06 妹とデート
「はぁ……。」
配信後、部屋でゆっくりとしている時。
――ガチャッ
「お疲れだねぇ、お兄ちゃん。」
いきなり背後から声がする。
「ふぁ!? ……って、雨か。」
勝手に部屋に入ってきたから誰かと思ったら、妹の雨だった。
「勝手に入ってくるなって言ってるだろうが…。」
「あははー、ごめんなさ~い。」
にこにこと笑って言う雨。
これ絶対に反省してないやつだな………。
我が妹の雨は美少女……というか、よく美少年に間違われるが、ちゃんと女である。
肩につかないくらいのつややかな黒髪に、漆黒の瞳。
というか、普通に男物の服を着たらまんま男である。
中学の頃に、「男じゃなくてもいいから彼氏になってほしい」だとか言うことを言っていた人がいて、これには雨も少し引いてたな……。
「ねぇ、お兄ちゃん! お願いがあるんだけど〜!!」
「……お願いの内容による。
それで、なに?」
なにか変なことじゃないといいけど。
「次の休み、デートして!」
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「……どうしてこうなった…。」
「おに……お姉ちゃん、どうしたの?」
俺は今、妹の雨とショッピングモールに来ている。
―――女装して。
……というか、男だとバレたら人に群がられるし、ストーカーされるので外に行くとき女装をするのは当たり前みたいにはなっているのだが。
まさか雨と一緒に出かけることになるとは……。
雨も前の世界の記憶を持っているわけで。
要は、恥ずかしいのだ。
お遊戯会のときとかに家族に見られたくないのと同じ心境だな。
あー、男だからプラスでちょっと離れて護衛さんもついてきている。
「あ、お姉ちゃん。ここだよ、ここ。
私、ここに来たかったんだぁ!」
嬉しそうにニコニコと笑いながらお店を指差す雨。
うん、どっからどうみてもロリータ服のお店なんですけど?
「わーい!」
まるで小さい子供のように服を見て回る雨。
そんな雨を見ていたら、まぁ、いっかという心境になった。
「お姉ちゃん、これ着てみてよ!」
「え!?」
それを、着る?
雨が手にしていたのは、全身真っ黒のいわゆるゴシック&ロリータ、ゴスロリというものだった。
所々に十字架やバラの装飾がついている。
う……。
俺も流石に男だ。
こういうのを着るのには抵抗がある。
「お姉ちゃん、だめ…?」
雨…おま、それは反則だろう。
「…わかったよ。」
雨の上目遣い+涙目にやられ、渋々了承する。
というかあいつ、なんで自分で着ないんだ?
そうだ、これ着終わったらあいつにもロリータきせてやろっと。
そんなことを思いながら試着室に入り、服を着る。
……最近のゴスロリって結構着やすいのか?
チャックとかあるし…。紐ばっかりできにくいのを想像してたわ……。
昔、お遊びで兄ちゃんたちにドレス着させられたことあるからなぁ。なれていると言うか。
「着れたぞ……よー。」
そう言いながらカーテンを開ける。
「…。」
ん? 雨? 反応がないということは似合っていないということかな?
キモいとか思われてたりして……。
そんな事を考えていると、雨は手を組み、俺を拝む。
「お姉ちゃん、神。」
「は?」
雨は俺を拝みながらそういう。
「かわいい。神。ここまで似合うとは思わんかった。
あのー、店員さーん。これ、買ってもいいですかー?」
「え?」
なに? そこまで言われると流石に恥ずかしいんだけど。
雨はほんきでこれをお買い上げしてしまった。
俺は恥ずかしすぎて動けんかった。
「……とっ、とりあえず、雨も着てみたら?」
「え、あ、いや、私は似合わないから。」
そう言って苦笑する雨。
「んー。」
俺は店内を見渡し、雨に似合いそうなのを見つける。
あ、これ良さそう。
そう思って手に取ったのはいわゆる白ロリ。それに、このヘッドセットも良さそうだ。
よし。
「雨ー。」
「ん? なに?」
ちょいちょいと雨を試着室の方へと呼び、雨に白ロリセット一式を渡し、「go!」という。
「え? え?」
少し混乱している雨を強制的に試着室に叩き込み、着替えさせる。
「着れたかー?」
「え、あ、うん。」
カーテンがあき、そこにいた雨を見る。
かわいい。
「天使かな?」
「え?」
「店員さーん!」
お買い上げしました。
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[つぶいたー]
咲久和 華❀
@sakuhana
妹と初・ロリータ服!!
作者はゴスロリ等をみたことがないので想像で書いております。
ご了承ください。
なにか感想などありましたらお願いいたしますm(_ _)m