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ちょっときいて  作者: 矢久 勝基


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凡人ゆえの苦悩

 一般の方々には既に"今は昔"となってしまったと思われる、京都アニメーション放火殺人事件。

 押しかけてきた犯人は"ネタをパクられた"というのを動機とし、凶行に及んだ。実はまだ二年ちょっとしか経ってないが、コロナの大騒ぎもあり、遠い記憶となってしまってる感がある。

 もそっと詳しく調べると、この犯人は"京都アニメーション大賞"へ複数の小説を応募していたそうだ。その小説を採用せずに、内容をなんかのアニメで使われたことに対して腹を立てた、ということか。


 これさ、今俺は、"その小説を採用せずに、内容をなんかのアニメで使われたことに対して腹を立てた"と言ったが、一般の人たちのほとんどは、"その小説を採用せずに、内容をなんかのアニメで使われた『と、思い込み』腹を立てた"と解釈するんじゃないだろうか。

 一流ドコロがアマチュア小説家のネタなんて拾うはずがない。被害妄想もはなはだしい、と。

 でも、作家やってると、人のネタがどれくらい自分のネタに似てるかということには、非常に敏感になる。普段自分が考えていることだから、「えー、そこ、そんなに似てるとは思えないよ?」と言われる部分も、「うわ、そこに似てしまった……」と思えてしまうものだ。わざと似せようとしていなければ、だけどな。(だから京都スタジオの担当者がその犯人の作品を見ていれば、「似てるかな……」と思った可能性は高いと思う)


 娘がプリキュアを見ている。

 俺もその関係でたまーーに触れる機会があるのだが、そのなかに、技の名前が長すぎて、発動した時には既に誰もいなかった……的な場面があった。

 そういう場面を、俺はその昔『桃竹シンデレラ』というコメディ作品で描いたことがある。もっともそれは、呪文(?)が長すぎて間違えまくって変身できないという場面だ。

 もちろん、これをパクられたなどはゆめゆめ思わないわけだが、しかし作家としてはそうでなくても、

「これ……プリキュアのその場面を知ってる読者は、以後『桃竹~』を読んだ時、「そこからイメージした(パクった)かもな」と思うだろうな……」

 と思ってしまう。『桃竹~』の方が完結は先でも、一般公開されてるのがプリキュアが先になってしまったわけだから、そうだろう。


 お互い、『ジュゲムジュゲム』から始まる呪文なのだから、そもそもに元ネタがある時点でどちらも同じ穴のムジナなのだが、それを割り引いてさえ、そういう感情が芽生えるのだから、もうちょっとニアミスしたネタが、小説を投稿した先で発表されたら、眉をひそめるのは無理のない話である気がする。世間的には先ほど言ったように『パクリだと"思い込む"』という認識が大勢を占めるだろうから、なおさら犯人は孤独だ。

 犯罪自体は許されることではないが、そういう感情にもつれ込んだ犯人の心理は、正直、理解できる。


 そうやって自分たちが描いてきたネタを、後に思いついたヤツが先に使うのだ。しかも、先に描いていたことなど誰も信じてはもらえない。

 俺らプロ志望のアマチュア作家ってのはそこに常に暗い炎を燃やしている。俺だけ?

 それがたとえパクリじゃなくたってさ。「その考え、俺がもう何年も前に形にしてるよ?」と思えば、悔しさはひとしおだ。プロになって作品を公開していかない限り、いつか誰かに先を越されるんだろうところが悲しい。


 あ、上記は卑近な一例なんで、別にプリキュアをうらんじゃいませんが……(笑)。

 いやしかし、これに共感できないアマチュア作家さんは、よほどオリジナリティ(個性)に自信がある天才タイプか、もしくはパクられる以前にオリジナリティ皆無なタイプかどちらかなんじゃないかと思ったり……。

 まぁ、右も左もない凡人ゆえの苦悩ですわ。

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