矢久の脳内会議 ~2,26事件~
「うーーーーーーむ」
「どうしました? 登場が久しぶりすぎて出オチが思いつかないんですか?」
「ちがわい!!」
「じゃあなんでしょう。確定申告書の自分の収入に絶望しているとか?」
「ああ、まぁそれもあるがな」
「あるんですか……」
「いいから「どうしたんですか?」と聞けーーーーー!!!!」
「きいてるじゃないですかぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「余計な言葉を付け加えるからそっちに注意が向くんだろうがーーーー!!!」
「子供ですか……」
「まぁいいや。今日は2,26事件の日なわけだが……」
「はい。犬養毅さんが殺された事件ですね」
「それは5,15事件だ!!」
「紛らわしいですね」
「いつも混乱するな」
「で、2,26事件がどうしました?」
「事件はすべてそういう名前にしたらいいんじゃないかな」
「え? どういうことです?」
「大化の改新とか、本能寺の変とか、気取った名前をつけるから受験生が覚えにくいわけだろ? だからもう、全部年号とかにすんの。645年1月事件とか、1582年6,21事件とか」
「今の今、紛らわしいって言ったばっかりじゃないですか!!!!」
「いやしかし、いつ起きたかは分かりやすい」
「……確かにそうですけど、数字ばかりだと混乱しませんか?」
「だって、歴史を覚えるやつはどうせ『大化の改新:645年』とか覚えるわけだろ? 大化の改新っていう部分を覚えなくていい分、効率的だ」
「でもほら、やっぱり紛らわしいと思います。例えば3204328と3023428なんて、ぱっと見で見分けづらいですよね?」
「ほほう。日本史で藤原氏の一文字違いの名前を延々と覚えさせられることは紛らわしくないとでもいうのか」
「それは確かに。矢久は早々に諦めてテストに全部「藤原さん」って書きましたからね」
「だからぁ、矢久の馬鹿さ加減を晒すなっての」
「ついでに世界史で、『皇帝シーザーがルビコン川を渡るとき、なんと言ったでしょう』っていう問いに『ルビコン川を渡るぞ』って書いてましたよね」
「これは絶対に言ったと思うんだよ。だって一軍の将がルビコン川を前にしたんだぞ? 部下に出す指示として、当然口にしたと思うんだが」
「そんなこと言ったら、『進め!』とか『腹減ったな』も正解になりかねません!!!」
「正解だろ。普通に」
「もうほんとね。テストの珍回答を集めた本に掲載されるレベルですよ」
「っていうか、そういう単行本があることを最近知ったわ。面白かったよ。中でも秀逸がこれ」
問:No thank you.を訳しなさい。
「『いいえ、結構です』ですよね?」
「お前は一生この本に載ることはなさそうだな」
「どんな回答だったんです?」
「『ありがとうございません』」
「……すごい……」
「ルビコン川が一瞬で吹っ飛んだろ?」
「少年の発想力には脱帽ですね」
「まぁ、そういうわけで今日からすべての事件はすべて年号にしよう。本能寺の変は1582年6,21事件な」
「うーーん、あまり手間はかわらない気がします。もっとないですか? 一発で内容まで覚えてしまえるような画期的な名前は」
「そうだなぁ……」
「情報化社会ですからね。情報の量と正確性が物をいう世の中ですから」
「じゃああれだ。最近のライトノベルにあやかって、内容全部名前にしちゃうってのはどうだ?」
「へ?」
「『1582年6月21日、織田信長が毛利軍討伐を明智光秀に命じてみたら、裏切られて本能寺で殺されちゃった事件』」
「……確かにそういう傾向ですね……」
「そしたらテストの答えも楽々よ」
「じゃあ僕が聞きますね?
『問:1582年6月21日に織田信長が毛利軍討伐を明智光秀に命じてみたら、裏切られて本能寺で殺された事件をなんといいますか』」
「答えは『1582年6月21日に織田信長が毛利軍討伐を明智光秀に命じてみたら、裏切られて本能寺で殺された事件』だ!!!」
「微妙に名前変わってるじゃないですかぁぁぁ!!!!!」
…………
……
「まぁオチは弱かったが、今回の会議のおかげで、仮に頭の弱い受験生が読んでも本能寺の変が1582年6月21日起きたことは覚えただろう」
「出ませんよそんな問題……」
「出るかもしれんだろ!!」
「大学受験じゃ出ないでしょう」
「高校受験がある!!
「中学生はもう受験終わってるんじゃないですか……?」
「え……?」
喉下すぎれば熱さを忘れる。
通り過ぎると受験がいつだったかなんて覚えてるわけもない矢久でしたとさ。




