流行りモノ
皮肉って絵本にできそうなハナシ
今回の主役はスーツ。
スーツはアレだ。紳士服のコナカだのアオキだので売ってる、今の人間のフォーマル着のことだ。
今日はその服の前を留めるボタンの話である。
仕事上、スーツを着ることがほとんどないわたしだが、過去二回だけ、スーツを買いにいったことがある。一度はざっと言って二十歳のころ。もう一度は最近。
その一度目……つまり二十歳の頃。店員は三つボタンのスーツを指差して言った。
「今はもう二つボタンのスーツなんていうものはほとんどないですね。三つボタン……最近じゃ四つボタンとかも出てますよ」
ボタンが多くなるほど襟の部分が短くなる。いや、スーツでは、あの首から伸びてる折り返してある部分を"襟"とは呼ばないらしい。カラーとラベルと言うそうだ。ともあれ、カラーラベルが短くなるタイプが今まで長く愛されてきた二つボタンを過去のものにし、フォーマルの常識となっていた。
さて最近。
紳士服売り場に行ってみたら、四つボタンはおろか、三つボタンすらありゃしない。
店員は言う。
「三つボタンなんていうものは古いタイプですね。そんなの一時期ありましたけど、今は二つボタンが普通ですね」
……三つボタンなんて着てたら笑われますよ……くらいの勢いで常識を語られた。
流行や常識なんてものは、こんなもんだ。