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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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"凶暴"罪

 テロリズムってのは、結局その暴力行為が支持されたか支持されていないかの差でしかない。

 最近起きた『イギリス版秋葉原無差別殺傷事件』はテロ。

 トランプ大統領がシリアに巡航ミサイルを何十発も撃ち込んだのは神の鉄槌。

 オウムが行った地下鉄サリン事件はテロ。

 そもそも戦争行為は、高度な政治判断でありテロではない。


 ……なろうの読者層にももっとわかりやすい例を挙げれば、

 魔王が組織して人間を攻撃すればテロ。

 人間が組織して魔王を攻撃すれば勇者。

 ……まぁそういうことだ。


 暴力行為に変わりないものが、「出所がここだから許せん」「出所がここならしかたないよね」という差で、テロかそうでないかが区別される。


 テロが正しいとは絶対にいわない。

 私だっていきなり爆弾持ったオッサンに抱きつかれたら、「せめて黒歴史である俺の秘蔵コレクションを全部処分してからにしてくれ!!」と叫びたくなる。

 しかし、忘れてほしくないのはテロ以外の暴力を絶対の正義として取り扱って、テロとの意味を分けることのエゴ……そのエゴが暴走すれば、戦前日本の特高警察が手を叩いて喜ぶ世の中に逆戻りする可能性がある。

 "政治犯"という概念復活か?……共謀罪の成立ということは、そういう意味合いがあることには違いない。

「俺が危ないと思ったから、お前捕まえるよ」

 この"俺"の正義がどこにあるかで、例えば私が正義か悪かが決まるということだ。


 例えば私がなにかの圧力団体に属しているとして、「政府のやり方はおかしい。今こそみんなで決起しよう!」といった小説を描いたら、テロ共謀罪が視野に入る。

 逆に私が政権団体に属しているとして「あの圧力団体はおかしい。今こそみなで協力して潰してしまおう!」といった小説を描いても、その圧力団体から私が標的になることはあっても、警察権力に捕まることはあるまい。


 では、憲法九条を改正したことが遠因で、国際的な戦争に巻き込まれ、多くの日本人が死んだ時、これはものすごく大きな目で見て「日本に対する犯罪実行に向けての準備行為」とはいえないのか。

 戦争は犯罪ではないが、"戦争責任"という言葉は存在する。人が死ぬことには変わりない。不本意な人にとってみれば、テロで死んでも戦争で死んでも、意味合いは同じだろう。

 そういう可能性を視野に入れて、九条を改正した時点で政府のお偉方を共謀罪で捕まえる……などと言い始めたら「コイツ馬鹿か」って事になるだろう?

 つまり、そこには政治的差別が存在することになる。


 間違ってほしくないのは「共謀罪なんて全部潰せ、やり直せ」と言ってるわけではないということ。

 テロを未然に防ぐこと自体は必要なことだと思うし、(関係ないけど)自衛隊も必要だと思っている。

 しかし共謀罪。そんなものを設定するなら、「俺らは体制派だから大丈夫」とふんぞり返っている政治屋の方々にも等しく適用してくれることを願いたい。

 あなた方だけが正義だとは、ゆめゆめ思わないでいただきたい。

 政治の横暴はテロに勝るとも劣らない、国民への犯罪行為だぞ。


 ……まぁ、そういうことだ。

注:共謀罪は個人には適用されません

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