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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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偉くなりたい

 人はなぜ、偉くなると変わってしまうのだろう。

 『コノヒトなら次世代のリーダーだろう』と思われた人が、偉くなったら人が変わってしまったようにおかしなことを始める例を、わたしは幾度となくみてきた。

 昨今の性格破綻してる政治家たちだって初めからアンナヤツラだったら、そもそも民衆の信任をえることなんてできないんじゃないか。彼らも、『変わって』しまったんじゃないか。

 偉いヤツがすげえガキっぽい……というのは、人を観察すればすぐにわかる。すべての人が……ではないのだろうが、おかしいヤツは非常に多い。

 それが、『偉くなる前はいいヤツだった』ということが、矢久にとっての長らくの疑問なのだ。

 わたし自身、組織の長をやって久しいが、別に偉くないせいか(?)、人の上に立っているだけではその理由が見えてこない。もしくはわたし自身も下から見上げる人たちにとっては「変わってしまった」のだろうか。


 ここに、ある一つの仮説を立ててみた。

 『人間は一度得た快楽を手放せないために、偉くなると変わってしまう』

 どうだろう。そうだろうか。

 人は一度得た快楽を手放せない。これは何も偉いヒトにしか味わえない経験ではなく、例えば一度クーラーで快適な温度を手に入れてしまうと、人は暑さ寒さに不満を覚えるようになるのと似てる。

 性犯罪者の再犯率が高いのも、ドラッグ中毒者の再犯率が高いのも、たまに小学生くらいの子が、ゲームに没頭するあまり、ゲームがやりたいがために学校行く時間になると体調を崩してしまう(そして家でゲームする)のも、一度得た快楽が手放せない結果なんじゃないだろうか。


 偉くなってもそうか。

 人が言うことを聞いてくれる。顎で人が使えるようになる。自分を持ち上げてくれる人たちが現れる。カネも手に入り、なんでも自分の思い通りになってくる……快楽エキス満載だ。彼らはそれに溺れるのだろうか。だから、偉くなると変わってしまうんだろうか。


 快楽エキスに溺れた状態を堕落というのなら、快楽を得るというのは非常に危険な行為だ。

 わたしは、人間は精神の生き物だと思っている。だって、たとえ四十度近い熱があっても、精神が充実しているときは何とか動けるが、逆に精神が病んでいる時は肉体がどう健康でも、人は思うように動けない。

 クーラーがなければ生きていけないと言い張る人は、すでに一つ、暑さに慣れること、寒さに身体を順応させることを忘れているわけで、本人はそういうことにも気付かない。身体が平気でも、精神がシグナルを出せば、平気ではなくなってしまうものだ。

 これを堕落と言ったら怒り出す人もいるかもしれないが、人間の元々あるものが、快楽エキスのためになくなっていくとしたら、コレは大きな視点で堕落の一つに入るのではないか。

 そして堕落は不可逆だ。……いや、それは言いすぎでも、一度気持ちが落ち込んだ人の気持ちの復帰は非常に難しい。これは矢久が長い間、ニンゲンというものを見る仕事をしてきた末に得た確信だ。


 偉くなってもそうなのか。

 偉くなったために得られる快楽エキスで人間のナニカが欠落するから、『偉くなると変わってしまう』のだろうか。

 わたしは、これをとても知りたい。一度、この風景を見てみたい。偉くなってみたい。

 その時、わたしも変わってしまうのだろうか。やはり快楽エキスという麻薬には人間は勝てないものなのだろうか。自分も気がつきもせぬ間に、見苦しい人間となってしまうのだろうか。


 偉くなりたい。快楽エキスに抗ってみたい。

 『偉くなっても変わらない人間』になってやりたいのだ。


 そんな人生目標が、矢久にはあったりする。

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