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街の事務員の日常  作者: 滝田TE
街の事務員の日常
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第二十二話 冒険者の賭け


 マスィリに到着し、そこでウィレンカへ向かう予定であったバンルーガ南部出身の行商人を隊商に組み入れることが適ったコタール一行は、商売もそこそこに慌しくマスィリを後にした。

 その行商人が言うには、この時季の天候は非常に変わり易く、近いうちにまた大雪に見舞われるであろうとのことであった。

 以前の街で、二ヶ月以上の長期滞在を余儀なくされたのだ。ここで再びそのような目に遭うのは御免被りたい。

 加えて、前年の冬に降った大雪によって引き起こされた雪崩が、一つの村を直撃し、村が全滅するという悲劇が起きた。それだけであるなら、コタールたちにとっては“痛ましい事故であった”で済むのだが、雪崩は村だけではなく、公路にまで影響を及ぼしたらしい。

 一応、この冬を迎える前までに国が補修・整備を済ませたが、それも完璧とは言えない状況であるようだ。

 また、村の復興までは手が回らなかったようで、一部区間は陽が昇る前から行動を開始しても、次の村に到着するのはどれだけ急いでも夜になってしまうとのことであった。

 最悪、その区間で天候が荒れでもしようものなら、隊商全体が遭難となりかねない。

 そういった理由からの予定変更であったが、結果的にその判断は誤っていなかった。


 マスィリを出発して三日ほどは山間に沿うように敷かれていた公路が、四日目から山の中へと伸びる形になる。

 その山の麓にあるのが、キシュ・レヴォラトという名前だけは大仰な小さな町であり、その町とザムキという村を結ぶ公路が、件の雪崩に遭った区間であった。

 マスィリで加わった行商人の言うとおりに、四日目未明から隊商は出発した。馬も、それに乗る者も、最低限の休憩を挟むだけに止めての強行軍であったが、ザムキに到着した頃はすでに夜中と言ってよい時間帯であった。

 深夜の突然の来訪者、しかも二十名を超える大人数である。

 当初、ザムキ村の長は渋面でコタールたちに相対したが、バンルーガ出身の商人が事情を説明したことと、コタールが手渡した普段より多めのカネが効果を表し、受け入れる旨の返答を口にした。

 村に一軒だけある小さな宿は当然の如く全員を収容できず、一部の者は空き家となった薄汚れた家で横になり、また一部の者は馬車馬と一緒に馬小屋で眠る破目になった。

 護衛として雇われた三人の冒険者も、その一部になる予定であったのだが、女性や未成年の者を暖房の殆どない場所で眠らせることに反対したのが修一郎だった。言うまでもなく、シルトとフォーンロシェのことである。

 別段、レディー・ファーストを気取ったわけではない。自分はコタールの関係者であるといった理由だけで、まともなベッドで眠ることが出来るのに対し、雇われた立場の冒険者であるシルトやフォーンロシェが馬小屋で眠る状況に納得がいかなかったのである。

 この世界ではそれが当たり前なのだ、と呆れ気味に説明するコタールに、


「宿に泊まっていても、盗みに遭わないとも限りません。彼女たちには、宿で眠る方を警護してもらう必要があります。

 空き家の警護は、グラナさんにお願いしましょう。提案した立場である私は馬小屋の警護をします。

 コタールさん、許可をいただけませんか」


 と、いささかどころかかなり強引な自論を展開しつつ、真剣な面持ちで修一郎は承諾を迫った。


「え?え?」

「ちょ、ちょっと……アンタ何言って……」


 普段は頼りなさそうにしか見えなかった、長身の男が口した突然の提案に、戸惑うシルトとフォーンロシェ。

 グラナは薄い笑みを口許に浮かべて黙ったままだ。


「……寒いぞ?」


 暫し修一郎の目を見つめていたコタールが、短くそう告げる。


「御者台で風に吹かれているよりかは暖かいでしょう。先ほど馬を繋ぐ際に確認しましたが、幸い使われていない藁もあるようですし」


 足元に置かれていた自分の荷物を担ぎ上げると、修一郎は一人馬小屋へと足を向けた。




「ハーベラさん、アイツ……しゅ、シュウイチロウは何を考えてるんですか?」


 ハーベラと同室のフォーンロシェが、ベッドの上で胡坐をかきながら口を開く。

 四人部屋が一室と二人部屋が四室しかない村の宿での会話である。

 四人部屋にはコタールと次男のカーロン、三男のランシュに、隊商の古参であるアルタスリーア出身の人間族の男商人が眠ることになった。残りの二人部屋は、長男セギュールと彼と仲の良い犬人族の商人、ハーベラとフォーンロシェ、パルメルと元冒険者の猫人族の女商人、体調の不良を訴えていたハーフリング族の男商人と彼の妻に、それぞれ割り当てられた。

 シルトはパルメルの部屋で、猫人族とベッドを共有することで周囲も本人も納得した。細身の体型の猫人族と小柄なシルトだから出来ることであった。


「シュウイチロウの素性は聞いているのでしょう?」


 既にベッドに横になっていたハーベラが、寝返りをうってフォーンロシェへと向き直る。


「それは……まあ。この世界より文明は進んでるけど、魔法が存在しない世界から来たとか……。

 異世界人なんて初めて見ましたけど、みんなあんな感じなんですか?」


「さあ、どうかしらね?私だって異世界人に出会ったのは初めてだもの。

 他の異世界人がどのような性格だったのかなんて知らないわ」


「シュウイチロウの世界では、女子供はよっぽど大切に扱われてるのね。だとしたら、羨ましいくらいに平和な世界だこと」


 口調に多量の棘を含ませて、フォーンロシェが天井を見上げる。

 冒険者になって、というより生まれてこの方、このような扱いを受けたことのなかった混血者の彼女にとって、修一郎の行動は理解の範疇を超えていたようだ。

 或いは頭で理解したからこそ、それによって湧き上がった、様々な感情を持て余しているのかも知れない。


「それは違うと思うわよ?聞いたところだと、彼の世界でも女性は護られてばかりの存在ではなくて、しっかりと自立しているようだし、子供だって働いたり、国によっては戦争に駆り出されたりしているそうよ……。

 種族は人間族しか居ないみたいだけれど、毎日のように世界のどこかで争いが起こっているらしいわ。

 今回の彼の行動は、あちらの世界の常識といったものではなくて、彼自身の信念というか感情によるものなのでしょう」


 諭すようにゆっくりと、ハーベラが言葉を紡ぐ。本人に直接確認したわけではないが、彼女はその推測が間違ってはいないだろうと確信していた。


「……だとしたら、変な奴ですね」


 それがフォーンロシェの癖なのだろう、小さく鼻を鳴らしてベッドから降りると、壁にかけられたランプへと歩いて行く。


「明かり、消します」


「ええ。おやすみなさい、フォーンロシェさん」


 ハーベラが応じると、小さく短い呼気とともに、部屋は暗闇に包まれた。

 そして、黒髪の冒険者はベッドに立てかけられた長剣の場所を確認すると、布団に潜り込んだのだった。




 ザムキの村を出て二日。一行はウィレンカの市壁を潜った。

 マスィリで加わったバンルーガ出身の行商人の言葉を裏付けるように、ウィレンカ到着の翌日からマスィリ周辺の天候が荒れ始めたとの情報が得られ、隊商参加者は安堵する。

 その行商人は当初の予定通り、ウィレンカで隊を抜けたので、コタールは新たにルザル王国行きの隊商に参加する者を募集した。

 最終的に、九人の新たな行商人が加わり、コタールの隊商は三十人を超える大所帯となった。

 こうなると、一人では統率することが困難であるため、コタールは隊を二つに分けることに決めた。

 一つはコタールが率いる隊、もう一つはセギュールと最古参の人間族の商人二人で率いる隊である。

 コタール隊は、コタール、ハーベラ、パルメル、ランシュ、修一郎、フォーンロシェ、三人のアルタスリーア出身の人間族商人、五人のバンルーガ出身の人間族商人、ハーフリング族の商人夫妻、猫人族の女商人で構成された。

 セギュール隊は、セギュール、カーロン、グラナ、シルト、最古参の商人を含めた五人のアルタスリーア出身の人間族商人、四人のバンルーガ出身の人間族商人、二人の犬人族商人の構成となった。

 ウィレンカに滞在した四日間で、運んできた荷物の販売や新たな商品の仕入れを済ませた行商人たちは、二つの集団となって街を出た。


 その間、修一郎は異世界人に関する情報を調べるための時間を一日ほど与えられたが、一日で調べることの出来る情報など限られており、得られたのはアルタスリーアに残されている記録と大差ないものが殆どであった。

 ただ、『遺跡の国』の異名を持つルザル王国に、異世界人にまつわる膨大な記録を収集している学者が居るらしいとの噂を耳にすることが出来たのは、大きな収穫であったかも知れない。

 その話を修一郎本人から聞いたハーベラは、我が事のように喜び、修一郎の肩を叩いた。


「バンルーガに来たのも、雪で足止めされたのも、無意味じゃなかったってことよ。

 これでルザルに行く張り合いが出来たでしょう?諦めずに頑張りなさい」


「ありがとうございます、ハーベラさん。

 でも、出来れば今度バンルーガを訪れる時は、冬以外がいいですね」


 バンルーガでは知己を得て、多少の貯えも出来た修一郎であったが、それでも二ヶ月以上も動きたくとも動けない状態になるのは懲り懲りであったようだ。

 加えて、冬場の食堂や酒場で出される酒精がウトカのみとなることや、料理の味付けがやたら濃いことなども、修一郎には合わなかったらしい。

 真面目な顔でハーベラに礼を言った後、少しばかりおどける口調で付け加えた修一郎の台詞であったが、それは偽らざる本心であった。


「そうね。アーオノシュに戻ったら私とパルメル、ランシュは暫く隊商から離れるつもりだから、あの人にお願いしてみるといいわ。

 セギュールもそろそろ独立させる頃だし、いつまでも一つの隊商である必要もないでしょう」


 この度の隊を二つに分けたことも、実のところ人数が多くなったからという理由だけではなく、セギュールに隊商を率いる経験を積ませる目的もあった。

 ハーベラの言うように、年齢的にセギュールも行商人として独り立ちするには充分であったし、いつまでも家族全員で行動するわけにもいかない。

 パルメルはアーオノシュの魔法院で働くことを目標としており、そのための魔法に関する勉強を、旅をしながらも続けている。

 カーロンは行商人になるよりも、剣の腕を磨いて護衛として隊商の役に立つことを望んでいるようである。

 ランシュは未だ幼いものの、姉に触発されたのか、本を読むことが好きな少年に成長していた。

 コタールもハーベラも、ランシュが望むのなら、王立学校に入学させても良いと考えている。

 我が子が、それぞれの目標を持った今、そろそろ一度区切りをつけるべきだろうというのが、アペンツェル夫妻の共通した認識である。

 残るは修一郎だが、コタールとしては行商人になり各地を廻りながら、元の世界に戻る方法を探すことが最良だと考えていた。

 後は本人の意思の問題だ。


「アーオノシュに戻るまでは、まだ時間があるわ。貴方自身の身の振り方をじっくり考えて決めることね」


 ウィレンカを発つ前の日の夜、宿の食堂でウトカの注がれたグラスを片手に、ハーベラは柔らかな笑みで修一郎に語ったのだった。






 ウィレンカからルザル王国へ向かうには、南へ伸びる公路を通り、まずは国境の街ネベロクルフの手前にあるレデグという町を目指すことになるのだが、ウィレンカからレデグまでの間には、小さいとは言えない森が存在した。

 曲がり形にも、バンルーガ王国とルザル王国を国境を越えて結ぶ公路であるため、定期的な整備や巡視兵による治安維持が行われているので、普段であれば然程心配する必要はなかったが、今は冬である。

 巡視も月に一~二回実施される程度で、除雪も行われているか怪しい。

 念のためにと、コタールがウィレンカで加わった商人たちの意見を聞いたみると、揃って「問題ない」との答えが返ってきた。

 曰く、レデグ及びネベロクルフ周辺の気候はここ一週間ほどは穏やかに推移していること、仮に降雪があったとしても、昨年の大雪から受けた被害を重要視した国が精力的に森周辺の除雪を行っていること、バンルーガ南部の森には雪熊などの凶暴な野生生物や魔獣は殆ど棲息していないこと、朝一番にウィレンカを発てば昼前には森へ到達でき、公路を外れたり余程のことがない限り夜になる前には森を抜けられること、自分たちの中にはレデグ出身の者も居るため案内は万全であること。

 自信満々に話す彼らの言葉は、コタールやアルタスリーアから参加している商人たちにも納得できるものであったため、ウィレンカの御者組合で公路状況を確認した後、一行はレデグへ向けて朝早くに出発したのだった。


 しかし、森に入って暫くした頃、問題が発生した。

 コタール隊の、ウィレンカから参加していたバンルーガ商人の乗る馬車が故障したのだ。車輪を支える車軸が中央から折れ、馬車が横転した。

 乗り込んでいた商人二人は軽い怪我を負い、レデグで売るつもりであったウトカの樽の大半も、横転した衝撃により破損して中身が流出した。更に、驚いた馬が暴れたことで引き綱と馬を固定する馬具が破損し、馬車を牽いていた馬は走り去ってしまう。

 そして間の悪いことに、一時は回復していた、ザムキ村で体調不良をおこしたハーフリング族商人の容体が再び悪化したとの報告が、彼の妻からもたらされた。

 隊商参加者の中からは、故障した馬車はとりあえずこの場に置いて、引き返してはどうかとの提案も出されたが、既に森に入って結構な時間が経っている。

 バンルーガ商人からは、引き返すよりもどちらかの隊をレデグに先行させて、病人を医術士に診せるべきであるとの声が上がった。

 無論、故障した馬車や無傷で残っている商品は回収したいので、換えの馬や馬車を修理する者の手配もお願いしたい、と付け加える。

 幸い、夕刻まではまだ時間がある。コタールは寸時黙考の後、二人のバンルーガ商人と三人のアルタスリーア商人を、自分の隊からセギュール隊へと組み込み、その場で待機しておくようにと伝えた。

 容体の悪化したハーフリング族商人と、二人の怪我をしたバンルーガ商人は、コタールと共にレデグへ向かい、そこで医術士か調薬士に看てもらうことになった。

 コタール隊の護衛として随行していたフォーンロシェはシルトと交代し、グラナと共にセギュール隊を護衛するように要請された。

 これは、森の中で待機するにあたり、護衛の数は一人でも多いほうが良いであろうこと、また、シルトが初歩ではあるが治癒魔法の心得があるため、街に到着するまでの間、病人や怪我人の看病を任せられることが理由であった。


「ちょっと待って!いくらシルトでも看病をしながらの隊商護衛は無理よ!

 グラナかあたし、どちらかを連れて行ってください!」


 シルトの護衛としての腕前は、一般的な行商人やカーロンには勝るものの、グラナや自分に比べると不安が残る。そう言ってコタールに再考を迫るフォーンロシェであったが、


「心配しなさんな。引退したとは言え、あたしも昔はそこそこ腕のいい冒険者と呼ばれてたんだ。

 陽はまだ高いし、聞くところだとここからレデグまでは子鐘一つくらいらしい。

 ぱぱっと行って日暮れまでには戻って来るさ」


 と、猫人族の行商人ベルーネが口を挟む。


「大丈夫だよ、ロシェ。少しはわたしも信頼してよね?

 それに、こういう時は大人数でぞろぞろ動くよりも、少数で行動したほうが早いって」


 既にハーフリング族商人の馬車に乗り込んで病人の容体を看ていたシルトが、人懐こい笑顔でフォーンロシェを諭すように言う。


「出来るか?」


 それまで黙っていたグラナが、短くシルトに問い掛けると、少女は「任せて!」と自らの胸を叩いた。


「分かった。任せる」


 狼人族の冒険者が、その言葉を発したことで三人の中では決まったようだ。

 それでも何かを言いかけようとした黒髪の冒険者に、異世界人の男が歩み寄って口を開く。


「フォーンロシェさん。

 護衛してもらう立場の私が言う台詞ではないのは承知していますが……。

 心配しないでください。必ず無事に戻ってきますから。勿論、全員で」


「剣の一つも振れないアンタに言われたくないわ。

 ……ったく、分かったわよ。今回はシルトに任せる。

 と、言うことで、シュウイチロウ。あたしと賭けましょ?」


 胸に秘めた感情を一気に吐き出すように大きなため息を吐いたフォーンロシェが、一度シルトに目を遣り、直後に挑戦的な視線を修一郎に向けた。


「賭け?いったい、何を賭けるって言うんです?」


 いきなり脈絡のない話になり、思わず訊き返す修一郎。

 しかし、フォーンロシェは澄ました顔で続ける。


「決まってるじゃない。アンタたちが陽が沈むまでに戻って来なかったら、今夜は奢ってもらうから。

 当然、あたしとグラナとシルトの三人分ね!」


「戻って来たら?」


「奢りは勘弁してあげるわ」


「無茶苦茶ですね……。でも、分かりましたよ。賭けに乗ろうじゃないですか」


 目の前の冒険者が、そうして自分を無理矢理納得させようとしていることに気付き、修一郎は応じることにした。

 二人の遣り取りを見ていたコタールが全員に指示を出す。


「よし。では、俺たちは急いでレデグに向かう。セギュール、サンタンド、後を頼む。

 皆も、できるだけ急いで戻って来るので、ここで待っていて欲しい。カーロンとベルーネは、グラナさんとフォーンロシェさんと共に周囲の警戒と護衛にあたってくれ」


 セギュール隊を率いる長男と最古参の商人に後を託し、いざという時のための警護を冒険者二人と次男、元冒険者の猫人族に任せる。


「分かった」


 セギュールと古株のサンタンドが応じる。


「了解した」

「ああ、父さんも気をつけて」

「ありゃ、あたしは居残り組みかい?ま、雪熊でも出ない限りは大丈夫さね」


 グラナが、カーロンが、ベルーネが、それぞれの表情と口調で引き受ける。

 残る行商人たちも真剣な表情で、各々が了解した旨の応えを返した。

 それを聞いてコタールは一つ頷くと、自分の馬車へと駆け寄る。


「では、俺の隊の残りの者はついてきてくれ。それから、ノーブスさん、貴方は我々の馬車に乗っていただきたい。

 公路を外れることはないが、出来るだけ急ぎたい。案内を頼む」


「構いませんよ」


 馬車に乗り込むコタールに落ち着いた様子で返すのは、ウィレンカから参加したバンルーガ出身の行商人の男であった。

 御者台に座ったコタールは修一郎から手綱を受け取り、荷台の家族へ向けて口を開く。


「お前たち、これから暫くはかなり揺れることになる。落ちたりしないように、しっかりと掴まっていなさい」


「修一郎も、荷台へ下がれ。ここは俺とノーブスさんで充分だ」


「分かりました」


 先行組の準備が整ったことが告げられると、コタールは手綱を引いた。



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