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11 奇縁の知り合い

 怪人標本室のような場所となっていたような『正義の味方』の本拠地の施設の一つ。いうなれば研究室ともいえるようなその場所から扉が開いたタイミングでルーファスは抜け出し、一度人のいない隠れられる場所に身を隠す。そして一度その能力による世界からの離脱を解除した。


「よし、もう一度」


 再度能力を使用しまた同じような状態に。少々面倒な話であるが、あまりにも能力を使いすぎると彼は元の状態に戻れなくなる。一生姿が見えない状態で、誰にも認識されない状態で、声も聞こえないし触ることすらできないような状態。存在しているのに存在していないと言う奇妙な状態にあるその状態のまま、ずっと過ごさなければいけないのは苦痛……いや、地獄ともいえるだろう。流石にそれは避けたいのでいったん能力を解除し現実に戻らなければいけない。

 とはいえ、場所が場所。『正義の味方』の本拠地である以上怪人対策の様々な物もあるし、怪人の使う能力を使っているのを見つかれば確実に追いかけ咎められ撃滅のために動かれることは間違いない。まあ、彼の場合はそれを避けることができるが、彼は現実から外れているが同時に現実にもあり、この本拠地からの脱出が容易ではないため見つかりたくはないだろう。なので隠れながらの解除と再使用を行っているのである。


「さて、次っと」


 そうして姿を隠しながら、『正義の味方』の各施設、各所属の陣営を除く。

 『正義の味方』と言っても多種多様だ。巨大ロボットを扱うことの多い俗にいう戦隊ものとして昔の特撮物に存在する戦隊ヒーローの類、かつて『悪の組織』に改造されたがそこから逃げ出し類稀な幸運を辿り『正義の味方』の所属となった元悪の怪人の変身ヒーロー、摩訶不思議な異世界風味な魔法生物を使い魔とし特殊な力と特殊な魔法の道具を使い変身して戦う魔法少女、歴史の闇に存在した特殊な技術を操るニンジャ、社会の裏に跋扈する魑魅魍魎を撃退することを題目とした退魔師、この国ではない別の国ではよくみられる特殊能力を得たスーパーヒーローなど、『正義の味方』と言ってもいろいろと存在している。

 そんな『正義の味方』の集まる施設である。そこにある様々な道具、技術、文化、人々。そういったものを見て回るだけでもかなり面白いだろう。もちろん見つかればルーファスにとって惨劇になることに間違いはないのだが、そこはルーファスの持つ特殊な能力のおかげで大丈夫だ。悪の怪人に特攻性能を持つ魔法少女の魔法ですら、ルーファスには全く通用しないようにできるくらいだ。見つからない感じられない存在しないようにするくらいはお手の物。まあ、その分彼の能力は直接的には戦闘向けではない。戦闘能力は彼の持つ怪人の身体能力頼りなのである。


「……やっぱりしっかりしてるな。連携は流石に完璧じゃないが、もともと受容の度合いも設備への投資も違う。むしろ『悪の組織』はどっから資金を引っ張ってきてるんだ? 街を支配しても、あまりお金は持っていけないし」


 『悪の組織』も構成員を雇い、給料も支払い、様々な武器や道具やメカをつくり、その施設もかなりの投資をして作られた代物だ。いったい彼らは何処からそれを可能とするだけの資金を得ているのか。そもそも資金があれば作れると言うわけでもないだろう。どこの誰がどうやって協力しているのか、様々な部分で謎が多いと言える。まあ、怪人となる際に得られる特殊な技術、能力などを餌にお金持ちを篭絡している可能性もあるだろう。『正義の味方』と違い、『悪の組織』は甘言と利益供与により様々な恩恵を与ることができるのだから。


「お?」


 様々なところを見て回り、そして見つけた見覚えのある者たち。


「はあっ!」


 少し前にルーファスが戦った魔法少女がそこにいた。魔法少女と言っても、種類は色々。ファンシーなファンタジーの魔法生物の使い魔を従える子供向けなイメージの魔法少女もいれば、現代技術に近い科学のようにも見える、技術の一歩先を越えた現実法則に影響を与える技術の粋による魔法を扱う魔法少女もいる。後者はもはや魔法少女というよりは魔法使いという方がいいだろう。いや、より正確に言えば魔導士や魔機技兵などが正しいのかもしれないが。

 その魔法少女、ルーファスの戦ったことのある魔法少女、イエローデイジーが修行を行っているところをたまたま目撃した。


「デイジー、大丈夫ー? 無理しちゃだめって言われてたよねー?」

「ええ、無理はしていませんわ! でもっ! あの男、いつか出会った時に叩き潰すために、今のままではいけませんからっ! あんな雑魚一匹を潰して街を取り返したところで私は納得がいかないのです」


 彼女はどうやらルーファスに負けたことをかなり根に持っているようである。そのため少し無理があるような修行、鍛錬に身を投じている。魔法の技術の向上、肉体の戦闘能力を鍛える、体術の技術を高める、それなりに色々と。もっとも魔法少女の戦闘は魔法が基本。魔法をメインに鍛えるのが主となるのがふつうであるだろう。ゆえにこの場で魔法を使い特訓しているのである。


「ひええ……」


 流石に自分狙いの魔法少女の苛烈な修行風景を見てしまうと、いつまた出会い殺し合いに発展するかと考えるととても怖い。ルーファスはどちらかというと感覚的に一般人。なので基本的には戦闘はあまり好ましくはない。


「退散退散……」


 ルーファスはその場を離れる。そして、その光景から離れた所で、ふと聞こえてきた声。


「デイジー。そこまでにしたらどうですか?」

「っ! 先輩……」


 イエローデイジーが先輩と呼んだ相手の声。


「お?」


 その声にルーファスは聞き覚えがあった。


「ふむ……」






「ふう……デイジーも少々無理をし過ぎです。理由はわかりますが……」


 魔法少女である少女……女性? 少女というには幼くなく、女性というには年を重ねていない、少女と大人の女性の中間ともいえるくらいの女の子。魔法少女の彼女は現状のイエローデイジーの大荒れの状態を心配している。


「とりあえず、今は抑えましたけど、大丈夫でしょうか……」


 彼女の先輩であり信頼もある彼女でも、今のイエローデイジーは抑えにくい。


「……戦ったのはあの人ですね。全く、少しは手を抜いてほしかったところです……まあ、あの人も『悪の組織』の人間ですからそこはしかたがないのでしょう。それでももう少し何とかしてほしかったところですが」

「そう言われてもなあ」

「…………っ!?」


 魔法少女が声の方に顔を向ける。


「や」


 そこにはルーファス、悪の怪人である彼がいた。

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