2. 謎の機械 『すまほ』
町に到着し目の前を通り過ぎた人に声をかけた。
「あの...」
すると、若い男の人は直ぐに振り返ってくれました。この国の人達は親切ですのね。
「はい...?どうしましたか?」
「あの、私イヴィツア伯爵家のソフィアと...」
と言ったところで「えっ?」と口を挟まれた。何か私変な事を言ったしまいましたか!?
「そ、そ、そ、ソフィア様!?もしかすると隣国の聖女様ではおられませんか!?」
「え、えぇ。そうでしたが...」
私が困惑しながらそう答えると、
「ぜ、是非我が家へ来てくださいませんか?」
と勢いよく言った。彼の名前はシルビアというらしく何か急ぎの用事のあるのではと思い、
「何かあったのですか?」
と訊いた。初対面の人に家に来てというなら何か困っている事があるのでしょう。私は聖女として、人間として困っている人は見逃せませんからね。
「私の...私の妹が崖から落ちて大怪我をしていてこの国の優秀な医者でも治せなかったのです...聖女様に力を貸していただけないでしょうか?」
お医者様でも治せないのですか...結構な大怪我をなされたのですね...言い方は悪いですが簡単な骨折程度なら安静にしていれば自然治癒でも治りますが簡単な骨折とかではないのですね...聖女である私に任せなさい。絶対に治しますわ!
「いいですよ。私はもう隣国の聖女ではありませんので、これからは色々な国の方々を癒すことに決めましたの。」
「そうでしたか...何があったのですか?」
そうシルビア様が訊いてきたので婚約破棄になったことと国外追放になったことを正直に話した。すると、シルビア様は顔が真っ赤になり「隣国の第一皇子はクソですね!」とメンデル皇子が怒りそうな事を正直に口にした。
「私、ノスコーヴァ伯爵家のアリス様に婚約破棄と国外追放になった事を話してどうすればいいのかを訊きに来ましたの。私はすることもなく暇ですし時間もたっぷりありますので今以上に重症化する恐れがある妹様を癒しに行きたいですわ。出来ればアリス様の家の場所を後で教えていただきたいの、人助けをすると思ってシルビア様の家にまずは連れて行って欲しいですわ。」
「妹の為に有難うございます...!私の家はここから少し離れていますので馬車を呼びますね。」
そう言ってシルビア様は手元の機械を操作した。見慣れない物で身近な物に例えると板のような物だがシルビア様の手元を覗いてみると私達が話している言語が書かれていて内容は読めますがどうやって筆記用具なしに文字を書いているのでしょうか...?
「ところでそれは何でしょうか?」
そうやって私が訊くと、「スマホです」と答えて下さった。すまほ...?馴染みのない言葉ですわ...メンデル皇子の国よりこちらの方が優れているのでしょう。その事はハッキリと分かりましたわ。
シルビア様が『すまほ』を操作してから数分経った頃に馬車がやってきました。凄いですわ!『すまほ』とやらを操作すると馬車を呼べるのですね!
「お待たせしました。シルビア様。あれ...?そちらの方は?」
「この方は隣国の聖女様だ。」
「な、なんと!?何故そのような方が国にいらっしゃるのですか!?」
この方にも正直に話すとシルビア様と同じことを仰っていた。やはりメンデル皇子に対する私の考えは間違っていませんでしたわ!そう私が自分の事を慰めながらドキドキとしていると、大きな家の前で止まった。
「こちらが私の家でございます。」
そうシルビアさんが言ったのだが私の実家と同じぐらい大きい気がします...伯爵家や侯爵家の方なのでしょうか...?なんでもいいですわ、まずは...
「妹様を癒しに行きましょう。」
そう私が言うとシルビア様は目に涙を溜めながら「はい...」と頷きました。また私変な事を言ってしまったのでしょうか...?ところで、妹様の崖から落ちて重症って何してたのでしょう...?薬草とかでも取りに行ったのかしら...?それとも家の近くに崖でもあるのかしら...?町の中には無い筈だから森に動物を見に行ったのかしら...?なんでもいいからまずは早くシルビア様の妹様の容体を確認しなくては...