16. 再生魔法擬き
「ふわぁ...」
気が付くと朝になっていた。昨日はまだ3,4時ぐらいだったような気がするのですが...
時計を見ると針は4:31を示していた。いつもより起床が30分程遅いのですが、多分この宿の布団がとても寝心地が良かったのでしょう。それか...疲れ...かしら?
そう思いながら一階へと降りて外へ出た。
改めて見ましたが、本当にこの辺り一帯は土地が作物の栽培に向いていないわ...
昨日の家の人の土は..そういえば土地全体を普通に再生させることだってできたのじゃないかしら...?
そう私は思ったのでやってみないと分からない精神で昨日、腐葉土を作った人の畑へと向かった。
「すみません...!」
「あら、昨日のお嬢ちゃんじゃないかい。何か忘れ物をしたのかい?」
いえ、そうではないのです...けど先程赤玉土やら買った方がよいとか言っていたのにも関わらず急に「私直せるかもしれません!」とか言ってしまうと嘘吐いたのかと勘違いされそうです...
「私、もしかしたらですが土を買わずに土地を再生できるかもしれません...!」
「そうなのかい?もしかしてそれを伝えるためにわざわざ...ありがとうね。この国にやって来てくれて...お嬢ちゃんのおかげで何とかなりそうだよ。...ん?まだ何もやってない、って?隠しているつもりかもしれないけれどクリネラ王国の聖女でしょ??知ってるわよ。というかあの魔法?を一回みたら皆そう思うわよ。だってこの世界で魔法のようなものを使える人は貴女しかいないもの」
「え...?どうして、ですか?」
聖女は私以外見たことがありませんから私以外はいないのですが、魔法使いの方がいらっしゃるのではないでしょうか...?
「魔法使いの方はいらっしゃらないでのすか?」
「お嬢ちゃんの年でそれを知っているのは珍しいわね。それは何十年か前に滅びた種族らしいわよ。昔は魔法使いが出てくる本とかはあったらしいけど末代の魔法使いがすべて焼いたそうよ」
「どうしてですか...?」
「私が知っているのは、魔法は禁忌に触れる内容が多すぎる。このような内容の物がこの世に存在してはならん。特に"再生魔法"という過去を遡ってしまう魔法はダメだ。神の怒りにふれ、私達の種族は滅びる。ということだけ。今は呪術師という人はいるけれどそれは魔法とは違うと言われているわ。だって人を呪ったりして不幸を作ることしかできないのだから。と母が何度も言い聞かせてくれたわ。絶対に呪術師に会っても人を呪ったりしたいと言ってはいけないと。自分の弱みに付け込まれて一生操り人形のように操られるだけだと」
彼女の言葉を聞いていると少しずつ言葉が心に沁みてきた。
...一生操り人形のように操られる...ですか
聖女の魔法では絶対にできませんが呪術師の方では傀儡魔法という呪いの一種がありましたわ...ね。
...いいえ、この事は一度忘れましょう。今度私が思い出さなくてはならないときに嫌でも思い出すことになるでしょうから...
「そうなのですね...魔法使いの話も凄く気になりますが試してみたいのでしてみてもよろしいでしょうか?」
「いいよ、いいよ!お嬢ちゃんの魔法は凄いからねぇ...成功しなくても見てるだけで綺麗だし楽しいからね」
そう言って彼女――ユルネリさんは言った。
「聖なる力よ...私に力を与えよ。この土地の時間を巻き戻し、世の理から外れた生を取り戻せ、リターン」
そう言った刹那辺り一面が光に覆われた。前にも光が起きたことがあったがその時とは比にならないような光量だった。
「再生、魔法...」
そうユルネリさんが言うのが聞こえた。
「これは再生魔法ではありません。"生き物"以外の時間しか戻せませんから」
そう言って私は微笑んだ...つもりだった。
「そ、そう...でもありがとうね。本当に私ばっかり良くしてもらって...ありがとうね」
と言ってユルネリさんは去って行った。
「再生魔法...だったのかしら...?」
そう口の中で呟いた。再生魔法という言葉には聞きなじみがあってどこかで聞いたことがあるような魔法の名前だった。だが、自分自身が発動した魔法が再生魔法の可能性があると知って背中に寒気がきた。
ユルネリさんの話...魔法少女の話を聞いていなければ再生魔法を深く探っていっていたかもしれない。改めてユルネリさんに感謝をしてユルネリさんが立ち去ってしまった畑に背を向けて宿へと向かった。
「「「「聖女様!!」」」」
え...?どうしてこうなっているのかしら...?
宿に帰ると何故か人だかりが出来ていたので「どういたしましたか?何があるのですか?」と訊いただけだったのですが、何故か私が聖女だというのに気付いた人が多かったのです。
...私、何かやってしまいましたか...?