魔術師アルト
見張り台に向かうラーノット達。
ラーノットの後に続く魔術師達。
夜が来た。
見張り台の道のりは遠いので、野宿する事にした。
夕食は、シチュー。灯りをともし、四人でバディを組んで夕飯を作る。皆慣れた手つきで夕食を作る。出来上がると、パンと一緒にかきこむように食べた。
「さあ、皆ここで眠るよ」
寝袋を持って来たので、おもいおもい平な場所に準備する。寝袋に横になると、ラーノット騎士団は眠りに入った。
次の日は早い。六時に起きて、マフィンを昨日の残りとともに食べる。
朝食後、ラーノット一行は、再び見張り台に向かった。
見張り台に着いたのは、お昼過ぎた頃だった。
「こんにちは」
ラーノットは、扉を叩いて挨拶する。
「はあい」
と言って出て来たのは、赤髪で、淡褐色の目のローズだった。
「お久しぶり」とラーノット。「アルトに会いたいんだけど」
「アルトね。ちょっと待って」とローズは、中に戻る。
しばらくして、ローズが顔を覗かせた。
「起こしてきたわ。魔術構築で、昨日遅かったみたいなの。皆全部は、入れないから、ラーノットだけ入って」とローズが言った。確かに騎士団は、八十人いる。
「ルミナリー、後はよろしく」
「分かった」
ラーノットは、騎士団をルミナリーに託した。
階段を上り、二階に行くと、アルトはそこにいた。
アルトは、小柄でかわいい顔をしていた。年齢は、十五才くらい。金髪で青い目の美少年だった。
「ラーノットさんですね」
ローズが、紹介してくれていたらしい。
ラーノットとアルトが握手をする。
部屋は、本がいっぱいあるが、整頓されていた。
「あなたの力が必要なんです」とラーノットが頼んだ。「悪魔討伐のため、一緒についてきてくれませんか」
アルトが、渋い顔をした。
「僕は、魔術に関しては、誰にも負けないという自負がありますが、外に出たことはほとんどありません。それに、ローズさん1人じゃ心配ですし」
「あなたは、魔法の構築の法則性について調べていると聞きました。新たな魔術定理と魔術理学を生み出すことも。代わりに、新しい魔術を教えてくださいませんか?」
とラーノットが、頼んだ。
「いいですよ」
そう言うと、アルトは、呪文を唱えた。
ラーノットには、何を言っているのか分からない。
しばらく呪文を唱えていたアルトが、
「終わりました」と言ったと同時に、アルトは顔をしかめ、
「悪魔の王だ。千の魔術で、護らなければ」
そう言ってまた新たな魔術を構築した。スペクタクルが現れる。今度の魔術は、短かった。
「魔術よ、護れ」
そう言うと、アルトが、ラーノットに向き直った。
「これで、こことラーノットさんに護りの魔法がかかりました。悪魔の王と直接対談しても大丈夫でしょう」
「ありがとう」
ラーノットは、お礼を言った。
「はい」
アルトは、はにかんだ。
階段を降りると、一階には、ローズがいて、
「もう終わった?アルトが護りの魔法をかけてくれて、助かったわ。悪魔の王が、来てるわ。がんばって」と言った。
「うん。行ってきます」
ラーノットは、見張り台を出た。
騎士団の前にいたのは、羽がある魔獣の王だった。
「これは、これは、王女自らやってくるとは」
と魔獣の王が言った。
「私は騎士団長です」とラーノットが訂正した。「討論したいことがあるのですが」
「いいですよ、喜んで」
悪魔の王は、にやりと笑った。