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19 再び共闘の魔法少女

「くっ……!」

「おらあっ! どうしたこらあっ! 立派な啖呵を切って挑んできた割りにはそこまで強くねえな! へっ! 結局『正義の味方』の女野郎ってのはその程度か!」

「女か野郎かはっきりしてほしい所、ですね!」


 剛腕を誇る怪人。この場所の『悪の組織』の怪人は戦ってきた限り、その肉体に自信を持ち、実際に肉体に高い強化を施されている怪人たちである。『悪の組織』もそれぞれに特色があり、ジャシーンを例にするのならば、あの組織は改造と特殊能力の付与が主で、そこからさらに七つの大罪を模した部隊に振り分けその性質を決定づける。いや、性質が決まっているからこそ舞台に振り分けられるのかもしれない。他の組織でも基本的に悪巧みに長けた組織、怪人として数で責めることを主体とした組織、この組織のように肉体に極振りというわけではないが、怪人の強さに重点を置いた組織と色々とある。

 この組織は極端に肉体的な強さに重きを置いており、それゆえに魔法少女である彼女には戦いづらい相手であった。いや、厳密に言えば、ここにいるこの相手が厄介だけだ。道中の相手は彼女でも対処可能なレベルだった。まあ、彼女は怪人を倒す事よりもこの組織のボスを倒すこと優先としており、戦闘不能にするのが主だったわけだが。まあ、そういう細かい話はいい。結局のところ、目の前の相手を倒せるかどうかの方が重要である。


「はっ!」


 魔法少女である彼女……まあ、誰かというとアクアリリィであるが、その彼女は魔法を使う。揺れる水滴を大きくしたかのようなエネルギー弾、それを生み出し相手の怪人にぶつける。剛腕の怪人はそれを腕で受ける、または叩き落す。触れると同時にエネルギー弾は水球を破壊したかのように破裂し、そのエネルギーを弾き広げ相手の体を侵す。

 それにより怪人はダメージを受けるが、しかし相手はその肉体に重きを置いた改造によりかなり高い防御能力を有していた。それだけならば何度も攻めればいいだけなのだが、相手の能力はそれだけではなかった。


「流石にこの道を任されるだけの怪人ということですか……! 先ほどから攻撃が通じない!」

「はっ。お前の攻撃は痛ってえな。だがな! 俺の体はそんな攻撃には負けねえ! それにだ! 多少攻撃を受けた程度なら、この体の回復力ならどうとでもなるんだよ! やるならもっと強力な攻撃をやるんだなあ! はーっはっはっはっはっはっ!」

「くっ……!」


 怪人の剛腕が振るわれる。怪人の最大の攻撃能力はその剛腕であるが、全体的に肉体の能力が高い。アクアリリィは肉弾戦等も幾らできるがやはり魔法少女らしく主体の攻撃は魔法攻撃。そして、魔法少女の魔法攻撃は相応に準備がいる。もちろん先ほど使ったようなエネルギー弾、使い慣れた基本的な攻撃であればそれほどの時間や余裕を必要としないが、怪人の言うもっと強力な攻撃となると話は違ってくる。多くの魔法少女は自分に合った強力な魔法攻撃を有する。しかし、それを使うにはある程度準備を有する。例を挙げれば魔法の詠唱とかそういう感じのものや魔法陣の展開、魔力を籠める、溜めるなど。儀式的な物であるが、そういうものをしないと中々強大な攻撃は出来ない。少女系統のファンシーな魔法少女ならば、それこそ感情を力として強力な攻撃をしたりもできるが、彼女たち大人系統の魔法少女は理論的な内容が必要なのである。たとえ不可思議な内容であったとしても。


「はあっ!」

「効かん効かん! はははははは! おらっ!」

「ぐっ!?」

「防ぐじゃないかあっ! だが所詮女の弱々しい肉体! 『正義の味方』だろうと変わんねえなあそういうのはっ!」

「女であることは関係ないでしょう!」


 アクアリリィが反撃する。彼女も魔法を使い身体強化を行いそれなりの一撃は叩きこめる。だが、魔法よりは威力が低い。


「弱いっ!」

「くっ、っと!」

「身軽だ! 動きはいいが、所詮魔法使い、魔法少女! 女野郎は大人しく家に帰ってメソメソ泣いてるんだなあっ!」

「っ……!」


 文句を言いたいが、それを言う余裕がアクアリリィにはない。怪人の言っていることは論理的ではないし、安易な女性軽視、女性蔑視ともいえる内容だ。いちおう男女平等が謳われる世の中であるのだからそういう発言はよろしくない。とはいえ、それに文句を言えるほど彼女は強さを発揮できていない、いや、その口を塞げるだけの行動が結果として伴っていない。だからといってそれを許していいわけではないのだが、戦いにおいて敗者の発言では商社の発言を覆すのは難しい。勝てば官軍負ければ賊軍とも言う。勝てない側が言った所で負け犬の遠吠えだ。


「どうにか……少し余裕ができれば、まだなんとかできなくもないのですが……!」


 今この場にいる魔法少女は彼女一人。『正義の味方』はここにただ一人。どうしようもない状態であった。


「分が悪い状態みたいだが、手助けがいるか?」

「っ!?」


 ただ、そこに一人。手助けに入る『悪の組織』の怪人がいた。






 ここの『悪の組織』のボスがいる場所を探し、ある怪人……まあ、ルーファスがその場所を探していた。そして彼はそのルートを見つけたのである。ただ、そのルートの途中、向かう先では戦いの気配、戦闘音がしているわけだった。


「……もう既に誰か来ているのか。『正義の味方』か、『悪の組織』か、まあどちらにしても面倒そうな気もするなあ」


 ジャシーンはあまり仲のいい『悪の組織』というものはいない。まあ、そもそも各『悪の組織』はそれぞれ独立しており、それぞれの方針の違いもあり、時々手を組むことはあるが、基本的には相いれず敵対する物なのである。それゆえにこういう場では功を争い戦闘になることも珍しくない。『正義の味方』なら言わずもがな。ゆえにどちらであっても面倒だ。なお、ジャシーンだったらどうか、と言われるとそれもまた面倒ごとになりそうであるという話になる。ルーファスは他の部隊とあまり仲が良くない。まあ、他の部隊もそれぞれ他の部隊と仲がいいわけではないが、一番仲が悪いのは基本的にルーファスの『傲慢』の部隊である。これに関しては首領の覚えがいいとか、ルーファスが暗殺じみた所業を行っているからとかいろいろと理由はあるのだが。


「……いや、なんだろ。縁があるのかねえ?」


 ルーファスの向かった先、道を守っている『悪の組織』の怪人と戦っていた『正義の味方』は魔法少女、アクアリリィである。ルーファスとしても一応の知り合いであり、どこかルーファス達との争いは避ける傾向のある比較的対応しやすい魔法少女。


「っと……あまり余裕はなさそうか」


 ルーファスはのんびりと彼女の戦う様子を見守っているが、しかし彼女の状況はあまり良くない状態である。魔法は有効打にならず、肉弾戦では圧倒的に負けている。技術的な面では勝っているが、相手の治癒能力とその肉体の能力に任せた一方的な攻撃はアクアリリィの攻撃機会を大幅に減らしている。魔法少女の戦闘能力はそもそも魔法、その名前に恥じない魔法が一番の攻撃手段であり、彼女の様に肉弾戦ができる魔法使いもいるが、しかしそれはあくまで護身術や近づかれた相手に対処をできる程度の物。肉体を用いた戦いという点では通常怪人側に有利がある。


「しかたない、手助けをしますか。知らない相手ではないしな」


 無視して先に進めるが、アクアリリィは知り合いである。『正義の味方』とはいえ見捨てて進むのはどうか。そう思い、ルーファスは彼女の戦闘の手助けを行うこととした。


「分が悪い状態みたいだが、手助けがいるか?」

「っ!?」


 そうして、ルーファスはアクアリリィに話しかけたのである。

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