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大昔に「とうがらC」という飲み物があった。
スポーツ飲料(ビタミンC配合)にカプサイシン(唐辛子の辛味成分)が入っているという前衛的な飲み物で、前衛的過ぎて(=前に出すぎて)攻撃を一手に食らって即死した戦士のように、一瞬で売り場から戦死した飲み物だ。
今ではどこの会社が出したかさえもわからないが、辛いもの好きの矢久は結構好きだった。
AIが小説を描く時代だってことは、こんな小説サイトまで作品を探しに来るような方々なら知っていると思う。
今はまだ全然アレらしいが、そのうち本格的なものが描ける時代がやってくるのだろう。現に音楽分野ではAIが作り出した著作が千に上り、その版権で食ってる某もいるという。
……「なんてヤツだ」と思うけど、それだけのAIを作り出すことが人生の大半だったんだろう。私には真似できないんだから、文句は言えない。
何千何万もの作品をデータベース化して、『どうやればウケる作品になるか』というパターンを探し出し、人々に求められる作品を割り出していくという作業を、人よりもはるかに早い速度で行うのだろう。税理士、会計士などの「~~士」がAIのために不必要になると囁かれる中、創造の分野も時間の問題なのかもしれない。
じゃあ人間はどんな文化活動をすればいいんだろうね。
AIによる、「売れる文章」が市場を席巻し、人力で描く文章などは次々に市場から排除されていく。
システム自体は冒頭で例を挙げた「とうがらC」でわかるとおり、すでに小売業でも一般的だ。売れるものは残るし、売れないものは売り場から撤去される。その速度は早く、新商品が一月存在しないケースすらある。
それが小説界でも具現すれば、巷はAIの描く、耳障りのいい作品ばかりになるのだろう。でもそれで、大半の人々は満足するのだろう。
「「とうがらC」がないから自分で作っちゃおう!」なんてヤツはなかなかいない。代替の何かを買って満足するのが普通だ。
しかしだシカシ、とうがらシ。
「とうがらC」が好きだった人種は何も「世界で私だけ」というわけではあるまい。それが国民全体の1%だとしても、これは恐ろしい数値になる。
なにせ日本の総人口は2017年で一億二千六百七十九万人。15歳から64歳までの人口は全体の60%ほどだそうだ。単純計算して七千六百二十万人ほどいるらしい。
これの1%は七十六万人であり、小説が一冊あたり七十六万部売れたら、えっと……えっと……たぶんすごい。かなりすごい、メチャメチャすごい(←ゆるい(笑))。
つまり、たとえAIが市場を席巻して99%の読者を掌握してしまったとしても、残りの1%の読者に「好きだ」といってもらえる作品を目指せればいいんじゃないかと思っている。
私なんかも「とうがらC」のような、人気としてはアレな小説ばかりを描くが、それでも「好きだ」と言ってくれる人もいる。
それでいい。100人に1人が認めてくれる作品を目指そう。
今は、そう思っている。




