11. ソフィアのいないクリネラ王国
珍しくというか初めてのメンデル第一皇子視点です。
時間軸が違いますのでご注意を...
私は仕事をしていない"ハズ"だった元婚約者を婚約破棄をした上で国外追放にした。そして、前から気に入っていた"サリエル"と婚約した。サリエルは聖女ではないものの、簡単な仕事なら出来た。谷から出ている瘴気を1週間程度なら抑えれるやら手を紙で切った際に即時回復をかけれるやら...そう、簡単な魔法如きなら出来たのだった。
しかし、元婚約者には敵わなかった。
元婚約者なら瘴気を抑える為にわざわざ谷まで行かずに他の作業をしながら抑え続けることが出来た。元婚約者なら城中...いや、国中の人々がもし手を紙で切ってしまっていても即時回復させることが出来た。元婚約者ならこの地を貧しくせずに半永久的に潤し続けることが出来た。元婚約者なら力を使っていてもサリエルのように毎回使い果たすことはなく、ほぼ永遠と力を使い続けることが出来た。元婚約者なら...!!!!!!
「くそッ!!!」
私は王族特有の金髪を掻きむしった。
床に艶の無くなった髪の毛がバサバサと落ちて行った。多忙な日々を過ごしているため、元婚約者といた時は気を遣っていた髪の毛にも構う時間が無くなったのだ。
「ねぇ...メンデル...」
「うるさい!!元婚約者に負ける癖に私に口ごたえなどするな!!」
サリエルとの婚約生活も上手くいかない。元婚約者となら、元婚約者となら!!私は上手く続けることが出来た...はずだった。
...これは全て私自身のない物ねだりだ。
父にも愛想は尽かされかかっている上、この国が安定していない。
父には、「世界唯一の聖女であるソフィア様を私の許可なく婚約破棄という屈辱的な事をした上で国外追放したのだ!?ソフィア様はこの国に必要なのだぞ!?本当に何をしてくれた?これで他国との貿易が不便になったらお前のセイだからな?メンデル!一応言うが、ソフィア様に謝ってこの国に戻ってくるかこの国の財政等々を立て直さない限りお前に絶対に王の座は渡さないからな!お前の弟であるメルバルクに譲るからな!覚えておけ!!」と言われ、母には「ソフィア様は私の些細な怪我は勿論の事、心配させると悪いと思ったので、メンデルには黙っていましたが病気を治してくれていたんですよ?私と貴方の父が外出している間にソフィア様にあんな仕打ちをするなんて!ソフィア様に何の恨みがあったの!?今のメンデルの婚約者のサリ...エ?だったかしら?あの子は全然自分自身の魔力の事ばかり心配して全然国や城の人達の事を考えていないわ!それに全然魔力もないし魔力回復ポーション(美味しくない+飲むと激痛が走る)で回復すればいいのに全然そんな事もしないし...本当にどうしてかしら...?ソフィア様は飲んでいなかったって...?それでも国中の怪我や病気を全部治していたじゃない!」と滅多に怒鳴らない母も怒鳴らしてしまった。
元婚約者の名前は憶えているのにサリエルの名前を憶えていない。それほどソフィアが人助けをしていたのだろう...そして両親も元婚約者の事を好いていたのだろう。私は両親や周りからの重圧に潰され独白した。
「私は間違ったのか...ソフィアはこの国にいるべき存在だったのか...」
その時だった。勢いよくドアが開かれた。一瞬敵襲か両親かと身構えたが自身の側近のソルトだった。
「メンデル第一皇子様!ご報告が御座います!!」
「どうしたソルト。お前にしては急いでいるな。ゆっくり話せ」
「はっ!メンデル第一皇子様の元婚約者であるソフィア様のご実家のイヴィツア伯爵家についてです。何故かクリネラ王国自体の土地は貧しくなっていっていますがイヴィツア伯爵家の敷地の土地だけは貧しくならず、むしろ豊かになっていっております!!」
「何!?理由は分かるか?」
「恐れながら申し上げます。メンデル第一皇子様とは縁を切りましたがご実家の方とは縁を切らずにむしろ助け続けているのではと拝察いたします。」
「ソルト、お前生意気な口を叩くようになったな。私が婚約破棄したのが悪いのだと言いたいのか?婚約破棄をする前の私だと確実に処刑していたぞ。確かにお前の言っている事は間違っていないだろう。」
「優しき心に感謝いたします。」
棒読みで台詞を紡ぐソルトを憎む気にはどうしてもなれないので「ご苦労だった。これからも頼むぞ」とだけ言い、部屋から外に出した。優しい言葉など何も言っていないが婚約破棄をする前は相当言っていることがきつかったのだろう。私はふと思い出し、シュガを呼んだ。
「シュガ!シュガはいるか?」
「はい、ここに」
...シュガは何故か何時いかなる時に呼んでもどこからともなく現れる。一時期天井裏にでも住んでいるのかと思ったが王宮の天井裏は完全に塞がれているので人が入る隙間は無かった。因みに天井にも張り付いていない。影から出て来ているのでは?と思うような所から出てくる。本人に訊いても「メンデル第一皇子様が知らなくて良い事ですので」としか答えない。婚約破棄をする前は処刑する寸前だったが、優秀な側近なのでやはりコイツも憎めない。
「シュガ、お前は確か呪いの方にも精通しているな?」
「はっ!確かに精通しております。何か御用が御有りなのでしょうか?」
「今私の元婚約者がどこに滞在しているか分かるな?」
「数日前にはシュカが探っていますので、知っております。」
...私の部下だけは優秀だな。
「その国に嫌がらせと元婚約者にこの国の力を分からせたいのだ。そして、この国に元婚約者を呼び戻そうと思う。呪いはこの国のように急激に貧しい土地へと変化させるような呪いがあるな?」
「はっ!ございます!しかしこの国のは呪いでは御座いませんので、私自身の独自の呪いをかけさせていただきます。範囲は全域ですか?」
「勿論だ。今すぐ実行しろ。」
「御意。」
そう言ってシュガは光のスピードで姿を消した。
「...シュガは忍者にでも向いているのではないか...?」
と口をついて言葉が出た。
...忍者とは...?どこかで聞いた事だけはあるのだが...思い出せないな。
まぁ...分からなくても大丈夫だろう。
私の王位継承の為だ。元婚約者にも他国にも容赦しない!!
読めば読む程クソ皇子っぷりが...
追記:1/19 作品の話数のピリオドの後ろに半角スペースを足しました。