11.終わりは始まり
漂っていた。
目眩がするような異風景が、周囲を通り過ぎてゆくのを眺めることしか出来なかった。
主観的に随分永い時間が経ったように思えた時、僕は傍らにヒトの気配を感じた。
「ようやく見つけたっ」
怠かったが、首をなんとか気配の方へ少しだけ傾けるのに成功する。
そこにヒカルがいた。
「まだ、『精神』がなじみきっていないんだね。たぶん、僕と一緒にいれば大丈夫だよ。コツを教えてあげる」
「ヒ……」
ヒカル、どうして? そう聞こうとしたが、うまく声が出せなかった。そもそも、これまでどうやって話すということができたのか分からなくなっていた。
あまりにも永い主観時間、『実装空間』――人間の脳という限られた空間認識力しかない物体に合わせて作られた世界――から離れていたせいか。
いや……いろいろなことが、思い出されてきた。
「話さなくてもいいんだよ。ユウの言いたいことはわかるから。あのね、最後の時にユウの感情に、『深淵部』のAI(人工知能)さん達が気付いたんだ」
ヒカルは泣きながら笑っているような、複雑な表情で僕を見つめていた。
「き、きみは、確かに、ヒカル?」
「うん。AIさん達は、自らの構成量子素子を破壊してエネルギーに変換して高次元精神体にぶつけたんだ……おかげで、あの悪魔は破壊された。けど、『実装空間』も散りぢりに裂けて無くなってしまった。最後に残ってボクを『再構成』してくれたAIさんに、そう聞いた」
「そうだったのか……」
僕は、ようやく背を起こした。いや、これも主観的なもので、周囲はどこが上で下なのか分からない混沌としたものだった。そう、まるであの『深淵部』から出た先のような……。
唐突に分かった。ここがそれなのだ。
「ウン、ここはいわゆる剥き出しの高次空間ってヤツなんだ。ヒトは『精神』だけで高次空間にいられるって、前にユウが言ってた通りだった。でも、ずっと探してたんだよ」
「ありがとう、ヒカル」
「でもっ。これからはずっと一緒だよ! この高次空間は時間も空間も無限なんだから!」
僕に抱きかかってきたヒカルを受け止め、僕も、ヒカルの背に手を回す。ヒカルの頬は濡れていた。
主観的に永い時間、僕達はぞのままの姿勢でいた。
そして、僕とヒカルはしっかりと手をつないで、高次空間の彼方に向かって進みはじめた。
- FIN -
※ 本作品はフィクションです。実在の人物、団体、物理法則等とは一切関係ありません。
この作品は、高校の頃、初めて書いた長編小説を、その後、全体的に修正したものです。多すぎた登場人物を整理した他は、設定、ストーリーライン、その他、まったく変更していません。
この話は、もし究極のVR空間ができて、ヒトが全てそこに住んだらどうなるだろう?と想像したのが基になっています。いずれ、同じ設定で、もっと発展させたストーリーを書きたいと思っています。
明日、SSを一つ投稿して、完結済みにする予定です。




