表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/45

02 奇妙な怪人VS魔法少女

「ひ、ひぃっ……」


 背広姿の結構なお年を召された男性。いうなればそれは国会議員というか、公務員的な職員のような雰囲気、それも管理職、その頂点の偉い人みたいな雰囲気をしている男性。そんな男性であるが、何故か縄でぐるぐる巻きにされてどこかの倉庫……物置のようなものではなく工場の倉庫のような広い倉庫に座らされている。


「ああ、大人しくして置いてもらえるか? 別に俺はなんもしないからさ。っていうか、知ってるだろ? 『悪の組織』。うちは『ジャシーン』って組織で、俺はそこの怪人。あんたんとこの市庁舎に襲撃かけて、そこにいた職員を全員捕まえた。それで一番偉いあんたはここ、他のは市庁舎の広い部屋にまとめて放り込んでる」

「あ、『悪の組織』……だと!?」

「そうそう。ま、ここであんたを捕まえたのはいいんだけど、ほら、取り決めあるだろ? あれで『正義の味方』を待たなきゃいけないんだ。まあ、面倒だけどうちもそのルールは守ってるから従わなきゃいけないし」


 『悪の組織』も『正義の味方』も今ではどこの国、どこの場所にいても基本的なルールには従わなければいけない。『悪の組織』の目的は幾らか性質的な違いはあれど、『世界征服』が目的である。その一歩、というらけではないが世界を支配するための手順として村、町、市などの小さな範囲から掌握していくのが基本となっている。だから今回彼らが行っているように、市庁舎などに攻撃を仕掛け、そこで働いている人物たちを捕縛し従える事が多い。

 もっとも、『正義の味方』の組織の一員がその行いを咎めに来て『悪の組織』と戦い奪い返そうとしてくる。『悪の組織』の一方的な行いにならないよう、また過度にお互いが戦い合い周辺の被害が出ないようにするための行動だ。『悪の組織』が勝てばその場所は次に『正義の味方』が来て『悪の組織』に勝ち取り返すまでは彼らの支配下にある。そのまま他の村、町、市と掌握していけば最終的にその県の支配もできることだろう。そこまでいって、『悪の組織』として本当の意味での第一歩と言えるだろう。

 まあ、そういった事情があるため『悪の組織』もあまり過度なことはできない。後の支配にも影響をきたすためある程度は被害や悪行も加減しなければならない。昨今の世の中では『悪の組織』もあまり活動しやすい社会観ではない。そもそも『世界征服』自体に色々と都合が悪い、面倒ごとが多い、何でそんな大変なことをしなければならないのかと思うものも多いだろう。

 今この市庁舎にいた人物を部下とともにとっ捕まえ、『正義の味方』の来訪を待つ彼も『悪の組織』に所属していながらそう思っている人物の一人である。

 さて、そんな細かい色々な事情についてはさておき。どうやら『正義の味方』が訪れたようで、市庁舎の一番上……おそらく市長である人物を捕まえている彼の下に一人の女性が報告に来る。当然彼の下に来る彼の部下ということであるのだから『悪の組織』、『ジャシーン』の怪人の一人である。


「隊長ー! 魔法使いが来ましたー!」

「おー。魔法使い? どういうタイプ?」

「魔法少女っすねー。えっと、前に助けた時に見たことある、大人と子供の中間くらいの魔法少女っす」


 魔法少女。『正義の味方』の中ではそれなりにメジャーな方だ。ただ、魔法少女の多くは本当に子供向けのタイプの魔法少女が多い。ステッキやコンパクト、可愛らしい使い魔を携え可愛らしいふりふりリボンな服に変身シーンを混じえ着替える。そんなタイプの魔法少女だ。しかし今回はどうやらそういうタイプのものではなく、ファンシーでファンタジーな魔法少女ではなく、どちらかというと数式や化学などを中心とした構成の技術を持つメカニカルなタイプの魔法少女である。もっとも、そういう魔法少女もまた変身シーンが存在したりするのだが。流石に子供らしいファンシーでファンタジーな戦闘手法は使わないのだが。


「とりあえず部下全員に引きあげ準備をさせておけ」

「え? 引きあげるんっすか?」

「俺が魔法少女と戦う。俺が負けた場合、全員即逃げる。いつも通りの流れだろ?」

「まあ、確かにそうっすけど……」

「負けなければ逃げなければいいだけだ。うちの組織も無駄に戦って死亡者増やすのもあれだろ。できれば無駄死には減らしたいしな」

「自分が死んだ後のことを考えてどうするんっすか……まあ、一応皆に言っておくっすけど……」


 そんなことを話している間に、外からどたばたと争う音がし始める。『正義の味方』の魔法少女、それがどうやらこちらに向かってきているらしい。外で待機している『ジャシーン』の雑魚構成員、それが襲ってこないからと言って『正義の味方』が見逃すことはない。そして彼らは雑魚という言葉にふさわしく、大して強くはない。戦隊ものでもライダーものでもよくあることだが、雑魚構成員とやってきた『正義の味方』の一員との戦いは雑魚構成員の敗北で終わる。


「ほら、さっさと裏からでてって全員纏めとけ。今やられているのは流石に助けようがない……か?」

「死んでなければ回収しておくっす……隊長、死なないでくださいっすね?」


 そう言って彼の部下である女性の怪人は分かりやすい倉庫の入り口とは別のルートで外に出る。ここでの戦いの結果がどうなるとしても、彼女とここで魔法少女と戦った構成員以外は生き残ることができるだろう。恐らく。彼女は敵討ちくらいはしそうなところはあるが。


「さて……」


 ばん、と扉を開ける音がする。わかりやすい登場シーン。もう少し『悪の組織』の一因を相手位にしているのだから警戒心位あってしかるべきものだと思われるのだが……まあ、『悪の組織』の人間にも一抹のプライドというものはある。もしくは悪の美学というやつが。そのあたりはそれぞれの組織で違ってくるので何とも言えない所であるが。


「よく来たな、『正義の味方』の魔法少女!」

「ええ! 『悪の組織』の怪人! えっと、確か『ジャシーン』とか言う組織でしたかしら!?」

「その通りだ。俺は『ジャシーン』の第一隊の隊長……怪人としての名前はルーファスだったか。お前は何者だ?」

「名乗られたのならば名乗り返すのが筋でしょう! 私は魔法少女、イエローデイジー! あなた方『悪の組織』の悪人を滅ぼす者!」

「……強気だなあ」

「ルーファス……そういえば先輩に聞いたことがありますわ! 油断するなと言われています! 全力で行かせてもらいますわ!」

「お嬢様かねえ、話し方的に」


 どうでもいいことを怪人の男……ルーファスが思いつつ、イエローデイジーと名乗った魔法少女との戦いが始まった。『悪の組織』の怪人と『正義の味方』の魔法少女、その二者の戦いの始まりである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ