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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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小テストを終えて

「終わった……何もかも終わった……」


 隣で睡がそうつぶやいている。終わったのは休み明けの小テスト、なんとか一夜漬けを繰り返して最後のテストが今日終わった。ラストは物理となっていたが意外と軽い感じで解いていたので大丈夫なのだろう。


「睡、小テストを完走した感想は?」


「疲れました、褒めてくださいお兄ちゃん!」


「えらいえらい」


「へへへ……」


 そんなやりとりをしていると重が話しかけてきた。


「教室の中なんだからもうちょっと自粛しなさいよ?」


「あら? 重さんは私に嫉妬してるんですか? 見苦しいですよ?」


 睡の煽りに重も思いっきり乗る、疲れてるのかな?


「睡ちゃん、成績ギリギリのあなたに嫉妬する要素があるのかしら?」


「それは重さんが一番ご存じのはずですがねえ……」


 煽る睡に重も徹底抗戦をする気もないらしく諦めて俺に話しかける。


「誠はどうだった? 結構キツかったよね?」


「俺はまあぼちぼちだな。再テストのラインは超えてるだろうな」


 今回の小テストは結構難しかったが無事終わらせることが出来た。一学期にやった範囲から幅広く出たので結構難しかった。とはいえ赤点などという恥を避けるために必死にやったのでそれなりに問題の無さそうな点数にはなるだろうと予想している。


 重の方は自信満々のようで平然としている。どうやらテストは完璧ということらしい。


「お兄ちゃん! 面倒事も終わりましたし一緒に帰りましょう!」


 そう言って俺に飛びついてくる睡。体のバランスを崩さないように踏ん張って耐える。睡は軽いのだが力があるので引っ張られると力を入れないと倒れそうになる。


「誠、睡ちゃんの勉強は見てあげたの? 妹の失敗は兄の責任よ?」


 無茶苦茶なことをいう重だが睡は意外とやる時はやるので問題無いだろうと思っている。


「まあ睡は大丈夫だよ。昨日必死に勉強してたからな」


「一夜漬けでなんとかなるには範囲が広すぎると思うんだけどなあ……」


 それに睡が答える。


「私は時間あたりの勉強効率がいいんですよ、一日あれば完璧までいけます!」


「本当だったら神様っていうのは随分と不公平なのね……」


 世の中というのは多少なりとも理不尽なものだ、睡と重、どちらが絶望を味わうかはなんとなく分かっているがさすがにここでいう気にはならなかった。


「睡、帰ろうか」


「ですね、重さんはお勉強が忙しいんですよね?」


「え!? わ、私は……」


「忙しいんですよね?」


「う……うぅ……」


 重を言い負かしてから俺の手をグイグイ引っ張る。


「さあお兄ちゃん! レッツ帰宅!」


 帰宅にレッツも何もないと思うのだが、いつまでも教室にいてもしょうがないので鞄を持って二人で歩く。すっかりいつもの光景となっていて誰も何も言わなかった。


「帰るか……」


 校舎を出ると夏の名残が俺たちにジリジリと襲いかかる。暑いのはいつものことだが帰宅してしまえばエアコンさんがいるので怖くない。それは平気なんだが……


「睡、暑くないか?」


 睡が隣にへばりついてきて暑苦しい、もうちょっと離れると言うことを覚えて欲しいのだがな。


「溶けそうに暑いですよ」


「じゃあ離れようとは……?」


「それは嫌です!」


 俺の腕に絡める睡の手に力が加わる、どうやら離れる気はまったくもって無いらしい。俺はさっさと自宅に帰ってエアコンをガンガンにかけたくてしょうがなかった。俺は地球のためになんて理想論は知ったことではないので設定温度は最低に近い温度にする、睡に嫌みを言われることもあったが『じゃあ部屋に帰るよ』と言うと認めてくれたのだった。


「お兄ちゃん! 早く早く! 暑いんですから」


 だったら離れればいいのにとは言いたいところだが言っても無駄だと思い黙っておいた。


 まったく、面倒な日常だな……でもまあ……悪くはないか。


 家に向かって歩きながら睡が何を考えているのか思索をめぐらせて見るも結局よく分からなかった。妹を理解するマニュアルってどこかで売っていないだろうか? そんな便利なものがあるならこんな苦労をすることも無いだろうに。全くもって世の中は不条理だ。


 家にようやく着くと即エアコンを最強にしてオンにした。


 ごうごうとエアコンが冷気を吐き出してくる、フロンガスを使っていないエアコンなので冷却能力もそれなりだが、個人的には100年後の環境より今の蒸し暑さをなんとかして欲しいので、フロンガス復活の署名があったら名前を書きたい気分だ。


「お兄ちゃん、私シャワー浴びてきますね、覗かないでくださいね?」


「覗かないよ」


「まったく……お兄ちゃんはそれで本当に覗かないんですから困った物です……」


「何か言ったか?」


「さあ? お兄ちゃんが鈍感だって話ですよ」


 少し不満げに浴室に向かっていった睡を見送ってから、キッチンを眺める。さて、冷蔵庫には材料があってキッチンの使用を止める人は誰もいない。夕食を作ったら睡も感謝するのではないだろうか?


 そう思って冷蔵庫を開けてみる、今日の夕食はおそらくカレーを作る気なのだろう。野菜一式と肉とルウが中にあった。


 ん?


 冷蔵庫の中に一枚の紙が置いてあり、それを読んでみると『お願いですからお兄ちゃんは料理しないでください! フリじゃなくてマジなので頼みます!』と書かれていた。


 そこまで俺の料理はダメなのか……少しショックだった。別にピンクのカレーがあったっていいじゃないか、個性だ個性。


 そう思って肉を持ち上げてみると下に紙が挟んであった。


『お兄ちゃん! 本当に料理しないでくださいね! 食事ならカップ麺が横の棚にあるのでそれを食べてください!』


 それを読んでからさすがに料理をする気は失せてしまい、ソファに寝転がった。どうやら俺には料理の才能は無いらしい。出来ることならアレが自分で料理を作りたい睡の願望から書いた紙であると信じたい。都合のいい話であるのは百も承知ではあるのだが。


「お兄ちゃん、お風呂空きましたよー? どうしたんです暗い顔をして?」


「いや、何でもない……なあ、俺の料理ってそんなに下手かな?」


「そうですね……」


 睡は少し悩んでから答えた。


「独創的……でしょうか。人類には早すぎると思うんですがね」


「そうか」


 俺はなんだかあまり料理を歓迎されていないことは察して諦めてシャワーを浴びに行くのだった。


 ――妹の部屋


「お兄ちゃんの料理かあ……」


 正直食べてみたい気持ちはあります、きっと後悔するのでしょうが、お兄ちゃんが私のために作ってくれた料理という素晴らしいものを拒否するのは心が痛みます。


 ですが! だとしても! 蛍光ブルーのシチューや真っ赤なお味噌汁を食べたくはないのです!


 何故神様はこうも必要な物を与えてくれないのでしょうか? 残酷にもほどがあるでしょう。


 私はその夜、お兄ちゃんの部屋と設定温度を一緒にしたエアコンで寝ました、翌日体調が悪くなりそうな寒さだったことは特筆すべき事なのでしょう。


 それでも、お兄ちゃんのことを理解するために私は我慢をするのでした。

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