魔王様(♀)その4
時のたつのは早いもんで、気がつけばこの『ちょっと聞いて』も二ヶ月近く更新してないようだ。
自分の描きたい長編と、三、四万文字程度の短編描いてておなかいっぱいなのだが、たまに何かを更新しておかないと「矢久はとうとう死んだか。人間五十年とか言ってたからしょうがない」などと、年齢すら間違えられた憶測が飛び交ってしまうだろう。
スンマセン見栄張りました。単に忘れられてくだけデスネ……(←卑屈(笑))
ま、そんなわけで大したことも書けないが、また魔王様にでも登場してもらうか。
最近魔王様(♀)は意思表示をするようになった。
もちろん全知全能の魔王なので本人としては"できなかった"わけではなく、"していなかった"のだろう。召使たちがあまりに効率が悪いのに業を煮やした結果と思われる。
しかし意思表示も、わざわざ「あれをやれ、これをやれ」という要望を懇切丁寧に示してくれるわけではない。
「ん」
その一言。……しりとりにすれば完全無双の、五十音の中でのジョーカー的発音を用いて、すべての指示をされる。お前たちに言葉などはもったいないという心持なのかもしれない。補助的に指を差されることもあるが、ともあれ召使たちはその「ん」で、すべてを知り、働かなければならないのである。
「ん」
「あ、おなかすかれましたか?」
「ん」
……このような感じだ。当たればまだいい。
「ん」
「はい、おと○けさんが不倫しましたよね」
「ん!!」
「え、ああ、外は雨ですね」
「んんーーーー!!!」
「あ、オムツが濡れてるんですね!?」
……などと見当違いなことを繰り返すと、
「たれかあるーーーーーーー!!!!!!」
となってしまう。怖い。我々召使どもは薄氷を踏むような気持ちで魔王様(♀)の「ん」に対して応えなければならない。
まぁ、そんなんじゃ分かりづらい……的に書いてはみたが、実際のところ、意外にそれだけでも、相当のことが伝わってくるものだ。七、八割方、魔王様は満足そうにしているので、あたらずといえど遠からずなのだろう。
我々はしがない召使なので、外国語などはまったく話せないが、「ん」と指差しだけでここまで伝わるのなら、魔法をミスってウンババ族とかいう聞いたこともない部族の居住地に移送されても結構何とかなるのかもしれないと本気で思えてしまう。
そういえば、わたしが以前カナダのマックでダブルバーガーを頼んだらハンバーガーが二つ出てきたし(実話)、別の店でチリドックをたのんだら変な赤いスープが出てきたのだが、今思えばヘタな英語を使うよりも「ん」と指差しで何とかした方がよかったのかもしれないとも思えてくる。
思う以上に万能な「ん」。魔王様はそれを把握の上で、「ん」を選ばれておられるのだろう。
さすがだ……。




