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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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ホントは怖いか知らんけど……

 魔王様(♀)はずいぶん歩くようになって、あっちに歩いてはなんか考えて、こっちに歩いては何かを破壊してという活動を繰り返している。

 二階で、一階から聞こえてくる足音を聞いてると、その元気さがうかがえるようでほほえましい。

 とっとっとっとっと……とっとっとっとっと……ガタン!!!

「たれかあるーーーーーーー!!!!!!!」

 まったく、知ったことかと思うが、そんなことは怖くていえない。


 さて、今日はそんな魔王様の話ではない。

 魔王様を連れて定期健診などという意味不明の行事をしに病院に行ってきた。その先での出来事である。

 魔王様はまだ生後一年なので、定期健診はもちろん小児科で行われる。いろんな漫画のキャラクターが出迎えてくれたり、ベビーベッドがあったりと、独特な雰囲気をかもしている場所なのだが、他に絵本なんかも置いてある。「アンパンマナントカ」とか「忍たま乱太ろナントカ」とか、そういう絵本もある中で、グリム童話などの絵本もあり、思わず手が伸びた。

 召使いのわたしは無学なので、グリム童話というものをほとんど知らないのだ。たしか「本当は怖いグリム童話」なる本も出ていたことだけは知っていて、いったいどんな話なのだと興味が沸いたわけだが……。

 そしたらアナタ、ツッコミドコロの宝庫じゃござんせんか!!


 とりあえず一冊目。その名も『ブレーメン音楽隊』。

 ダイジェストストーリーGO!


1ページ目、ロバが年老いて役立たずになったので、主人が餌をくれなくなったのでそのロバは家から逃げ出そうとしました。

2ページ目 犬が年老いて役立たずになって嘆いていたので、ロバは声をかけました「ブレーメン音楽隊に入りに行こうよ」

3ページ目 猫が年老いて(以下略)、ロバは「ブレーメン音楽隊に入りに行こうよ」

4ページ目 ニワトリが(以下略)ロバ(以下略)

5ページ目 泥棒の家を見つけました

6ページ目 力を合わせて脅かして追い出させ、中にある食べ物を皆で分け合いました

7ページ目 泥棒が帰ってきたのでこらしめました。4匹はこの家でいつまでも幸せに暮らしました☆ミ

おしまい♪


 …………

 ……

 ブレーメンの音楽隊はどうなったんだ!!!!

 1ページ目からして「ロバはどうやって逃げることができたんだろう」とか、「いつまでも幸せに暮らした家のゴハンはすぐなくなるんじゃないか?」とか、ツッコミどころには事欠かないが、ブレーメンの音楽隊というタイトルでこのエンディングでは、ウルトラマンタロウの歌に

「ウルトラの父がいる ウルトラの母がいる そしてタロウはどこにいる?……知らない」

 と言ってしまったようなものじゃないか!!!


 ……などと、今の青少年が知らなそうなわかりにくいネタで押してもここじゃだめな気もするけど……。

 ま、いいや、次。

 エントリーナンバー2番は『ヘンゼルとグレーテル』

 ダイジェストGO!


 ヘンゼルとグレーテルのお母さんが亡くなりました。お父さんは新しいお母さんと結婚しました。そのお母さんはヘンゼルとグレーテルが嫌いでした。

 そのうち、村は飢饉となり、お母さんは言いました。「あいつら捨てに行こう。私らまで飢え死にしちまう」

 そこでお父さんがヘンゼルとグレーテルを連れ出しましたが、一度目はヘンゼルの機転で失敗。二人の兄妹は家に帰って来てしまいます。

 そこで二度目、彼の機転が利かないよう工夫をしてお父さんはもっともっと深い山に二人を捨てました。

 二人は帰れません。そのうちお菓子の家にたどり着きました。

 その家を食べていると持ち主だった魔女にバレました。「家を食べられた分、あんたたちを食べてやる!!」

 しかし二人はあまりにやせていたので、魔女はまずご馳走を与えて二人を太らせてから食べることにしました。が、なかなか太らないのでとにかく食べてしまおうと思い直しました。(ちなみにこの魔女、ド近眼です)

 その日、グレーテルはパンを焼くように……と魔女に言われます。今日自分たちが食べられると思ったグレーテルは「作り方がわからない」と反論、魔女に作り方を教わるふりをして、燃え盛るオーブンへ魔女を突き落としました。

 彼らは焼け死んだ魔女の宝を手に入れて、家に帰ったらお母さんはもう死んでいたので、お父さんと3人で幸せに暮らしましたとさ☆ミ

 めでたしめでたし♪


 …………

 ……

 おいっっっっ!!!!

 読者に何か言うことはないか!?

 なんというか……いちいちツッコミドコロを挙げてしまうと逆にツマンナくなりそうなので挙げる気もない。が、とりあえず、ついでに死んでるお母さんの死因が知りたい。

 ちなみに、この本の裏表紙には「ヘンゼルとグレーテルの力を合わせた兄妹愛が垣間見える作品だと思います」とか書いてあるのだが、この作品のどこから兄妹愛を感じればいいのか謎である。ホンモノのグリム童話はもっと愛に満ちた話なのだろうか。もしそうだとすればこの翻訳というか……絵本化はテーマをまったく伝えていないということになる。


 なににせよ、ある意味恐ろしいグリム童話。それ以上に思うのは、物語ってここまでご都合主義で不条理でも、わかりやすければいいのか?と思えてしまう。

 ちなみに1970年代の超ヒットアニメ映画も正直見てらんないくらいのご都合主義とツッコミドコロなのだが、その作品は空前のヒットを呼び、長い間記録が塗り替えられることはなかったという。


……なにか、物語に求められているものって何なのかっていうのを考えさせられる健康診断でしたよと。

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