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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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執筆環境

 うだるような陽気は9月になっても続く。

 蝉もいまだご健在で、メスを求めて日夜大合唱に余念がない。聞くだに暑苦しい声がむんむんとむせ返る室内の不快指数を増長させ、低温でぐつぐつと煮られているような気分になる。

 矢久の家はそんな時にもクーラーなどはつけない。別にクーラー付ける金もないとか、誰かが病気とか、「ほしがりません! 勝つまでは!」とか、そういうことではなく、単につける習慣がない。

 関係ないが子供は二歳半までに体温調節をするための開閉弁である汗腺の働き具合が変わるらしい。小さい頃から夏はクーラー、冬は暖房と生ぬるい環境での見過ごした子供たちがいい年になって熱中症を連発するのは汗腺の働きが悪いのもあるかもしれない。

 とりあえず、クーラーの習慣のないこの家なら魔王様(♀)はそういう心配もあるまい。女の子だけに年頃になってから「汗かきにさせられた!」と、別角度からの文句が飛んでくるかもしれないが。


 とにかく暑い日は暑い。というか、夏はずっと暑い。

 おかげで窓を開けるわけだが、隣は高校である。夏は芝刈り。なぜかひたすらに校庭の芝刈りをおこなってるおかげで、四六時中芝刈り機のエンジン音がこだましている。

 その雑音としかいえないガリガリという音に混ざって、放課後になると軽音楽部の活動が始まる。

 公立高校のせいか防音設備もないようで、放課後になるとギターやらドラムやらの爆音が、街全体がコンサート会場であるかのように鳴り響く。

 もちろんヴォーカルも聞こえてくるのだが、いやこれが……お世辞にもうまいとはいえない。

たぶんボーカル希望者が誰もおらずに、しかたないからジャンケンをして一番負けた部員がしかたなくやっているのだろう。低音出ない高音出ない、ボイストレーニングもしてそうにない男のひっくり返りまくってる声が街中に響いて、申し訳ないが正直騒音でしかない。


 蝉に芝刈り機にギターにドラム、そして音の外れた青年の叫び声。

 うだる暑さに追い討ちをかけて脳を沸騰せしめる中で、階段の下では魔王様(♀)が

「た~~~れ~~~か~~~~あ~~~~る~~~~~~~!!!」

 と、召使いを呼び絶叫。


 ……そんな環境で、私は物語を描いている。

負けないもんっっ!!(苦笑)

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