでも圧倒的に強力であると言うわけではない。ここの『悪の組織』の怪人は肉体的な改造を徹底的に受け、とても肉体的に強い。一方ルーファスはジャシーンの改造を受け肉体的に強くなっているが、しかしその肉体が最強化というとそんなことはない。そもそも能力を付与されるような改造を受けているのに肉体も強力にする、なんてことは本来ありえない。強さ的なバランスを考えれば肉体の強化はある程度、少々強くしたとしてもここの『悪の組織』のように徹底した改造はされないだろう。

 何故ルーファスはそこまで簡単に相手の力を受け止められるほどに強いのか? それは当然彼の能力によるものである。

 ルーファスの能力は"規則破り"。その能力は少々規格外の異常な能力である。本来、それはこの世界から外れる能力である。いや、そもそもそういう能力であるのだが、それは使い方次第では様々な用途に使える。先ほど使っていたように、自分の姿をこの世界から外し見え無くしたり、存在を外し外部からの干渉を避けたり。しかし、もちろんそういった使い方だけではなく、自分にかかる力を世界から外したり、ということもできる。重力や引力はもちろん、相手からの攻撃による力もまたその対象にできる。また、単純な力という点においても、この世界における力の基準要素から自分が外れ、力の均衡から外れることで相手の力に対抗するために必要な自分の力を変更することができる。わけがわからないが、単純にルーファスの"規則破り"はかなり滅茶苦茶な性能を持ち、どういう戦闘相手でも対等以上に戦える能力であると考えればいいだろう。つまりはチート野郎である。


「ふんっ!」

「っと」

「はあっ!」

「ほい」

「くそがああああああああああっ!!」

「ふっ!」

「うぐっ! くっ、痛くはねえが、結構な威力になりやがって!」


 一方的に攻撃を受けるだけではなく、ルーファスは反撃も入れている。とはいえルーファスの一撃は強力だが、相手の防御能力を考慮すれば簡単に通用する者ではない。アクアリリィのそれよりは確かにダメージはあるが、結局のところ相手に回復能力があるためあまり意味はない。


「はっ! だがその程度の攻撃でどうにかなるものじゃねえっ!」

「そうだな。さっき攻撃を受けてたが、すぐに傷が回復していたからなあ……ちょっとダメージを与える程度じゃダメなんだろう。回復するならな」

「何を言ってやがる!」


 にやりとルーファスは笑う。と、そんなやり取りがされているところに後ろから声がかかる。


「避けてください!」

「はあっ!」

「なにっ!?」


 アクアリリィの声を合図にルーファスはその身を前へと、怪人へと攻撃戦と傾ける。それに対応しようとする怪人だが、ルーファスはその前にその姿を消した。それに面食らう怪人だが……それ以上に、その後ルーファスの後ろから流れ込む水流が怪人を襲う。


「ぎゃあああああああっ!?」


 水は聖なる力、悪を払う魔法少女の魔法の力が籠められたもの。いや、それが聖なる力を秘めているかは謎だが、対『悪』の『正義の味方』の力ではある。その一撃が怪人を襲い、怪人は痛みにより叫ぶ。全身が水流に込められた力で焼かれ、ぼろぼろになる。


「ぐ、ぐうううう! だが! 俺は死なん!!」


 水流は強力な攻撃であるが、それ自体が極端に強い一撃ではなかった。複数体の敵がいれば全体攻撃ができるくらいなのであるがその分単体相手には威力が抑えられてしまう。そのため水流が収まった後もまだ怪人は立っていた。だがそれだけである。怪人の傷は回復しない。


「な、な、なにが!?」

「無敵の回復能力がなければ安全安心だよな?」

「何だとっ!?」


 "規則破り"の能力は自分のみを対象にする能力ではない。他者もその対象にできる。ルーファスは怪人の持つ回復能力、それを怪人から外したのである。それゆえに怪人は回復しなくなった。その肉体の強さは残るが、だがこの水流に肉体をボロボロにされた怪人では……勝ちを拾えないだろう。


「じゃあなっ!」

「おごっ!?」


 ぐしゃりとその頭部が破壊される。容赦のないルーファスの一撃、それを以てこの場での戦闘の決着がついた。

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