18 他の『悪の組織』の中で
街を予告もなく空を飛び、その空を飛んだ飛行船から建物とその広場へと降り注ぎ、その周囲に破壊を巻き散らした『悪の組織』。その被害は大きく、しかし降り注いだ怪人たちは退治することができた。だが、その『悪の組織』はルールを破った真に『悪』である存在。他の『悪の組織』にとっても、『正義の味方』にとっても絶対に倒さなければならない許してはいけない相手。それゆえに、全て……とはいかないが、周辺にいる多くの『悪の組織』と、『正義の味方』のほぼ全員が集まりその組織に対し襲撃をかける。
同時にこれは『悪の組織』と『正義の味方』の大きな戦いにもなる。なぜならそこにいる怪人がどこの『悪の組織』の物かわからないからだ。いや、あくまでそう言う名目である。そういう名目で『正義の味方』はそこにいる全ての『悪の組織』の怪人を殲滅せんと働く。また『悪の組織』の怪人側も、そんな『正義の味方』を相手に抵抗しないわけもない。彼らは自分たちを殺そうとする『正義の味方』に抵抗すると言う建前を持って、彼らと戦い合うのである。実質的にはルール違反を犯した『悪の組織』を滅ぼす最中、他の『悪の組織』にも大打撃を与えると言うのが『正義の味方』の目標であり、『悪の組織』から奪えるだけ奪い欲望の限りを尽くしたうえで『正義の味方』の数を減らすというのが『悪の組織』の目標である。
そしてそんな戦いの舞台、今回のルール違反を起こした『悪の組織』の真ん前までジャシーンの一団も来ていた。そして、彼らは既に戦いが行われている気配を感じ、首領の戦闘開始の一声を切っ掛けに侵入しそれぞれのしたいことをあに行ったのである。相手の組織の壊滅はどこにいったのやら。
「首領は戻るんですか?」
「うむ。我が殺されれば組織そのものが瓦解するからな。まあ、我が殺されることはそうそうないのだが……なに、油断大敵よ。『悪の組織』の長は組織の最も奥で待ち受けるのが古よりの習わし。存分にその力を振るってくるように!」
そう言ってジャシーンの首領はその場から去っていく。彼の役割はあくまで組織の人員の統率。その統率している彼等に指示を与え、その彼らが組織を襲撃し中に入って言った以上その役割は終わった。彼自身が動いてもいいが、彼の言う通り彼が死ねばジャシーンは瓦解する。仮にも『悪の組織』の首領、並大抵の戦いで負けることはないが、しかしそれでも命の危険はあるだろう。ゆえに彼は自身の組織へと戻り、己の部下からの吉報を待つのである。
「ふう……」
「行かないんっすか?」
「行くさ。サテラ、好きにしていい。死なないように、負けないように、捕まらないように。それだけはしっかりとしたうえで、目標であるここの組織のボスを叩き潰す。それさえできればそれでいい。他は特に気にするな。どうせ他の隊が頑張るだろうしな」
「了解っす! じゃあ、私は行ってくるっすから!」
サテラも突っ込んでいく。そもそもこの『悪の組織』の襲撃に関しては雑魚構成員を連れてきても物の役に立たない。怪人相手に雑魚を連れてきても仕方がないし、多くの『正義の味方』を相手に雑魚を連れてきたところで掃討されるだけ、基本的に必要なのは怪人級の強力な存在なのである。隊長クラスであればなおいい。サテラは一応副隊長級だが、別にルーファスと入れ替わったところで特に問題はない。まあ、彼女とルーファスならばルーファスの方が上なわけであるが、つまりはサテラも隊長級に強いと言うわけである。まあ第一隊は怪人がルーファスとサテラしかいないのでこの強さが必要不可欠だったりもするのでそうなるのは仕方のない所であるが。
「……さて、行きますか」
ルーファスも己の姿を消し、組織の建物の中へと入っていく。彼の目的はただ一つ。余計な戦いは基本的にせず、倒すべき目標のみを倒す。つまりは自分たちの休日をぶち壊した『悪の組織』のボスを叩き潰しに行くのであった。
「おおおおおおっ!!」
「はっ!」
「行くぜっ!」
「おあらっ!!」
各場所で『正義の味方』とここの『悪の組織』の怪人、他の『悪の組織』の怪人とここの『悪の組織』の怪人、そしてこことは関係なく『正義の味方』と『悪の組織』の怪人が争いを行っている。
「はあ……まあ、面倒に巻き込まれないから良いんだけどさ」
そんな戦いが行われている横をルーファスが通り過ぎていく。存在をこの世界から外し、どんな攻撃も無効にできる"規則破り"は隠密能力としてもかなり強力だ。攻撃の無効だけではなく、他者に気づかれることなく移動することもできて実に有能だ。おかげでどこのだれかと戦うこともなく先へと進むことができる。
「……なんで『悪の組織』同士が戦ってるんだかなあ」
たまに『正義の味方』と『悪の組織』の戦いではなく、『悪の組織』同士の戦いが行われていることもある。彼らも様々な色々な主張がある。まあ、そういうことで行われているのだろう。利害の一致……いや、この場合は利害が一致しなかったからか。なお、その戦いに関してはここの組織は関係ない。
「うちの所も戦ってるな……何をやってるんだか。ま、それぞれの隊の方針はそれぞれの所で決めるのが普通だからな」
首領の意思があるとはいえ、基本的にそれぞれの部隊の方針はそれぞれの部隊で決められている。なのでそれぞれが何をしていたところでルーファスには関係ない話である。まあ、被害を増やさないでほしい所ではあるだろう。彼が仕事をしなければならない頻度が増えてしまうので。
「しかし、道が分からないな……地図はないのか地図は。ああ、まあ、こういう時もあるからうちもないよなそういうのは……」
『悪の組織』の本拠地に地図があった場合、すぐに『正義の味方』がボスのところに急行してしまうことだろう。ゆえにそういうどこに何があるのかを示す地図のようなものはない。基本的にそういうのは直接案内されて覚えるしかない。まあ、隊長格でもなければあまりあちこち行くようなこともないので覚える必要性もないのだが。
「面倒な……とりあえず、なんとなく、うちの組織を思い出しながら探すか。基本的に『悪の組織』はどこもそこまで極端な差っていうのはないものだからな」
基本的に『悪の組織』はどこも『悪の組織』、似たり寄ったりである。そもそも発端となる『悪の組織』から今の『悪の組織』に派生したような形になっている。そのためだろうか。基本的にどこの『悪の組織』もそこまで形態、性質的に大きな差はないことが多い。ならばその本拠地とする建物もそうなっているのではないだろうか。
「……とりあえず、入り口からああ来てこう来て……やっぱりルートちがうか。ま、しかたがない。えっと、外観から推測しよう」
構造が違ったため次の案。外から見た上での構造である。まあ、基本的に『悪の組織』の本拠地がわかりやすく外に露出しているわけでもないので、入り口部分から見た上での大雑把な形での感じになるが。
「確か飛行船持ちだったな。空を飛ぶ物は何処から飛ぶ? そっち方面にボスがいるか? そもそも上じゃなくて下に伸びてる。可能性的には近寄りの可能性はあるが……階段? 流石に階段で移動なんて言うのは『悪の組織』らしくない。あるとすれば回廊か何かだろうな。探してみるか」
色々な推測を重ねながら、ルーファスは隠れて移動しつつボスを探しに行く。重要なのは結局のところ構造とかそういう物ではなく、ボスがどこにいるか。まあ、この場合ボスがのんびりと一番奥で待機しているとも限らないので何とも言えない所だが、少なくともジャシーンの首領で考えるなら確実に一番奥で待っていることだろう。ゆえにそこへと向かう。




