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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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それぞれの休日

「はぁ……」


 気が重かった……それというのもこの前のパブリックリポジトリへのスターが着いた件だ。気のせいとしてしまえばそれでいいのだがなんだか睡に監視されているようで落ち着かない。


 俺はしばらく考えた末に公開しているソースコードにコメントとして『#貴様見ているな!』と加えてアップロードしておいた。もしアイツがスターをつけたなら何か反応があるはずだろう。もっとも、ソースコードを見ていれば、だが。


「お兄ちゃん! 夕ご飯ですよー!」


 睡の声がキッチンから響くのでそちらに向かう、さすがにまだ本人だったとしても気がついていないだろう。


「今行く」


 そういってキッチンに向かった。睡は何のこともない表情をしている。まあまだ気がつくわけないわな。スターが本人だったとしても偶然という可能性もあるだろう。そんなに気負うことでもないのかもしれない。


「お兄ちゃんが席に着くまで三分がかかりました」


「お前は校長先生かよ……」


「冗談です! じゃあ食べましょうか」


「「いただきます」」


 モグモグと口の中にパンを突っ込んでいると睡はスープを飲みながら器用にスマホを操作していた。お行儀が良くはないが、家庭内でそこまでマナーに口うるさくいうべきだろうか? 逡巡してからマナーではなく話の種にすることにした。


「睡、何見てるんだ?」


「ああ、githubの使う方を調べてるんですけどね……どうもスマホにはあまり向いていないようでして……」


 どうやら使い方が分からないらしい。俺が教えるのはやぶ蛇なので放置しておくことにした。


「お兄ちゃん使い方知ってるんですよね? 教えてくれませんか?」


「いや俺は知らないんだってば」


「ふ~ん……」


 睡が非常にに訝しんでいるが俺は知らぬ存ぜぬで通すつもりだ。わざわざヒントを与えてやる必要もないだろう。ネット上には個人情報が無数にあるがそれをつなげるのは大規模サービスでも運営していない限り至難の業だ。


「なんだよ? 何か言いたげだな?」


「うーん……なんでもないです! ただお兄ちゃんの全てを探す義務のある私としては気になるところですがね」


 怖い……全てを探すって……ワンピかな?


「なんでもかんでも知るのがいいことじゃないと思うがなあ……」


「でも気になるじゃないですか!」


 そうなのか? 普通兄の日常なんて一々気にしないだろう。そんなヤンデレじみた思想を公開されても困るんだがな。まあいつものことなので一々突っ込んだりもしないわけだが、宣言はして欲しくなかったなあ……


「じゃあ俺は部屋に帰るから」


「そうですか」


 しゅんとする睡、俺は少し心が痛んだがこれ以上この場にいて詮索されてバレてしまうよりよほどマシだろうと考えた。


 部屋に帰ってからPCを開いてgithubに新着のイシューやプルリクエストが届いていないか確認してみる。幸い情報があがっていないので、俺は多分気のせいだったということにして気にしないことにしたのだった。


 今日も今日とて自由気ままにエディタで文章を書いてgit add . git commit git pushという黄金の3コマンドを打ち込んでPrivateにアップロードしておいた。


 ――妹の部屋


「怪しいんですけどねえ……この中にお兄ちゃんのアカウントがある気がするんですけど……」


 私はしらみつぶしにユーザ名を眺めていきましたがお兄ちゃんに関係のありそうなものはありません。私の勘が鈍ったのでしょうか?


 いいえ! 私の勘は当たるのです! 直感を信じた方が上手くいくはずです!


 何しろ私はマークシートのテストで直感を信じてマークしたところ9割をゲットしたという勘の良さですからね!


 ざっと検索をかけてみますがお兄ちゃんの気配を全く感じません。困ったことにこのサービスはソースコードで語り合う場のようで、プログラミングが出来ないと、書いてあることが良く分かりません。そもそもスマホではソースコードを読むのに圧倒的に向いていないようです。PC、要りますかね……


 私はアカウント名を『MAKOTO』で検索したり『SINA』で検索したりしてみますがそれっぽいアカウントはありません。実名で登録している人がほとんどいないので結果に出てきた人が本名である可能性は低いです。


「ソース、読みますかね……」


 大量のソースコードを皆がアップロードしている。この中からお兄ちゃんの書いたであろうコードを見つけるのは干し草の中にある一本の針を探すようなものです。


 いくつか検索ワードを追加してみましたが技術的な情報は引っかかりますが、個人情報はさっぱり引っかかりません。


「うーん……やっぱりお兄ちゃんに聞くしかないでしょうか? 絶対教えてくれないですよね……」


 お兄ちゃんのPCを覗けば一発なのですが、私が忍び込んだ時は必ずパスワードの入力画面になっています。よほど見られたくないようです。


 様々な検索ワードを試してみますが、日本語で検索すると同じく漢字圏の中国からのリポジトリがどんどん引っかかってしまいます。明らかに中国語の情報が引っかかってきます。


 残念ながら私はこの手の技術的な英語がほとんど分かりません。残念ですが英語で調べる路線は上手くいかないでしょう。お兄ちゃんが日本語で情報を書いてくれていることを祈るばかりです。


 はてさて、お兄ちゃんのアカウント探しは上手くいかないものです。Twitterのアカウントは即行で特定しましたし、facebookみたいな実名制SNSなら難なくアカウントを探すことが出来ます。


 時には電話番号でサーチをかけると『友達かも?』に表示されるガードの甘いSNSもありました。しかしこれは正直お手上げですね。


 いっそお兄ちゃんの部屋に隠しカメラを設置して……いえ、法の壁を越えるのは良くないですね。


 スマホを一台録音録画モードで置いておくだけで簡単に盗撮や盗聴ができてしまいます。私はそれができるだけのデバイスを持っています。しかしこれをやるには一線を越えてしまう気がするのです。お兄ちゃんとの良好な関係も大事ですからね。


 私は壁にコップをあててお兄ちゃんの部屋から流れ出す音を拾おうとしてみますが、残念なことにこの家はまともな建築物らしく遮音性が高いせいでさっぱり聞こえませんでした。


 その辺で私はお兄ちゃんの部屋に壁をぶち抜いてしまおうかと物騒な考えが浮かびましたがさすがにマズいと諦めます。


 結局のところ、私はgithubでお兄ちゃんの素性を調査するのは諦めることになりました。


 私はそれから、お兄ちゃんが自分から言い出してくれるまで待つという持久戦を行うことを決めて悩みを放り捨てて眠ることにしたのでした。

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