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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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姫(♀)、テイクオフ!!

 子供のことばかりで申し訳ないが、自分の心境を書いても「くだらない世界だな」とか「あの大空に翼を広げ飛んでいって消えてしまいたいぜ」とか、なんとなく面白くないので、やはり子供のことで行こうとおもいました(まる)


 第二子、通称"姫(♀)"は、寝返りができるようになった。

 ただ、仰向けからうつ伏せにはなれても、うつ伏せから仰向けに戻ることはできない。となると、うつ伏せは彼女にとっての行き止まり。身動きも取れなくて結局泣いてしまう。


 ♪君の寝返りは 行き止まりなのに 

 ……なのに なぜ なにを求めて 君はするのか? 大泣きしてまで


 ……なーんてな。『若者たち』のメロディが頭に浮かんできたりもする。(原形とどめてないけど)

 大泣きするだけなのに、寝返りだけはしたいみたいで、せっせと態を入れ替えてゴロリとやって、一人で泣いている。召使い2も初めは「すごいですね! 寝返りできるようになりましたね!!」と手を叩いて喜んでいたが、最近は「寝返りするから泣くんですよ……仰向けのままいてくださいね」と、仰向けに戻しに行く手間がわずらわしそうだ。


 しかしこういうのを、小説脳の矢久は「これはSFに変換すれば、名シーンになるかもしれない!!」と思うわけだ。

 試しに描いてみよう。



 西暦2489年。

 月が、落ちてきた。

 地軸がズレただとか、重力波の変調だとか、解析すれば原因もあるのだろう。しかし、そのような悠長な時間はない。地表面に激突した場合、そのエネルギーは人類を絶滅させてなお余りある規模であることは間違いなかった。

「姫!! お考え直しを!!」

 発射場へと続く通路で腕を振りほどかれたレイヴという男は、声で彼女を制止しようとする。が、振り返る彼女の目は意思に満ちていた。

「誰かがやらなければならないのでしょう!?」

「何も姫がやらずとも! 片道切符なのですぞ!!」

「民衆の命、私の命。重さにどれほどの差がありましょう」

「姫……」

 レイヴの呆気にとられたような表情。ナル姫のまつげが愁いを帯びて揺れた。

「私はずっとお飾りでした。皆が右へ左へと国事に励んでいるのに、私はそれをただただ見ていただけ」

「姫は赤子ですので当然なのです!」

「私も国事に携わりたいのです。だって、この国の一員なのですから!」

「あぁ……」

 なんとご立派になられたことか。

 レイヴは彼女が生まれたころから身の回りの世話をしていたから、年端もいかない姫君の、見違えるような姿に、感極まるものがこみ上げてくる。

 しかしだからとて、彼女のやろうとしていることは無謀極まりない。レイヴは必死に説得しようと己の両の拳を握り締めた。

「月面攻撃型ロケット『ネガエリ』は姫の手に余る兵器でございます!」

「大丈夫。私だって皆の活躍をただ見ていたわけではありません。見て学ぶ、見て学ぶなのです!」

「危険すぎます!!」

「それでも私はやる!!」

 不意に駆け出したナルに手を伸ばしたが空を掴むレイヴ。"お飾り"という鎖から解き放たれたように、彼女は『ネガエリ』の操縦席へ取り付いた。

 両手両足……離陸のために必要な動作は複雑だ。しかし、彼女はそれを驚くほどの正確さで終えると、離陸信号を出す。発射台の根元に並ぶ十数個の赤ランプが、雪崩を打ったように青に変わり、四基のロケットエンジンが、噴き上がる炎に力を得た。

「お待ちください!!」

 叫ぶがもう間に合わない。レイヴの視線の先で、ナルは、すでに制御困難な重力エネルギーをその身に受けている。

「この地球の安息のために!! 行きます!!!」

 ゴローーーーン!!!!

 爆焔を残して発射する『ネガエリ』。その姿は大気圏を突破する程に鋭く、そして気高い。

「ひめぇぇ!!!」

 彼はすぐに次の手を思い至り、通信室に走った。彼女との交信ができる場所だ。そして、部屋の一面に据えられたモニターを複雑に操作し、「姫!!」と叫ぶ。

 が、そこに映った彼女の姿に、彼は言葉を失った。

 泣いてる。

 すっごい泣いてる!

「うーごーけーなーいーーーーーー!!!」

「……」

 ……だ、だから言ったのに……。

「こーーーーわーーーーいーーーー!!!!」

「……」

「もーどーりーたーいーですーーーーーー!!!!!」

「ひ……姫……」

 レイヴはなんの言葉も発せなかったが、なんか笑えた。



 あはは、なんだこれ(笑)。名シーン描いてみたらこんなのになりましたけどー。

月、ほったらかし……(笑)

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