プロローグ
これは、中3の秋だった。半年前俺はずっと好きだった同級生に告白をした。
放課後。学校の屋上で原稿用紙五枚分に渡るラブレターと共に「話があるので放課後屋上で待ってます」と小さい別紙に書き、大きめの白い封筒に封入し彼女を待った。
肌寒い秋風が高鳴る鼓動を落ち着かせる。すると、夕日が落ちかかった頃......
ぎーー。
鉄の扉を重そうに開く音が聞こえた。
「七瀬、」
彼女、白月七瀬の容姿は黒く艶のある長いストレート
ヘア。健康的な体つきで背も少し高く、二重だが普通よ
り細い目をしている。何より陽気なオーラを纏った笑顔
は男子から聖女だの女神だのと噂されるほどだ。
良く手入れのされた髪の毛がサラサラと輝き、俺に笑
顔を向けた。少しの沈黙の後......
「風が気持ちいいね。礼愛君」
「ごめんなこんなとこに呼び出して」
「ううん。それで、話って何?」
彼女は全てを悟ったような、冷たく、顔に生気が宿っ
てないが笑顔は崩さない取り繕った顔だった。
俺は確信した。『振られる』しかしそこで引き下がる
訳には行かない。俺は勇気を絞り、この気持ちを七瀬に
打ち明けた。
「七瀬!好きだ!君のそばにいさせてくれ」
結果はNO。教室でもよく話していて仲はかなり良
かったと思う。なのに、なんで......
「なんでだああああ!」
はっ......守の家?また、この夢だ。最近多いな......
「どうしたの急に叫んで。夢でなんかあった?」
「あった」
「もしやまたあの夢?」
「ああ」
中学を卒業した俺は同級生の守の家に遊びに来ていた。
こいつは半崎守。中1からの親友の同級生で、弟持ち
の世話焼きクソカワ男子だ。赤色のショートヘアで目もくりくりで、初めて顔を合わせた時には女の子かと思った。
すると守は慰めようと、「よしよーし」と頭を撫でて来たので握り拳を作り、頭に鈍痛を味わわせてやった。
「痛ったあ、なにするんだよ〜、!」
「聖拳ファルコンパンチを食らわせただけだ」
「つまんないしあとそれストレートだし!あと今の反則技だから!」
守は頬をぷっくりと膨らませながら部屋の真ん中にあ
るちゃぶ台をパシパシ叩いていた。
可愛いかよおい。
「それにしてもまたあの夢を見るってことは相当好き
なんだね」
「まぁな」
この前教室で居眠りをしていた時にあの夢を見た俺は
同じように叫び、守を驚かせてしまった。
それ故、度々起こる夢の現象に俺を心配してくれていた。
「まぁ、あいつへの気持ちは原稿用紙五枚分でも足りないからな」
「あのラブレターを見せに来た時は少し引いたよ」
「口が笑ってるぞ」
「いや笑ってないよ。ただ、量が多すぎて。ははっ」
完全に笑ってるじゃねぇか......
すると守は口元をニヤニヤさせながらスマホを取出し、何か探しているようだ。
「あ、実は礼愛君が書いたラブレター写真にして残ってるんだよね」
突然放たれた爆弾発言に度肝を抜かれた。いつ撮らた......
こ、これはまずい、痛痛しい文章が今この場からネットを通じて拡散されようとしている。入学と同時に付いたあだ名は原稿用紙で告白した痛い男として、
『原稿痛男』
みたいな四文字熟語として誕生しちゃうかもだからやめてくれ!
「お願い早く消して。消してください、おねがいします拡散だけはご勘弁ください!!!」
しかし守は俺の誠心誠意込めた懇願を無視し、「あ、これこれ」と俺に見せつけてきた。
「あ、別に拡散しないから安心して。ただ、ここで音読させてね?」
「あ、想像してたことより意外と軽いな、っで、でもでもたとえ親友が読むのだとしてもこれは俺が恥ずか死ぬって!!この事にどんな意味があるんだよ!!」
「僕が喜ぶっ!」
元気満々な笑顔をこちらに見せながら、なかなかサイコパスなことを言われてるような気がして鳥肌が立った。
守は「じゃあ行くよ」と言って、この痛い告白文を読み始めた。
とある一節
”......七瀬が見せてくれたたんぽぽみたいな温かい笑顔に何回俺は救われたのだろうか。いつか歌ってくれた歌は心踊らされて、いつの間にか好きになっていた。友達じゃなく、一人の女性として!君が好きだ!屋上で返事を待ってる。”
俺は恥ずかしさのあまりちゃぶ台の下に頭を潜らせ、必死に耳を抑えた。結果効果はなく、身に余る羞恥に晒され熱くなった顔は、畳の冷涼感を感じざるを得なかった。
ま、悲しいことに読まれずキレイに折りたたまれた状態で自分の下駄箱の中に入っていたのだから。
俺は振られたのだ。その放課後以来七瀬と話したのは同じだった委員会活動の時だけだ。
七瀬から話しかけてきたと思えば連絡事項等の定型文で日
常的会話を一切してこないという男子にとって一番きつい制裁を目の当たりにし、この制裁に至るまでどんな経験があったら告白した次の日からほぼ他人扱いされるんだよ!
そんな彼女の残した言葉はこうだった。
「礼愛君の事は嫌いじゃないけど好きじゃないです。ごめんなさい」
嫌いじゃないか。うん良かった。
好きじゃない。うん?
「こんな意味深な台詞を捨て去られても恋愛経験不足の俺に分かるわけ無いだろ......」
と、ぶつぶつ呟いてると、
「まあまあ礼愛君。僕と礼愛君、それに七瀬さんも同じ高校に通うんだからまだチャンスあるって!元気出しなよ」
「おう......」
暫くして時間も遅くなり、今日はお開きとなった。
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「リアルな恋を教えてください」読んで頂きありがとうございます!
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