09 俺の家とじいちゃんばあちゃん
―――ガララ
少し古風な引き戸をあけるくろ兄ちゃん。
じいちゃん家の扉は親族だったら自動で開けれるようになっている。
今回はそれも仇となってしまったようだ。
「ちょ、何してるの!
家族だからといって、ノックもせずに入っていいわけないでしょ!」
しろ兄ちゃんがそうくろ兄ちゃんを叱るが、時すでに遅し。
ゴゴゴゴゴゴ……
怒っていると勘違いしそうなほどの威圧をしながら出てくるのは、俺達の祖父、櫻木 守。
この威圧のせいで近所の子供には「鬼」と呼ばれていた。
……まぁ、そう言っていた筆頭のやんちゃな男の子はいなくなってしまったが。
「よく来たな、黒葉、白夜、留依。」
傍から見れば怒っているように見えるが、おじいちゃん的にはちゃんと喜んでいるのだ。
「久しぶり、じいちゃん、ばあちゃん。」
「久しぶりだね。」
兄ちゃんたちもそれぞれ挨拶する。
流石は家族、じいちゃんの威圧にも動じていない。
「……久しぶり、おじいちゃん。
前にも言ったけど、威圧し過ぎだよ。」
俺はそう注意する。
今の状態のじいちゃんは3〜10歳くらいの子が見たら失神するであろう。
家で良かった。
「む、むぅ……。すまない。
久しぶりに孫の顔が見れて興奮してしまったようじゃ。」
じいちゃんが威圧感を霧散させながら申し訳無さそうにそう言う。
「もう、守さんったら……。
黒葉も白夜も留依も、よく来たねぇ。ゆっくりしていきなさい。」
そんなじいちゃんの横で笑いながらそういうのは、祖母・梅。
こちらはじいちゃんとは対象的に温和な笑みを浮かべている。
そして、ふたりとも美老人、というのか、結構顔立ちが整っている。
良い老い方をしたんだろう。
「…思ったより遅かったな、黒葉。」
そんな二人の横から顔をのぞかせるのは兄・黒葉の友人の南晶。
道中で話題に上がった人物でもある。
「おー、アキラ! それにしても久しぶりだなー。
お前外に出てるか? 肌が白いぞ?」
「…俺は相変わらずのお前のコミュ力に引いてるよ。」
晶さんはくろ兄ちゃんに顔をじぃっとみられて軽く身を引いている。
「はい、くろストップ。ごめんね、晶。」
と、そこで晶さんからしろ兄ちゃんがくろ兄ちゃんをを引っ剥がす。
「あ、ああ、ありがとう白夜。」
「晶さんもお久しぶりです。」
俺は、晶さんに挨拶をしていないことに気がついてそう言う。
「ああ、留依くんも久しぶり。
VTuber、大丈夫そうかい?」
「はい、晶さんが描いたイラストも好評です!」
晶さんの職業はイラストレーター。
俺は晶さんにアバターを描いてもらっていたのだった。
実際、晶さんのイラスト―――晶さんのイラストレーターのときの名前、【千羽瀬 千鶴】の名があって俺の配信を見に来てくれた人達も多い。
晶さん、人気イラストレーターだしね。
兄ちゃんのアバターを手掛けたのも、この晶さん――【千羽瀬 千鶴】なのだ。
「ああ、晶ー。」
「なんだよ、黒葉。」
くろ兄ちゃんが晶さんに声をかける。
そして、兄ちゃんは、
「晶も配信に来ないか?」
と言ったのだった。