網走の漁師、尻のイボ痔の荒治療知り気が狂い暴れたあげく「量子力学」に現実逃避
俺は網走の漁師だ。
別に国後でも利尻でも良かったが、俺は網走の漁師だ。
名前はまだ伏せておく。
名前を明かす場面がこの先あるかどうかは不明だ。
吾輩はなんとやらの冒頭部分に似ている?
心配は無用だ。
何故なら未読だから、この先を知らない。
ここから先は未知の領域。
俺は俺の力で自分の未来を切り拓く。
流氷が押し寄せるオホーツク海をも突き進む。
だがしかし、冬はやっぱりこたつに限る。
寒波が来て海は大荒れ、肌も乾燥で大荒れ、足はしもやけ。
外は寒いし足も痛いしでずっとこたつに座っていた。
するとだんだん、尻が痛みだした。
尻が痛い、尻が痛い。
辛い痛みに耐えかねた俺は、病院受診を決意した。
「イボ痔ですね」
ジージージージージー。
昔の流行歌を思い出した。
「割と大きくて場所も悪いから、手術で切りましょう」
俺は気が狂って暴れなければならない。
作品タイトルを実行するために必要な行動だ。
だが、冷静な頭なのに気が狂い暴れろとは無理がある。
が、しかし、俺は無理を無理とはしない。
不可能を可能にする漢だ。
「うぎゃほりゃー」
奇声をあげロン毛をワシャワシャと掻き乱し、座っていた椅子を円座クッションごと蹴り飛ばす。
「うううっ……」
しもやけが痛い。
足の爪先に激痛が走る。
あまりの痛さにその場にしゃがみ込んだ。
「うううっ……」
激痛のあまり天を向く俺。
尻が痛い。
この体勢は駄目だ。
ジージージージージー。
頭の中でアブラゼミが爆音で鳴き出した。
俺はその場で転がった。
仰向けではない。
尻を床に接触させないよう、横向きだ。
尻の痛みが緩和される角度を探し、腰と膝を緩やかに曲げる。
さて、ここで困ったことになった。
まぁ始めから分かってはいた。
量子力学、未知の領域だ。
網走も流氷もイボ痔も漢もアブラゼミも、全てウィキペディアで知識を補った。
もちろん量子力学も。
説明文の中に一般相対性理論の文字。
分子だの原子だの電子だの物理現象だの。
ムリムリムリムリムリ。
昔の美脚韓流アイドルが脳内で踊る。
つーか皆すげぇーな。
量子力学で小説を書いた作者様方マジ凄い。
ムリムリムリムリムリ。
ジージージージージー。
今年はゴキさんがよく家に侵入した。
蝿叩きに何度お世話になったことか。
ザ・単発モグラ叩き。
で、量子力学量子力学。
はぁ、しもやけよりもイボ痔よりも辛い。
いや、しもやけもイボ痔も想像だけだから、現実だったら量子力学の方が断然マシかもしれないけれど、でも量子力学、マジしんどい。