魔王様(♀)その7
魔王様(♀)は今日も悪の限りを尽くす。
「うわぁぁぁ!!! 階段の縁に立つのはおやめくださいませ!!!」
転げ落ちたら大怪我をする。が、魔王様はそれをあざ笑うかのようにつま先だけちょっと階段から出してぎりぎりに立っていたりするのだ。
(ふふふ、召使いが恐怖におののいているわ……(←魔王ビジョン))
「うわぁぁぁ!!! 今度はティッシュペーパーを全部引き出し始めたぞ!!」
みるみるうちに魔王様の周りが白く染まっていく。まるで血を一瞬で抜かれた死体の山だ。
(ふふふ、わたしにたてついた人間はこうなるのよ……)
「ああ!! 水が入ってるコップを思い切り縦に振るのはおやめくださいませーーー!!」
しかも濡れた床をびしゃびしゃと叩きながら手でその水を塗りたくっていたりする。
「うわぁぁ!! たたんだタオルが全部たたむ前の形に戻ってるぞぉぉ!!!」
(そんなことは序の口よ……これならどう?)
彼女はさらに、机の上にあったものをソファに移動させたりしている。
……が、もはやその程度の悪だと召使いは気付かない。せっかく動かしたのに……と、魔王様は不満もあるようで、わざわざ自分のやった悪行を指を差しながら怒っている。
そしてそれを片付けてる隙を見て、魔王様は次なる破壊へ向かうのだ。
「わぁぁぁ!!! 紙の箱を食べてはなりません!!」
ティッシュペーパーのボックスのような厚紙の箱はどこの家庭にもあると思うが、うちのそういう箱の角っこには軒並み穴が開いている。明らかに噛んだあとであり、その後飲み込めないものだからいつまでもモグモグ口を動かしているのでバレる。
「こらっ!(←素が出る召使い) お出しくださいませ! お出しくださいませ!!」
おかげでその後、魔王様の口をこじ開けての格闘となる。が、魔王様は容赦なくその指を噛んでくる。以前書いたと思うが、魔王様の犬歯(八重歯?)は異様に尖っているので、この戦いは常に死を覚悟したものとなる。しかもいつも奇襲なので、気の休まる暇はない。
悪い。悪すぎる。
しかし一番怖いのは、そういう悪の限りを尽くしてどんどんハイテンションになっていって、
「あはははははははははははは~~~~~~!!」
とか高笑いしながら、パタパタパターーーと調子に乗って、バターーンとかなって、
「たーーーれーーーかーーーあーーーるーーーーーー!!!!」
ってなるのが一番怖い。
膝とかすりむくと、もうすごい。
「たーーーーーーれーーーーーかーーーーー!!」
「目の前におります!!!!」
「たーーーーーーーーーーれーーーーーーーーーーかーーーーーーーーーー!!!!!」
「いや、だからあの……」
「全世界でお前以外のたれかーーーーーーーーー!!!!」
「そ、そんなヒドイ……」
召使い1は物の数に入っていないのだ。
ようやく召使い2がやってくると、
「あいつがやった!!!」
みたいな恨みがましい顔でこっちを見ながら召使い2にだっこされておとなしくなる。
自分が痛い目を見た責任をすべて召使い1になすりつけてしまうのだ!!
悪い!!!
悪すぎるぞ魔王様!!!




