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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹がネットで見ない場所

 ふんふーん……


 俺は気楽に文章を書いている、もちろん物理媒体に書いているわけではない、睡が詮索を入れること必至だからな。


 ブログでもWEBサイトでも文章を書いているとバレると即睡の詮索が入ってくる。俺はそんな執念から生まれた好奇心から逃げる場所を見つけた。


「git pushっと……」


 そう、githubだ。世界一有名なソースコードホスティングサービス、俺はそこに目をつけた。Privateのリポジトリを作れば誰にも見られることなく自由気ままな文章を書くことが出来る。そもそもgithubはそういったサイトではないのだがそう言うふうに使えてしまうのだからしょうがない、使えるものは使ってしまう、人間心理というやつだ。


 リポジトリ……そう、本来ならプログラムのソースコードを置く場所に俺は日記を置いている。誰にも見られない文章を書くことほど楽しいことはない。Privateを無制限に作れるようになったのはありがたい話だ、それまでは課金しないと作れなかったからな。


 コンコン


 ノックが響く。俺はgithubを開いていたタブを閉じ、vimで好き放題書いていたので終了させてから「なに?」と返答する。


「お兄ちゃん? ご飯ですよ!」


 ああ、そういえばもうそんな時間か、ついつい楽しんで書いていると時間を忘れてしまう。


「分かった、今行く」


 そう答えてPCにスクリーンロックをかけて部屋を出た。


 夕食を食べながら、今日は何を書こうか考える。その日の食事の感想や日記、撮影した写真までアップロードしている。バイナリをアップロードするのは推奨されているわけではないが変更がなければスナップショットに保存されないので問題無いだろう。


「お兄ちゃん? 何か楽しそうですね?」


「いや、何でもないよ」


 勘の良いやつだ。危険な部分に突っ込まないことを考えている俺はすっとぼける事にした。匂わせでもしたらしつこく探し回ることは目に見えているので俺は逃げの一手を打つ。


「ふうん……」


 どうやらあまり興味がないらしい、いいことだしむやみやたらに俺を詮索しようとしないのはいいことだ。


「ところでお兄ちゃん、スマホ見せてくれますか?」


「は!?」


 言っていることの意味が分からなかった。個人情報の塊を見せろだって? 正気かコイツは?


「やだよ、お前絶対調べつくすじゃん」


 俺がきっぱりと断ると睡はそれでも食い下がった。


「なーんかお兄ちゃんが隠しごとしてるような気がするんですよねえ……スマホに隠してるかなと思うんですが……」


 なんとも勘のいいことで……確かにスマホにgithubのアプリを入れているので覗かれるとバレる可能性が高い。自分の見たことのないアイコンがあれば確実にコイツはそれを開く、確信している。


「お兄ちゃん? 大丈夫ですか? 顔色がレインボーなのですけど?」


「普通に顔がそんな色になったら体調がヤバいだろうが……」


「冗談ですよ? でもお兄ちゃんが何か隠しごとしてる気がするのは本当ですよ?」


 そう言って微笑みながらいつの間にか食べ終わっていた夕食の食器を片付けていた。俺がさっさと続きを書きたくなって部屋に戻ろうとした、スマホで今日書いた文章を眺めながら部屋に戻った。


 コンコン


「お兄ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんですが……」


「おう、なんだ?」


 さっきと同じように一通りのエディタを閉じて部屋の入り口に向かう。そこにはスマホを持った睡が立っていた。


「お兄ちゃん……その……」


 なんだか口ごもっている睡、一体何にモジモジしているのだろうか?


「githubってなんですかね?」


 ドキリ……心臓がはねる、一体何故気がついたんだ!? いや、待て……まだ確定というわけではない、ここは誤魔化そうか。


「さ、さあ……知らないかなあ……」


 苦しいとぼけ方だろうか? しかし深入りするのは危険と本能が告げている。


「アプリはこれですよね?」


 体が一瞬硬直した、睡のさしだしたスマホには公式のアプリが表示されていた。


「SNS……みたいなものかと思ったのですがアカウントとかもよくわからないしステムですし……一体何をするアプリなんですかね?」


「何故俺がそれの使い道を知ってると思ったんだ?」


「お兄ちゃん使ってるじゃないですか?」


「は!?!?!?」


「さっき食事が終わった時にお兄ちゃんの背後に録画中のスマホを置いておいたらこのアプリが映ってたんですよね」


 怖っ……スパイか何かかな? やってることがエグすぎる。そういえばコイツの持っているスマホは一台ではなかったんだった。PCのカメラならさすがに気づくがスマホをそっと置かれただけでは認識できなかった、失態だ……


「お兄ちゃん? どうかしたんですか?」


 睡が俺の顔を見ながら聞いてくる。適当に答えて流すとしようか……


「ああ、いや、なんとなく入れたアプリなんだけど使い方が分かんなくってさあ、放置してるんだよな」


 睡は非情に疑わしい目でこちらを眺めてから言った。


「ふーん……まあいいですよ。ちなみにお兄ちゃんのアカウント名は?」


「だからアカウント持ってないって!」


 誤魔化そうとしているのに頑なに聞き出そうとする睡。俺は顔色を必死に取り繕う。


「そうですか……つまりお兄ちゃんのアカウントを検索してもそれはよく似た誰かであってお兄ちゃんとは関係ないと言うことですね?」


「え゛!?」


「持ってないんでしょう? アカウント」


「い、いやまあそうなんだが……人違いした時に迷惑がかかることもあるしさ……」


「私はお兄ちゃんを見間違えたりしませんよ!」


 そう自信満々に言って検索を開始する。幸いパブリックにリアル事情を匂わせるソースやメタデータを置いていないのでいくら探しても見つかるはずはないのだが、どうにも心臓に良くない行動だった。


「ふーん、見つからないですね……ま、いいです。お休みなさい、お兄ちゃん」


「あ、ああ……お休み」


 なんとか誤魔化すことに成功したようだ。睡が帰っていってしばらくして、俺が作っているアプリの一つにスターがついた。気のせいだと思いたいのだが、日が日だけに普段なら嬉しいはずのことがなんだか不安に思えるのだった。


 ――妹の部屋


「お兄ちゃん……反応しないですね……」


 私はお兄ちゃんに聞いた後全力で検索をしました、そして怪しいアカウントに片っ端からスター機能を使って足跡をつけていきました。残念ですがお兄ちゃんからの反応はありませんでした。


 どうやらgithubがソースコードというものを共有するためのサイトだということは分かったので登録してから、お兄ちゃんの匂いのするアカウントを片っ端から当たって星をばらまきましたが結局反応はありません。私が間違っていたのでしょうか?


 私はモヤモヤする頭を冷やすためにエアコンの設定温度を二度ほど下げて布団を被って眠りました。

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