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ショッピングに出かけよう!

 ふぁあ……休みの日はどうにも眠くてかなわないな……


「お兄ちゃん! 約束通り今日はお買い物ですよ!」


 我が妹が寝起きの俺に飛び込んでくる、買い物に行くとは言ったが朝一番から準備をさせられるとは思わなかった、てっきり昼過ぎに少し本屋に寄るくらいの買い物だと思ったのだが。


「お兄ちゃん! 寝ぼけている暇は無いですよ! 私とお兄ちゃんとついでに重さんとのショッピングなんですから!」


 意気揚々と言う睡に対して俺はやや小声で言った。


「もう少しのんびりしようか? 急いては事をし損じるって言うだろ?」


「ダメです! お兄ちゃんと私だけのボーナスタイムが減るじゃないですか! そんなことしていると重さんが来ちゃうじゃないですか!」


「分かった分かった、じゃあ着替えるから部屋から出てくれ!」


「私は構いませんよ? お兄ちゃんは恥ずかしがりですねえ……」


 恥じらいがない妹を部屋の外に送り出し、着替えをする。我ながら特徴のない顔だと思うのでなぜ睡が俺にこだわるのかよく分からない。外見より中身だという人も多いが中身もいいと言えるほど自信家ではない。理由も無く好意を向けられるというのは不気味なものだ。


 そんな感情とは関係なく睡が部屋の前でじっと待っているであろう事から俺もさっさと着替えを終わらせて部屋を出る、太陽のような笑顔の睡がそこにいた。よく見ると露出のやや高いワンピースを着ている。兄妹と幼馴染みで出かけるには少し飾りすぎな気もするが女子のセンスとやらは俺には分からん、多分そういうのが流行っているのだろう。


「じゃあお兄ちゃん! 朝ご飯を食べましょうか!」


「ああ、そうだな」


 キッチンに行くと朝食はしっかりと準備してあった。ご飯に焼き魚、煮物の三点セットがテーブルに置いてあった。


「随分と気合いの入ったご飯だな?」


「そりゃあもう! お兄ちゃんとの記念日に気合いを入れない理由が無いでしょう?」


 笑いながらそう言う睡に俺はどう返していいのか分からず、「いただきます」と言って食事を始めた。


 その時にやっと時計が目に入ったのだが……


「まだ六時じゃないか……」


 そう、現在午前六時、まだまだ眠りについている誤家庭も多い時間帯だった。


「お兄ちゃんとのお休みを一秒たりとも無駄には出来ませんから! 本当は四時に起こそうとしたんですけど……」


「待っててくれて正解だよ、四時はキツい……」


「へへへ……」


 デレデレの睡だがコイツ四時から起きていたのかよ……今日は長い一日になりそうだな。


 そんな覚悟を決めて朝食を食べているとピンポーンと玄関から音がした。


「誰だろ? こんな朝っぱらから……」


「チッ」


 何故か睡は苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。


「どうかしたか?」


 睡はぶっきらぼうに返答する。


「多分重さんでしょうね……思ったより早かったですね」


「おいおい、アイツだって常識人なんだからいくら休日でもこんな早朝に来ないだろ?」


 俺のその言葉に睡は食いついてきた。


「そうですね! きっと悪質な勧誘か何かでしょう! そういうのは無視するに限りますね! ということで朝ご飯を食べましょう!」


 ぱくぱく

 ピンポーン

 もぐもぐ

 ピンポーン

 ズズッ

 ピンポーン


「なあ……さすがに勧誘にしてはしつこすぎないか?」


 ピンポーン


「しつこい勧誘なんじゃないですか?」


 ピンポーン


「はあ……俺がちょっと出てくるよ」


「ちょ……お兄ちゃん!」


 俺は渋々朝から訪れた闖入者に文句の一つも言おうと思い玄関を開けた。


「あ、おはよ。早いかなとは思ったんだけどね……睡ちゃんは多分早くから起きてるだろうから……」


 はい、重さんでした! なんなのコイツら? 実は仲が良いまであるんじゃないだろうか?


「随分と早いな……まだ六時半だぞ?」


 高校生なら部活の朝練でもなければこんな早くから活動をしないだろう。


「まあ、睡ちゃんが朝早そうだしね。どうせ早朝から起こされたんでしょう? 二人も三人も変わらないから私も入れてよ?」


 俺はため息を一つついてから玄関のチェーンを外して重を招き入れた。実際問題二人も三人も変わらないというのはあるし、睡へのツッコミ役としては優秀なので今日は手伝ってもらおうかな、俺と睡だけだと暴走列車のごとく睡に引っ張られるし……


「おはよー、睡ちゃん早いねー?」


 それを六時半に来たお前が言うのかという重への突っ込みは置いておいて、ひとまず朝食に……?


「あれ? 朝ご飯は?」


 テーブルの上はすっかり片付いていて、まるでなにも無かったかのように整然としていた。


「いやですねお兄ちゃん! もう食べたじゃないですか? 私はお兄ちゃんに朝食を作ったのであって重さんに作ったわけではないんですよ?」


「まあいいけどね……」


 重も渋い顔をしながらその状況に納得していた、どうやら疑問に思っているのは俺だけのようだった。


「さて、朝ご飯も済んだことですし、のんびりテレビでも見ましょうか?」


 睡はテレビにスマホの画面をキャストする外部入力に切り替え、早朝からアニメを見始めた。何故朝っぱらから深夜アニメであろう作品を鑑賞しているのかという疑問はさておき……


「きわどいわねえ……」


「そりゃあそういうゲームが原作ですからね!」


「見えてなければセーフって理論は好きじゃないのだけれど……何でこのアニメを?」


「そりゃあお兄ちゃんが好きなアニメですから!」


 堂々とそんなことを言い放つ睡だが、このアニメにはやたらと肌色成分が多い上……ヒロインが妹だった……コレを妹と一緒に見るってどんなプレイだよ!


「まあ……うん……睡ちゃん? 自分の欲望に忠実なのは悪いことじゃないわね」


「あらあら、コレはお兄ちゃんの趣味ですよ?」


「ちがっ……痛うううう!!!!」


 足を睡に思い切り踏まれて悶える、否定は許さないと言うことらしい。


「人の好みはそれぞれだからとやかくとは言わないわよ、睡ちゃん?」


「何故私に言うんですか……? お兄ちゃんの趣味なんですが?」


「はいはい、そういうことにしておくわよ」


 しれっと重がそう言うと睡はスマホのキャストをオフにした、何か気に食わないことがあったらしい。


「まったく……重さん、嫉妬は見苦しいですよ?」


「嫉妬ねえ……まあ家に入れてくれたって事で気にしないでおいてあげるわ、追い払われそうだったしね」


「おやおや、人聞きが悪いですね? 私は来るものは拒まない精神をしているというのに?」


「この前思いっきり拒んでたの忘れてないからね?」


「この人は余計なことばかりよく覚えてますね……都合の悪いことは水に流すのが友人ってものでしょうに……」


 とても自分本位な友人間を披露した後にようやく出かける支度を始める睡に「俺は財布取ってくるよ」と言って部屋へ逃げ帰り、しばらく時間を潰してから合流したのだった。


 これはただでは済まない一日になりそうだなあ……まだ朝起きて朝食を食べた後だというのにその後の喧噪に気をもむ羽目になるのだった。

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