3. シェルファ様
「シルビア様っ!」
私とシルビア様がシルビア様の家に入った途端に声を上げて女の子がシルビア様に走り寄ってきた。
「どうしたんだい?カリン」
彼女の名前はカリンというらしい...可愛らしいお顔に良く似合う名前ですわ。
「シルビア様...?そちらの方はどなたですか?」
「彼女は聖女様だよ」
様付けはこそばゆいので止めていただきたいですわ...
「聖女様!?凄いわ!お母様を呼んできますっ!」
「ちょっと!...手遅れでしたわ...」
私が止める暇もなくカリン様は走って行かれました。しかししばらくするとお母様が外出していたことを思い出して帰ってこられました。
「カリン、シェルファの部屋に聖女様を案内してあげなさい」
「は、はいっ!聖女様、こちらです。」
そう言ってからカリン様は私をシェルファ様の所へ案内してくれました。シェルファ様とは誰でしょう...と思っていましたが着くとシルビア様の妹様だとすぐにわかりました。体中に包帯を巻かれていて見るだけでもこちらが痛くなってきました...
「シェルファ様、私イヴィツア伯爵家のソフィアと申します。」
「そ、ソフィア?もしかして聖女様ですか...?」
シェルファ様が訊くので私は頷いた。すると、シェルファ様が神様に感謝を伝え出したので、動きを止めるまで待つことにしました。
「ソフィア様...私の所に何か用事がおありですか...?」
とシェルファ様が無理をして訊くのでシェルファ様に癒しにきたという事だけを伝えた。
「ソフィア様...私に聖女様の力を使うのは勿体ないです...隣国から来たでしょうから隣国の人々を癒してあげてください...」
シェルファ様は凄く良い子です...シェルファ様にもシルビア様に話した話を話すと立ち上がろうとなさったので急いで抑えました...その時に呻いていたのですぐに力を解放しました。
「そ、ソフィア様...?私の身体の痛みが...」
「もう、大丈夫よ...包帯...外してもよろしいですか?」
そう私が言うと快く了承してくださったので包帯を外していった。包帯には血が大量に付いていましたが身体の方をタオルで拭いてみると傷も無くなっており骨の方も大丈夫だということが分かって「ふぅ...」と息を吐いた。
「ソフィア様っ!本当に有難うございます!もう死ぬと思っていました...だけれど、生きさせて下さり有難うございました!」
そうシェルファ様は言って私に抱き着いてきた。今まで痛かったでしょうね...そう思って少し魔法を使った。花畑を出す魔法だ。聖女は傷を癒すだけでなく精霊の力を借りて自然に少しだけ干渉できるので、何の花を植えるか迷っているとシルビア様が言っていた庭に花畑を出した。するとシェルファ様が立ち上がって手を叩き始めましたので私は
「少し見に行きますか?」
と言ってシェルファ様と一緒に庭へと向かった。その様子を見ていた人達が「シェルファ様が!!」と喜んでいるようで本当に良かったと思う。因みに癒す前の骨はグチャグチャで全身が複雑骨折の様になっていた。普通の人だとすぐに音をあげそうなぐらいの折れ方だったがシェルファ様は涙を流さずにずっと耐えていらしていて本当に私の方まで身体が痛くなってきましたわ...
シェルファ様は花畑を「綺麗ね」とほめて下さり、特にネモフィラという花が気に入ったようでした。種を出すことも出来るのでシェルファ様に庭一面に埋めれるほどの種を袋に包んで渡すとこれも喜んでくれました。私からすると私自身が出来ることですので他の人を喜ばすために使えて本当に良かったですわ!その時シルビア様に声をかけられた。
「ソフィア様少し...」
との事だったので、
「シェルファ様、少し...」
そう言うとシェルファ様は「いってらっしゃい」と見送ってくださいました。シェルファ様の笑顔がとても眩しくて思わずくらっとしてしましました...これが幼い女の子の魔力...
「ソフィア様...本当に妹を助けて下さり有難うございました!」
「いえいえ...とんでもない!私は私に出来ることをしただけで今動いているのはシェルファ様自身のお力ですので...」
そう私が言うとシルビア様は
「お礼できる物がうちにはありませんので、ノスコーヴァ伯爵家のアリス様の家の場所まで馬車で送らせていただきます。」
と...馬車でなく普通に地図を見せて下さるだけで良かったのですがそちらの方が大変だったのかしら...
私がそのように考えていましたがシルビア様は『お礼』と言って連れて行ってくださいました。
「あぁ...アリス様の家...」
そう私が呟くとシルビア様は「お役に立てて何よりです。」とのことでした。シルビア様がいなければアリス様の家へとたどり着けてなかったので本当に良かったですわ!
私はシルビア様に感謝を伝えてシルビア様が見えなくなるまで見送った。