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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹に翼を授ける

「ヴォエ……」


「睡、今日は随分と調子が悪そうだな」


 コイツが体調が悪いとはまた珍しい、なんだかんだで風邪もろくに引かないやつだと思っていたのだが……


「ええ、昨日ついつい勝負に向きになりまして、ちょっとエナドリマシマシで連戦してたら寝不足でして」


「スマホか……」


「ええ……ちょっと一位取ったんでつい調子に乗ってしまいました」


「ほどほどにしとけよ? いくら次の日が休みだからって無理したら休みが潰れるぞ?」


「そのようですね……」


 睡はいつものFPSをプレイしていたのだろう。こちらが寝ている時に隣の部屋から奇声が聞こえたぞこのゲーム廃人め……


「睡、ゲームやりすぎじゃないか?」


「失敬な! お兄ちゃんに構ってもらうことの方が優先ですよ?」


 そっちが優先なのか……良いのか悪いのか分からんが悪い気はしない……? しないよな?


「FPSってそんなにハマるもんかねえ……」


 その言葉を聞くなり睡の目が胡乱に光った。


「お兄ちゃんはキルデスがあがった時の快感をご存じないようですね? とっても楽しいですよ?」


 そんな数字があがってもあまり気分のいいものではないと思うのだが、睡にとっては重要なことであるらしい。しかしそれなら下がることもあるんじゃないか?


「ちなみに負けた時は? 一回もキルできずに死ぬことだってあるだろ?」


「クッソムカつきますね!」


「口が悪いぞ」


 妹の素行が悪くて困っています……


「というかそもそもバトロワ系のゲームならどうやっても一回は死ぬだろ? 最後まで生き残るのは一人なんだからさ」


 古のFPSプレイヤーからはあまり思いつかない話だが、バトロワシステムなら最終盤まで逃げていた方がいいまである。そういうゲームは楽しめるのかとは思わないでもないが、売れているんだからそれなりに楽しいのだろう。


 猫も杓子も課金煽りをする中アバターくらいで課金が勝利に直結しないだけ良心的とも言えるかもしれないが、やはりスマホでプレイするのは慣れないな。


「お兄ちゃんはPCゲーマーだから分かんないんですよ! 一緒にスマホゲームに目覚めましょう!」


「タッチパネルでエイムは慣れないんだよなあ……」


「それはお兄ちゃんの甘えです!」


 胸をはって断言する睡、甘えとは一体なんだろう?


「お兄ちゃんが時代について来れないのはゆゆしき問題です! と言うことで私とスマホゲームをプレイしましょう!」


「何が『と言うことで』なんだよ!? 自分の沼に引きずり込もうとするんじゃない!」


 すぐ沼に引き込もうとするのはオタクの悪いクセだぞ。まったく……とはいえ、ロクにプレイもせずに決めつけるのはよくないか。


「分かった分かった、一戦だけだからな?」


「お兄ちゃんはなんだかんだで話が分かりますね!」


 俺はiPhoneをとりだして、この前に睡とプレイしたゲームを起動する。やっぱり3Dを使用したゲームだけあって起動が重いしアップデートもしばらく起動していなかっただけなのにとんでもない量が入ってくる。


 念のためダウンロード前にWi-Fiに繋がっていることを確認してからダウンロードを始めた。


 ジリジリとダウンロードはのんびりと進んでいき、無事終わった。容量が十分にあったことは幸いだったと言える。やはり音楽を全てクラウドに預けたのは正解だったな。


 そういえば新しいOSではPCでもAndroidのアプリが動くんだっけ? マウサーが公式でプレイできるのだろうか?


 そんなことを考えているとダウンロードしたファイルの展開が終わって起動画面が出た。


「よーしよし、ではお兄ちゃん、チーム戦でチームIDはこちらを入力してくださいね」


 そう言って自分のスマホの画面を差し出す。チーム戦と言ってもコンビ戦で多数体多数ではないのでボイチャも問題無さそうだ。


 IDを入力してマッチングを始めるとあっという間にメンバーが揃った。PCと違って段違いに敷居が低い。マイナーなゲームだと平気でマッチングに分単位でかかるからな……


 そうして戦闘が始まった。


「お兄ちゃん! 落ちる場所には気をつけてくださいよ? チーム戦なんですからね! お兄ちゃんの成績が私の成績にもなるんですよ?」


「責任が重いなあ……」


「お兄ちゃん! このタイミングで降下します!」


「おう!」


 パラシュートを持って自キャラが降下を始める。百人でのマッチだがそれほど降下地点は偏らないようだ。


「じゃああの赤い建物に入りますよ! 私の勘ではあそこにスナイパーライフルがある気がします!」


「まーたスナイパーか……お前好きだなあ」


「当たり前でしょう! 相手の届かないアウトレンジから脳天にぶち込むのが楽しいんじゃないですか!」


 歪んだ楽しみ方だなあ……それに一々突っ込まないけどさ。


 全速力で降下すると建物に駆け込む、俺のキャラがライフルを拾った。


「おっと、スナイパー専用装備があったぞ?」


「お兄ちゃん、それを私に!」


「はいよ」


 ポイとライフルをドロップする。睡はそれを拾って建物の屋上に走った。


「お兄ちゃんは私が撃ち漏らした連中を下で待ち受けておいて下さい! 倒す必要はないので私の攻撃範囲で足止めをお願いします!」


「了解」


 倒さなくていいなら随分と難易度が下がる。芋砂というか妹砂というか……そんなプレイングスタイルをする睡だが実力は確かなのだろう。現に俺たちのところに向かってきた連中が二三人ヘッドショットを決められて沈んでいった。


 どうやら俺は本当に威嚇用らしく、建物の前でマシンガンを持って突っ立っていると相手が僅かな時間立ち止まって様子をうかがう、その瞬間を睡は逃さずスナイプしていく。前世はスナイパーなんじゃないかと思うくらい適切にショットを当てていった。


「お兄ちゃん、弾が切れましたし行動範囲も狭まる頃なので中央に向けて侵攻しますよ! 弾薬はその辺に転がってるさっき倒した連中から補給します!」


 そう言ってダッシュをしながら先ほど哀れにもスナイプされていった連中がドロップしていったものを拾っていった。


「よし、ライフル弾はありました。次は丘に向かいますよ! 高地を取った方が有利ですからね!」


「それは知ってる」


 FPSでは自分の立ち位置がとても重要だ。敵が狙いにくくこちらから攻撃しやすい場所、そこを探していくのが基本戦術だ。


「よし、じゃあマップ中央右の丘に向かいます!」


 そうしてスタスタと敵の居なくなったフィールドを走りながら時折見える他プレイヤー相手に威嚇をしながら俺たちは丘を目指した。睡曰く『この辺のフィールドは範囲が狭まった時に切り捨てられるのでここは逃げるが勝ちです!』だそうだ。


 丘にたどり着いたら俺達は二手に分かれて俺が丘の下から数発発砲して逃げる。敵を倒すための射撃ではなく、丘の上にプレイヤーがいた場合そちらに気を取られるからそこを睡がスナイプするという作戦だった。


 ところが今日はさすがに相手が悪かったらしい、俺は一発目を打った時点で超速でヘッドショットを受けた。


「ちょ!?!? お兄ちゃん!? 何死んでるんですか!? 戦力半分なんですけど!?」


「しょうがないだろ! 相手にスナイパーいるから気をつけろ!」


 気をつけろと言ってもどうにかなるものではなく、俺が発砲した時点で誰かが接近していることを認識した敵スナイパーに睡もヘッドショットを受けてあえなく沈んでしまった。


「うぅ……まだ五人くらいしか倒してないのに……」


 キルデスとしては悪くない比率だと思う、俺が一人も倒してないのだから百人中五人を倒したなら大活躍だろう。


「お兄ちゃん! ちょっと待っててください!」


 そうして睡は冷蔵庫の方へと走っていき原色の色とりどりの缶、アレはエナドリだな……を持ってきた。


「さあ気合い入れて二試合目行きますよ!」


 そう言って一本の緑色の缶を開けてグビグビと飲み干していた、ストゼロでも飲んでいるかのような豪快な飲みっぷりだった。


 そんなことをしているから体調を崩すんだぞと言うド正論は全く通じずそのまま試合に付き合わされるのだった。


 幸い、数試合目で一位を取ったので睡が満足してソファに寝転んで「寝ます」と言って数秒後には眠ってしまったことだった。


 俺はやっぱりFPSをやるならPCの方が楽じゃないかな、などと考えるのだった。


 ――妹の部屋


「眠れません……」


 私としたことが、お兄ちゃんと本気で勝負に出たので疲れ切ってお昼寝をしてしまいました。お兄ちゃんとの一日を浪費したことを心底悔やみながらも結局私が寝たのは日付をまたぐ頃でした。

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