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八重桜先生

 「聖アストロクス学園から来ました半崎守です。皆さんよろしくお願いします」


 自然に拍手と歓声が湧いた。中には男子にも関わらず「かわいい!」等といった言葉の数々が男女問わずクラス一帯をざわつかせた。

 半崎守は本当に可愛い。


 更に、「聖アストロクス!?しかも推薦バッチ!?」と、驚嘆の声を上げた生徒もいた。


 聖アストロクスとは、巷で噂される超進学校のことで、毎年数名が小春川高校の推薦枠を使い入学してくる。勿論一般でここに入学して来る奴もいるが、あまり注目はされないようだ。


 ではなぜ推薦で入る事に意味があるのだろうか。

 なぜなら学費全額免除、噂では有名国立大学の指定校推薦が狙えるなんて話もある。

 毎年数百名の生徒が厳しい推薦基準や試験を通過してようやくほんの数名が選出される。


 その推薦基準は本当に恐ろしい。

 飛び抜けた才能や実績があったり、飛び抜けた学力のどちらかを保持していないと書類選考の段階で落と

される。書類選考通過率一・二パーセント。

 その後は簡単な面接をして終わりなのだが、この段階で残っていた二十人程度が一気に数人に減ってしまう。最後は本当に基準が分からないことから有名で付いた名前は「最後の審判」と......


 余談だが、美男美女が多くいると噂されるので、その影響もあって株の出だしが高い。

 

 守はその数人の内の一人で制服の襟にその証であるバッチを付けていた。

 バッチはポケットにしまっているが、ちなみに俺も推薦組だ!


 歓声も収まり俺に引き継がれた。

 守を先に自己紹介させてしまった自分に後悔を覚える。次も同じクオリティで行かなければ……

 ゆっくりと席を立つ。クラスは期待に満ちた目で俺に視線を集めた。

 ゴクリと唾を飲み込む。


 「同じくアストロクスから来た佐々木礼愛です。皆と仲良く出来たらなと思っています、よろしくお願いします。」

 

 誠実そうで良い自己紹介だと思う。


 しかしクラスは静寂を保ったまま、俺は全方向から冷たい視線を感じた。拍手をしたのは守、七瀬、アリエルの三人のみで、三人の拍手が強調されてしまい、より周囲の視線が痛くなった......

 

 昔から俺は自己紹介が苦手だ。

毎年毎年この季節が来て玉砕する。守は拍手しつつも苦笑いを浮かべていて他二人も同様だった。


 そのまま席に座り次の人に回ると思っていたがその考えは甘くかったようだ。


 (アレが聖アストロクス?なんか地味じゃね)

 (アストロクスにこんな根暗そうな奴がいるのかよ)

 (なんか怖そう)


 俺は少し愛想の無い顔で声もテンションも低い。目元まで伸び切った髪がより一層暗さを演出している。


 聖アストロクスだけあって期待値が大きかったのだろう。俺は人生初めて自己紹介で批判を食らったのだった。


 「むぅぅ............」


 おいおい可愛いかよ。

 隣では怒りを抑えようと必死に頬をに膨らませている守がこちらを凝視していた。


 ツンッ

守のほっぺたを押し、口に溜まった空気を吐き出させた。

 

 「礼愛君.....」

 「落ち着け守。気持ちは分からんでもないが俺は大丈夫だから」

 「でも......」


 俺は座ると守の肩を二度ポンポンとたたき、宥めた。

 アリエルは姿勢を整えて目を閉じ、いかにも関わりたく無さそうにしていたが俺をどうこう言う気は無いらしい。


 俺への批判や悪口は少なくなったが、いまだその声は消えることは無い。

 相手にしてはきりないので耳を抑えようとした、その時だった。


 勢いよく席を立つ音が聞こえ、クラスの生徒は一斉にその方向視線を向けた。


 「同じく聖アストロクスから来た白月七瀬です。私の友人である礼愛君をこのような言われようにはとても不愉快極まりないです。今すぐに訂正と謝罪を要求します」


 黒髪をさらりとと靡かせ、まるで騎士のように堂々とした姿勢だった。一度も見たことのない鋭い眼光を見せた七瀬は周囲を冷たく一喝した。

 クラスは一瞬にして静まる。


 「えっ」


 七瀬の思い切った行動に動揺し、思わず声が漏れた。クラスの皆はカボチャを被ったように同じ顔をしていて、カーンとして洗練された統一感さえ感じてしまった。

 俺と守は目を丸くし顔を合わせた。


 「他に何か言いたいことは?」


 あるわけ無いだろ!ここで何か物申す人を勇者であると断定しよう。

 

 「はい」


 ......?え?

 声の方向にはスッと真っ直ぐ手を上げたアリエルがいた。


 「あなたの勇敢さ、とても素晴らしいと思うわ。私とお友達にならないかしら」


 何を言い出すと思えばそういう事か。なんだよ、喧嘩にでもなるんじゃないかと思って身構えたわ。


 「へっ?」


 七瀬はすっとんきょうな声をだし、固まってしまった。


 いやそうなるよな、だって今まで怒ってた七瀬が急に交友関係を求められるとか、感情が混乱するのも無理もない。

 

 「え、あ......か、考えておきます......」

 「そうね。返事に期待しているわ」


 アリエルは上品に小さく笑い、七瀬も落ち着きを取り戻したようだ。


 事は収まり、引き続き自己紹介が続いていき全員が自己紹介を終え、しばらくした時......


 教室のドアがゆっくり空き、堂々と歩いてくる白シャツ女性教師が第一声を上げる。


 「私は八重 桜。お前たちのクラス担任だ」

 

  ............酒臭。

 スラッとした体型で背もそこそこ高い。黒いウルフボブでキリッとした目で、大人美人なのに、これで台無しだよ。

 あと、目のやり場に困るが、首元にキスマークが付いていた。


 クラス全員は目と鼻を塞いだ。

八重先生は俺たちの反応が違和感を感じたのか眉を寄せ、自身の状態に気付くと元に戻した。


 「あぁ......まだ朝の酒が残っていたか。悪いが耐えてくれ。」


 「いやいや先生それバレたら減給どころじゃないでしょ」

 「ん?なんだ君は......アストロクスの佐々木礼愛か。大人にタメ口とは教育がなってないなぁ。あと、発言する時は手を上げたまえ。そしてアルコールは抜けてるから問題はない」


 小声で言ったつもりだったが、席が前から近い分聞こえてしまったようだ。話も軽く流されたので、少しは言い返してやろう。

 

 あの、


 「何だね、まだあるのか?あと手を上げたまえ」

 「あの、いや、えぇとですね、八重先生。くっきり残ってますよ、首元」


 先生は動じずに胸ポケットから小さな手鏡を取り出し、キスマークが一つ、首元に付いているのを確認した。


「あぁこれは昨日ガールズバーの帰り際のサチコちゃんから貰ったキスだな。可愛い女の子と飲むのは楽しくてたまらんよ。しかし寝不足は避けられんけどな」


 へぇ、昨日遅くまで飲んで朝も飲んだんだ......

 クラスの反応は様々であったが大半は苦笑いを浮かべていた。

 

 

 上手く言い返せなかったが、もうこれ以上この話に触れるのはやめておこう。

 きっと八重先生も昨日嫌なことでもあったのだ。


 「ところで、私の自己紹介をしていなかったな」


 いや自己紹介はもう十分しただろ、これ以上あなたの印象を悪くしたくないんだが!

 八重先生は咳払いをし、姿勢を正した。

 

 「まずはここ小春川高校に入学してくれたことに感謝する。おめでとう」


 お......

 斜め四五度の綺麗な最敬礼は、第一印象からかけ離れた神聖なオーラを感じた。

 八重先生は話を続ける。


 「私はこの学校に入って二年ほど経ったが、いまだ校舎の構造を半分も理解していない。クラスの他に特別教室やら大教室といったものがあったり、最近覚えた音楽室も本当に分かりづらいから一人でうろついて迷わないように」


 そこは真面目に話すんだなとツッコミたくなった。それにしても下駄箱から教室まで近くて分からなかったがこの校舎は複雑な造りになっているらしい。


 「あとはそうだな......私は数学を担当している。お前たちの担当クラスになるか分からないが、私の授業は厳しいから覚悟しておくように」


 クラス全員八重先生だけは担当されてくないと思ったに違いない。勿論俺もごめんだ。


 「まぁ、後は羽目を外さない程度に楽しめ。以上だ」


 簡潔な自己紹介を終えたと同時に授業のチャイムがなり、八重先生は直ぐに教室を出ていった。


 帰るのはっやぁ......


 「次は身体測定だってさ、礼愛君一緒に行こうよ!」

 「おう......」


 守と話す時間が一番幸せに感じる。やっぱり親友って良いよな。


 七瀬の先程の勇気ある行動に惚れてしまい、顔が熱くなってしまう。

 HRでの情報量の多さにより頭が回らなくなって色んな意味でパンクしそうだ。

 

 惚れさせるのは俺なのに......くそ......

七瀬になんて言おうか考えがまとまらなかったので一先ず次の授業の準備を進めた。


 次は移動で、武道館?に行くそうだ......

 

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