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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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Wi-Fi壊れる

「ぐぬぬ……」


 唸っているのは睡ではなく俺、珍しく悩んでいた。睡のことではない、自宅のネットワークのことだ。


 今手に持っているスマホにはWi-Fiの電波状態が良好であることを示している。ならばネットにもサクサク繋がるはずだが、現在スマホの画面にはタイムアウトの表示が出ていた。


 俺は気分を変えるためにAPに接続したラップトップをリビングに持って行ってどうしたものか途方に暮れていた。


「お兄ちゃん? どうかしたんですか?」


 睡が心配そうに声をかけてくる。


「ああ、ちょっとWi-Fiが死んでてな……」


 そう言うと睡は顔を青くして慌てだした。


「Wi-Fiが使えないんですか? それマジでやばいんですけど!? ルータが壊れたんですか?」


 そこが頭痛の種だった。


「アクセスポイントは生きてるし接続できる。ルータ側が死んでるっぽいな」


「ルータとアクセスポイントが別なんですか……」


「ああ、家のルータはエンプラ向けだからな」


 これが家庭用ブロードバンドルーターだったらサクッと初期化して設定のし直しをすればいいのだが、Cisco製品の場合、コンソールケーブルでシリアル接続をしなければならない。なお悪いことにtelnetで接続しようとした時もタイムアウトで、コンソールポートにつなげてシリアルケーブルでteratermを起動したのだがさっぱり反応が返ってこなかった。


 そこで俺はさっきからルータのIPアドレスにtelnetで繋げられないかと試行錯誤しているのだった。


「お兄ちゃん、私のスマホでもWi-Fiが繋がらないんですが!?」


「そりゃそうだろ、俺の方も繋がらないんだから」


 そこで睡は断言した。


「これは緊急事態です! 4Gで通信しまくったら即上限まで行きますよ!? 至急Wi-Fiの復旧を所望します!」


「うーん……そうは言われてもtelnetがタイムアウトするんだよ……」


 睡は少し考えてから結論を出した。


「だったらブラウザでアドレス叩いてGUIを呼び出せばいいんじゃないですか?」


 そういやそんな方法もあったな。俺はChromeを起動して「10.10.10.1」とアドレスバーに打ち込む。


 ……読み込みが遅い、というかローディングの画面すら出ない。これは……


 案の定タイムアウトしてアクセス不可と無慈悲な表示が現れた。


「お兄ちゃん。ルータの初期化は出来ないんですか?」


「専用のIOSを使ってる機種なんだがIOSの入手性が個人だと絶望的に悪い、そもそもアクセスすら出来ないとまともにアップデートが出来そうにない」


 どうにも八方ふさがりだった。


「睡、スマホの契約は?」


「5G使い放題プランですね」


「しばらくそっちで我慢してもらうというわけには……」


「ゲームが容量爆食いでして……その辺ダウンロードすると制限かかるんですよね、無制限謳ってるクセに」


 不満そうにそういった。そりゃあそうだろう。無制限(無制限とは言ってない)こんなクソみたいな契約が許されていいのだろうか?


 連中は他の利用者のためなどと言っているが、追加料金を払えばちゃんと高速通信が出来るんだから説得力の欠片もない。


 俺の方の目下の問題はPCがネットに繋がらないと言うことだ。4G回線のあるスマホではそれほど困らないのだがPCは基本的に固定回線に繋ぐ。テザリングなんてやったら即上限突破して低速モードに入ってしまう。



「どうしたものかなあ……」


「ルータを買えちゃダメなんですか?」


「今のルータと同程度のルータだとRTX1220クラスが必要だが、そっちは大人気で生産が間に合ってない。さすがに年末以降までこの状態は耐えられない」


「あの~……お兄ちゃんはどんな対処を試したんですか?」


「インターフェース全部でログインが出来ないか試してtelnetがアウトみたいなので、次はVTYにコンソールケーブルで繋いでやっぱりログイン不可。しょうがないのでWEBインターフェースも試してみたがアウトだったな」


「あの……お兄ちゃん……その……大変素人考えなのですが……」


「何かまだ方法があるのか?」


「その……再起動を試してないですよね?」


「再起動? ルータのか?」


「はい、困ったら再起動は基本だと思うのですが……?」


 なるほど灯台もと暗しとはこのことだ。いろいろな方法に目を奪われて最もシンプルな方法を試すのを忘れていた。


「ちょっと部屋のルータ再起動してくる」


「はい、行ってらっしゃい」


 部屋に戻ると緑のランプを全てペカペか光らせているルータを眺めてから、そっとACアダプタを抜いた。


 RAMの内容がちゃんと全部飛ぶように電源を断って少し待ってから再び差し込んで起動した。


 エンプラ向けルータ特有のクソ長い起動時間がどうにももどかしかった。


 …………しばらく待った後全ランプが緑色に点滅をしてリンクを張れたようなのでスマホを取り出してWi-Fi接続にして適当なニュースサイトでも開いてみる。


 …………開けた!


 なんとも情けないことに睡が完璧な答えを持ってきてくれたようだ。こんなシンプルな解決法に気がつかなかったとは、不覚と言うほかない。


 俺はリビングに戻って睡に話しかける。


「睡! ちゃんと繋がったよ! これでスマホでもちゃんとWi-Fiが使える!」


「ありがとうございますお兄ちゃん! これで私のレスバも捗るってものです!」


 あれ? そこまでしてやることがレスバ? 睡については復旧しない方がよかったのかもしれない……


 そして睡が嗜虐的な笑みを浮かべる。


「お兄ちゃん、つまり今日は私のアドバイスで助かったというわけですね!」


「お、おう。一応そうなるかな」


「でしたら! お兄ちゃんは私にお礼をするべきだと思うんですよ!」


 ここは気をつけないとならない、下手なことを言えば何をさせられるか分かったものではない。


「まーまー、お兄ちゃんもそう身構えないでくださいよ! 大したことじゃないですから!」


「一体何をすればいいんだ?」


「はい、お兄ちゃんには私が率いているソシャゲのギルドに参加してもらおうと思いまして」


「え!?」


 たったそれだけ? あまりにも睡の要求にしては簡単すぎるのではないだろう?


「ちなみにギルド脱退は不可です」


「それくらいなら一向に構わんが……」


 そう聞くと睡はスマホを素早く取り出し操作を少しして、俺のスマホに通知が届いた。


 それはギルドの招待だった。


 俺はよく考えずにそのギルドに入ると、ギルドボードにローカルルールが書いてあった。


『問うギルドは本気で上を目指すためのギルドです! ログインが四十二時間以上ない場合キック対象となります。』


 思いっきり廃人向けのギルドだった。二日ログインしなければ即アウトは厳しい。


 しかし睡は笑いながら『お兄ちゃんは約束を破りませんよね?』


 そして当面朝のログボをもらうゲームが一つ増えたのだった。


 ――妹の部屋


「お兄ちゃんに貸しができました! これは大きな一歩です!」


 私の的確なアドバイスのおかげで自宅のネットが救われました、コレはあれですね、お兄ちゃんにでかい貸しになりますね!


 私はその夜、でかいダウンロードをまとめて行っておくのでした。出来る時にやっておくのが大事というのが今日の件から得た教訓なのでした。

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