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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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週明けの悪夢

「う゛ぉえ……学校行きたくないですねえ……」


 そんな堕落したことを言っているのはもちろん俺の妹の睡だ。休み明けはいつもこうなんだからうんざりする。しかし、夏休み明けほど酷くはないので適当におだてて登校させればいいだろう。


「睡、始まりがあれば終わりがあるんだぞ、それは休みでも一緒だ」


「うぅぅ……お兄ちゃんが私にロジハラをします……」


 酷いいわれようだ、つーかロジハラって……コイツはニートでも目指してんのか?


 話が通じないので睡が朝食を用意している間に登校の準備を整えておいた。ニート気質の妹にはちゃんと鞄を用意しておいてやらないといけない、マジでやる気がないからな。


 本気を出せばそれなりに勉強だって出来るんだから頑張ればいいじゃないかと思うのだが、睡曰く『私はピンチになってから覚醒するタイプなんです』とよく分からない理論だったが、頑張る気がないことだけは理解できたのだった。


「お兄ちゃん! 朝ご飯ですよ」


「ああ、登校の準備もしておいたぞ」


「ヴォエ……」


 俺の言葉に女の子が出す発音とは思えないほどいやそうなうめき声を出していた、そこまで嫌かよ……


「まあ、とりあえず朝ご飯を食べようか」


「そうですね! 出来ればお昼くらいまでのんびり食べててもいいんですよ?」


「学校に行きたくない理由っていじめとかじゃないんだよな……?」


 ここまで頑なだと何か重大な理由があるんじゃないかと不安になる。まあコイツがいじめられていたら手段を問わず復讐するような奴なので相手の方が心配になるくらいだ。


「そんなわけないでしょう! 私はいじめられてたら即訴訟で片付けますよ?」


「訴訟までするのか……てっきり相手をフルボッコにして終わりかと思った」


「ボコってもそれで終わりじゃないですか? 刑事事件にすれば人一人の人生が台無しになるんですよ? 考えただけでもゾクゾクするじゃないですか!」


 とことんいい性格をしている妹だ。なんにせよ分かることはコイツはいじめられないな。いじめっ子も相手を選ぶだろう。外道のような気もするが手っ取り早い解決法なのかもしれないな。もっとも、高校生にもなって子供じみたいじめをするような奴もほとんどいないのだが。


 所謂ところのLINEいじめ程度ならあるのかもしれないがクラスメイトとほぼ没交渉な睡にはノーダメージだろう。


「お兄ちゃん? 食べましょうよ」


「あ、ああ。悪い、ちょっと考え事をしてた」


 今日の朝食は和食、ご飯に味噌汁、焼いた魚の切り身だった。食べてみると実によく出来ている。料理の腕は確かなようだが、俺には料理の腕は遺伝しなかったらしい。あるいは睡に料理能力を全振りしたせいで俺の料理能力がさっぱりになったのかもしれないな。


 そんなことを考えながら食事に手をつけていく。有り難いことに魚は骨取り済みの切り身だった。朝からチマチマ骨を取りながら食べるのは面倒なので非情にありがたい配慮だ。


 魚を食べて味噌汁を飲みご飯を口に運ぶ、そういえば珍しく和食だな、最近は朝食はパンが多かったというのに。


「お兄ちゃん、今日の料理はどうですか?」


「美味しいよ、とっても」


 睡は頷いてから続けた。


「私の美味しい料理を食べられるお兄ちゃんにいい知らせがあります」


「え!?」


 どうせロクなことじゃないんだろうなとは思いつつ料理を作ってもらっている手前無下にも出来ない。


「お兄ちゃんは今日、私と手を繋いで登校してもらいます」


 ええええ!!!!!!


「いや、さすがに恥ずかしいというか……」


「何を言ってるんですか? 今更誰も気にしませんよ? お兄ちゃんは周りが私たちをどう見ているかにも関心を持った方がいいんじゃないですか?」


 えぇ……俺たちってそういう目で見られてんの……普通に仲の良い兄妹レベルだと思ってたんだが。


「わかったよ……今日だけだからな?」


「はい!」


 睡に目は『お兄ちゃんはチョロいのでまた頼めばいけるでしょう』と語っていた。気のせいかもしれないがそう言うのって隠せないもんなんだよなあ。


「ごちそうさま」


 気がつくと料理は全て食べ終わっていた。話に夢中で気がつかなかった。


「ごちそうさま」


 俺の送れて食べ終わると食器を片付けて鞄を持った。


「睡、行くか」


「はい!」


 こういうときだけはやたらとやる気になるようだった。


 玄関を出るといきなり睡が俺の手に自分の手を絡めてきた、所謂『恋人繋ぎ』というやつだ。


「睡、ちょっと恥ずかしいんだが……」


 俺が手を離そうとすると、睡は言った。


「夕食が塩パスタになりますよ?」


 俺は睡の手をギュッと握ったのだった。塩パスタは勘弁して欲しい。一応死なない程度の栄養はとれるがあまりにも味気ない。


「ふっふ~ん……お兄ちゃんと一緒~」


 鼻歌交じりに睡は俺の手を引く、浮かれているのが誰の目にも明らかだった。


 そうしてしばらく歩くと学校が見えてきた、クラスメイトも居るので手を離そうとしたところ全力で握り替えされた。


「お兄ちゃん、教室までこのままですよ?」


 さすがに恥ずかしいものがある。しかし睡はどんどん歩いて行くので嫌が応にも目立つ。とはいえ、何故かクラスメイトもそれほど奇異の目で見ることもなく俺たちが手を繋いで教室に入った時チラリと見た後、皆それぞれの雑談に戻っていった。


 そうして退屈な授業が流れていった。退屈極まりないが勉強はしておかないと後で苦労するからな。睡みたいに一夜漬けでクリアするのは例外だ。


 頭が内容の詰め込みでオーバーフローした頃にようやく授業の全てが終わった。


「うーし、お前ら頼むから問題を起こすなよ! 私の教師生命に関わるんだからな!」


 などと自己中心的な言葉を担任が残してHRは終わった。帰宅するだけなのだが……


「お兄ちゃん! 帰りましょう!」


 当然のごとく手を繋いでくる睡に俺は離そうにも、この手を離したら生活レベルが落ちるのが目に見えているので離せなかった。


 帰り道で睡が俺に話しかける。


「お兄ちゃん……こうしてると……その……恋人みたいですね?」


「まあ知らない人が見たらそうかもな」


「うへへ……お兄ちゃんと恋人……」


「ちなみに俺たちはよく知られていて皆いつもの兄妹だって思ってるぞ」


「ぐぬぬ……」


 そうして帰宅したわけだが、夕食はシチューだった。睡曰く「アツアツな恋人をイメージしてたら出来ました」とのことだった。


 突っ込みどころは満載だが生活レベルは悪くならなかったのでそれについて言及するのはやめておいた。


 ――妹の部屋


「お兄ちゃんと~~恋人~~」


 思わず鼻歌が出てしまいます。お兄ちゃんは言いました。

『よく知られていて』

 つまりは知らない人から見られれば恋人に見られてしまうと言うことです!


 私は今日、是非私たちが兄妹だと知らない人がたくさん見てくれたことを願うのでした。

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