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14 怪人二人、魔法少女二人

「あーもしもし」

『もしもし。すみません、私の後輩の携帯電話から連絡を入れさせてもらっています』

「あ、はい。えっと、今落ちてた電話を拾ってそれにかかってきた電話に出てるんっすけど……」

『はい。そのスマートフォンは私が落とした物です。電話番号も間違っていませんし、確実にそうだと思うのですが……』

「あ、そうっすか。えっと……どうすればいいっすかね?」

『返してもらいたい、と言った所なのですが……そのスマートフォンは何処で拾いましたか?』

「休憩所に落ちてたんっすけど……えっと、ここはショッピングセンターのどっかの休憩所で……」

『恐らくは今渡したがいる場所と同じ場所だと思います。私達もスマートフォンを落としたことに気づいてまだ探し回って建物から出ていないので、恐らくは同じ場所でしょう。ですが……そちらがいる場所がどこというのがわからないなら、御手数になりますが……南側の入り口に来てもらえないでしょうか? 移動に手間がかかりますし、面倒だとは思いますが』

「あー、それくらいなら……かまなわいっすよね?」

「ああ」

「大丈夫っす。えっと、南側の入り口……一階のっすか?」

『一階以外に出入り口はないと思いますが、はい、そちらです』

「了解っす。ではそちらに向かうんで」

『よろしくお願いします』


 そうして落としたスマートフォンを介したやり取りが終わる。


「そういうことなんで、南側の入り口に行くっすよ」

「ああ……」

「どうしたんっすか? 何か妙な表情をしてるんっすけど」

「いや、微かに会話が聞こえてたって言うか、怪人だから耳がいいってのがあるんだが……」


 サテラもルーファスも悪の怪人であり、その身体は怪人らしく活動できるように改造されている。『正義の味方』のように変身したりスーツを着ないと活動できない、ということはなく、悪の怪人はその根っこから完全に肉体的に改造されることが多い。そういう点では『正義の味方』の中の改造人間タイプは悪の怪人に近いと言える。そういったいつでも大規模な悪事を行える脅威、という点において悪の怪人はとても危険なものであるが基本的に『悪の組織』と『正義の味方』が結んだ条約のおかげもあり、そういった危険な出来事はめったに起き得ない。もっとも、時折そういった約定を破る存在も出るのがまた『悪の組織』の面倒な所である。何せ彼らは『悪』の存在。決まり事を破ることを平気でやってくる。


「会話が聞こえてたなら何を気にするんっすか?」

「いや、知っている奴に何か似ていたなって思っただけだ。話し方とか、雰囲気とか」

「そうっすか。もしかしたら知り合いだったりするかもしれないっすよ?」

「流石にそれは……」


 ルーファスはサテラの言葉を否定するように言う。しかし、どこかルーファス自身不安を持っていた。嫌な予感、不吉な予測、なんとなく感じる不穏な雰囲気、平穏が破られる何らかの前兆。ルーファスを含む怪人という存在は肉体を強化されている。別にそれは肉体に限った話ではない。様々な点で強化という者が行われていることが多い。その一つに第六感もなくはない。とはいえ、普通そういう超常的部分を改造するのは難しい。もっとも、ジャシーンの怪人は明らかにこの世界では課が得られないような超常の異能力を得るような人体改造が行われている。なのでそういった部分、第六感なども改造の範囲に含まれている可能性はあるだろう。特にルーファスは他の怪人と一線を画すような戦果がある。それが特異な改造の成果であると考えればあり得なくもない。まあ、恐らくはその能力の特異性がもっとも大きいのだと思われるが。

 さて、そんな話はさておき。こういう時の嫌な予感と言うものは基本的に当たるものである。仮にこれが彼の知り合い……ある魔法少女だとして。その後輩は誰か? 面識がどうなっているのか、そういう点で考えた場合どうなるか。そこまでルーファスは考えるべきだったと、この場で言っておこう。


「っ!! あなたたちは……!」

「あなたは……」


 少女……というには、少し大人に近い女性が二人。そのうちの一方がルーファスとサテラに過剰反応し、もう一方がルーファスに驚いたように反応する。一方、彼女たちを見たルーファスもあちゃー、といった感じで困ったように二人に反応する。


「あー、嫌な予感はしてたが……」

「知り合いっすか?」

「お前、見覚えないのか?」

「んー? 特に」

「まあ、見た目はかなり印象ちがうが……基本的に顔は変わってないぞ」

「そう言われても……」


 ルーファスは基本的に相手のことを覚えている方だが、サテラは基本的に気にしない方である。しかも、今回の場合相手はルーファスとは相対してもサテラとは六に相対していないと言うのがある。そのためサテラは覚えていないだろう。まあ、仮にサテラが覚えていたとしても、相手の印象が違うせいでほとんどわからない。魔法少女の変身している姿としていない姿の差は結構大きい。普通は気付く方が少ないくらいだ。

 そう、魔法少女。今ルーファス達とあっている二人の女性は魔法少女である。それも両方ともルーファスと因縁のある二人。一方は助けた相手で『正義の味方』の基地でも出会ったアクアリリィと呼ばれる魔法少女、もう一方はつい先日街を奪った戦いの際、容赦なく叩き潰しその結果恨み心頭と言った感じに復讐心を抱かせてしまったイエローデイジーと呼ばれる魔法少女、その二人である。ちなみに基本的に怪人は覆面をしているケースも多いが、ルーファスはある程度印象を変えているがサテラはほとんど変えていない。なので基本的にはわかりやすい方である。まあ、一般人に悪の怪人であることがばれることは少ないのだが。


「なぜあなたがここに?」

「いや、悪の怪人だって普段は一般人としての生活を送ってるからな? その辺は多分そっちも知っていると思うが……」

「ええ、まあ、そうですけど……」


 『正義の味方』も一般人として生活している『悪の組織』の人間を不意打ち、闇討ちするようなことはない。裏でこっそり動くことはなくはないが、基本的には『正義の味方』は『善』、良い印象を抱かせる必要があるし、そういう点では正面から打ち破るのが一番ふさわしいやり方だ。まあ、『正義の味方』にも裏の舞台のような組織はあるのでそういった組織の行動もあるが。


「そんなことより……あっちを止めてくれないか?」

「……そうですね」


 ルーファスが指した方向ではルーファスを守るようにサテラがイエローデイジーの前に立っており、イエローデイジーは今にも変身して襲い掛かろうとしている、ある種一触即発に近い状態だった。それを止められるのは現状ではアクアリリィだけだろう。彼女はイエローデイジーの行動を止めに向かった。

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