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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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魔王様(♀)その8

 相変わらず魔王様(♀)との深夜のラリホー&ザメハバトルは続いている。

 最近は寝かたや寝る場所にもバリエーションを加えようと努力なさっているようで、召使を大声で呼びながらさまざまな方向(部屋)を指差し、そちらにいくと少し気をお静めになって再びお眠りになろうとする。

 召使い視点で見ると生活部屋で立って抱っこしたままお眠りになるのを見守っている状態。当然明日があるので召使いも寝たいのだが、満員電車のサラリーマンじゃあるまいし(?)、立って魔王を抱えたまま眠ることはできないので、これをなんとかふとんまでお連れしなければならない。

 が……、

 魔王様はお眠りになっているようでしっかり起きていらっしゃるので、安易にご就寝所に戻ろうとすると平然と逆方向を指差し無言で、

「戻れ」

 と命令してくる。怖い。

 お眠りのスタイルはいつもさまざまで、ゆらゆらと揺れたり、線路がいつまでも続いたり……。魔王様も本当は眠たいので、対処さえ間違えなければ徐々にご就寝に向かうのだが、なにせ午前三時とかなので、その一分一分がとても長い時間のように思う。


 やがて第二段階としてご就寝所でのバトルへと突入する。

 部屋に戻っても気づかないくらい意識が混濁されてようやくご就寝所へ到着。しかしこの限りなく暗い部屋でも油断できない。

 見た目は壊れた人形のように寝崩れておられるのだが、これがいきなり思い出したかのようにパッチリと目を開けるのだ。これがホラー的な意味でホントに怖い。

 だって、真っ暗な部屋で壊れた人形がいきなりパッチリ目を開けるんだよ?ようやく暗闇に慣れてきた目には月明かりに反射する魔王様の目の光はいろんな意味で恐怖だ。

 ホラー的な意味を差し置いても、最悪第一段階からやり直しという危険もはらむ。

 しかし魔王様も半分無意識に目を開けていらっしゃることもあり、目を開けたことにご自分で気づかずにまた壊れた人形に戻ったりもするので、すぐに慌ててはいけないのだ。


 ところで魔王様には高度メーターが内蔵されているのか、相当な勢いでお眠りになっていても立って抱っこしているか座ってしまったか、はたまた抱っこを離れて寝かされたかが分かる仕組みになっておられる。

 「就寝の際は基本的に立って抱っこでないといけない(魔王法第十五条第二項)」という法律の下で生きているので、抱っこに疲れた召使いが座ったりするとイカヅチが飛んでくる。

 抱っこから下ろして布団に寝かせる時も同様で、とにかく求められる技能としてはニトログリセリンを扱うような慎重さ。……いつ爆発するか分からない恐怖に脅えながら、深夜四時半に極集中力のいる作業を強いられている。魔王の従者も楽じゃない。


 そしてそんな苦労も知らず、魔王様は今日も朝から元気に走り回っている。

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