サイレント=ヒル
サイレントヒルというゲームがあった。
プレステで発売されていたホラーゲームで、当時、プレイしている知り合いの後ろから眺めて、人を怖がらすことの粋を集めた演出のすごさに目を見張ったものだった。
ちなみに矢久がホラーを描いたことがないのは、矢久がホラーを見たことがないからだ。理由?……そうだな……たぶん、怖いからだろう。というか、多分私はホラーに限らず、物語というものをほとんど見てない。たぶん日本人の平均からしても相当棒グラフの下のほうにいると思う。
それでも物語は創造できるものだが、世間を知らない分、たまにネタが被るのが困る。
自作品の主人公の名が人気作品『鬼滅の刃』のキャラと被ってたそうで、……知らんわそんなの。見てねーもん。……ということになる。
不勉強だといわれるならその通り。しかし、だからなんだ。私がしてることがパクリではないことの証明じゃないか。誰が好き好んで人気作と登場人物名をかぶせるものか。
描くものはすべてオリジナル。それが面白いのかつまらないのか。ただそれだけの勝負だ。世間が何を面白がっているかなど、どうでもいい。
結果設定が被ろうが、そんなもんは俺のせいじゃねぇ。逆に俺は何も見ずに作品をトレンドに近づけたってことじゃねーか。その能力を買えよ。
ってね。そんな考え方でプロになれるのか。……とりあえず、今のところはなれないことを実証しているわけだが。
ともあれサイレントヒル。
題名から既に薄ら寒い雰囲気を醸しているこのタイトルは、もともと『静岡』を英語読み?したものらしいとどこかで聞いた。すげー。『静岡』ってホラーだ。(←県民に怒られるヤツ)
しかし、今日はあの、やけに横に長くていつまでも名古屋に到着できない恐怖県の話ではない。
暑いとハーフパンツを履くことが増えるのは矢久に限るまい。
世間はまた緊急事態で、毎日が日曜日のようになってしまった矢久は膝から先を出して、うろうろと山を徘徊していた。理由?……そうだな……たぶん、雨が降っていなかったからだろう。ニートというほど完全失業でもないが、国は緊急事態を出した時に、矢久にどれほどの影響を及ぼすのかを分かっていない。アイツら本当に年端も行かない子供たちの明日のご飯を奪う気か。
しかたないので山菜でもとって今日のご飯にするべく、矢久は山に向かう。
さすがにそれは嘘なんだけど、帰ってしばらくハーフパンツのままうろうろしていた矢久を見て、家族がにわかに大騒ぎを始めた。
「虫がついてる!!」
「虫?」
どうやら山から虫を拾ってきてしまったらしい。なんだろう、カブトムシか。
思った矢先、嫁が叫んだ、
「ナメクジだぁ!!」
「うげ……」
カブトムシだと思った矢久は思わず舌を出す。いや、ナメクジが怖いというわけじゃないのだが、身体にナメクジが付いてて「おっしゃ!」と思う人種もそうそういないものだろう。
ともあれ、ナメクジに身体を徘徊されてはたまらないので、当たり前だが駆除することになった。
まずは現状把握。家族の指差す先を見てみる。
すると、脛の逆側、つまりふくらはぎのところに、一センチくらいの黒い水風船みたいな奴がいた。
しかしてこれは……。しかしてこれは!!
……そこにいたのはナメクジなどという生易しいものではなかった。
「ヒルだぁ!!」
なんと人差し指ほどの大きさのヒルが、自分の身体を何倍も膨らませて血を吸っていたのである。
ヒルというのは人体に噛み付く時、モルヒネのような物質を分泌するらしい。つまり、患部は痛くない。てか、噛まれたことに気づかない。気が付けば丸々と太るまで血を吸われているという寸法だ。
その匠の技はまさにサイレント!……そして、サイレントなヒルなのだから、まさに、まさに!
サイレントヒルじゃないか!!
……という話。(お粗末)
おまけだが、ヒルを無理やり引っぺがしたら、噛まれた部分からの出血が止まらない。
どうも血が固まりにくい成分も一緒に注入されるらしく、いつまでたっても血は止まらず、絆創膏をしてもあふれるほどだ。……挙句の果てに魔王様(♀)なんて心配して泣き出す始末。
恐るべしサイレントヒル!!リアルでも充分にホラーじゃないか!!
……この話、『小説家になろう』の夏のホラーに投稿してもいいですか?(笑)




