私、橘楓。 vol.002. 「楓、来たよ来たよ。」
そんな玄関に走る楓を見て…、
「…大丈夫か…あいつ…???」
と…佳之。
「さ~ね。…まぁ…何とかなるでしょ。」
と、弓枝。
「まっ…、いつもの事だし…。」
「姉ちゃんの事だから、大丈夫じゃねぇ。」
「…って、ノリ、あんたも、そろそろじゃない、早く行った、行った。」
「ハ~イ。」
「やっば~!まじいよ、これ…。…んもう…何でいっつも…こうなるかな~!」
そう言いながらも、家からの道のり、
普通の高校生ならまずこのタイムでは叶う事ない距離を、
駆け足で学校の手前数メートルの位置まで歩いてきている同級生まで、
ランニングで追い付く楓だった。
「あは…、楓、来たよ来たよ。」
と、同級生の叶野朱実。
「はぁ~追い付いた~おはよ~!」
「さすがは学校一のトップランナー。正にカモシカだね~!」
と、朱実と一緒の山下陽子。
「さっすが~早ぇ~や、楓~!」
と、楓のお尻をペンと叩いて小走りに走り去る梶原慎二。
「痛っ…、あ~~んもう…このどスケベ慎二――――ッ!」
「はは…。」
「…ったくもう…あんにゃろ。」
「まったく…相変わらずね~慎二の奴。…まっ…、でも、あれがないと、慎二じゃ…ないか…。」
と、朱実。
「あ~あ、また…この季節…か…。」
と、落ち込む楓。
「な~に言ってんの~学年3位の優等生が…。」
そう言う朱実に、便乗して、
「私もあんたみたいになりたいよ…。」
と、陽子。
そう、季節は夏、2008年7月2日。
東京は武蔵野市吉祥寺の桃李中学高等学校の期末試験である。