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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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(二学期は)初登校です

「ああ……やっぱり登校するしかないんですね……」


 朝食を食べながらテンションがダダ下がりなことを言ってくる睡、よほど学校が嫌らしいがいじめられてるんじゃないよな?


「なあ睡、その……学校で人間関係に問題とかは……」


「ありますよ! めっちゃあります!」


「いじめられてるのか!? 許せないな!」


「いえ、学校ではお兄ちゃんの人間関係が広まっていくのが気に食わないんです」


 俺の人間関係を制限しないでくれないかなあ! いや、宗教がらみとか政治がらみの人間関係が怖いって言うのは分かるよ? 明らかにコイツが言っているのは普通の知人友人レベルの付き合いじゃん!


「はぁ……お前と話してると疲れるな……早いところ出ようか」


「朝ご飯くらいゆっくり食べましょうね? どうせ早く出たところで学校では私と一緒にいるんですからね」


 どうにもコイツから離れることは出来ないようだ、まあ別に嫌なことではないけれど、お前ホントにそれでいいのか? と思うばかりだった。


 俺は朝食のグラノーラを口に含みながら考える。コイツが学校でまともな生活を送るために必要な物は何か? 少なくとも俺ではないだろうな……


「ほら、顔についてますよ?」


 睡が俺の顔についていた豆を指で取って口に入れる。ああ、そんなことさえ気がつかなかったか。


「睡、お前学校でちゃんとやっていけるのか?」


「少なくとも知り合いレベルの人はいますね」


「友達じゃないのか……」


「私にはお兄ちゃんさえいれば他の誰もいりませんからね」


「そこまでか……?」


「ちなみにお兄ちゃんがいないと何もかも不満ですがね」


 どうやらコイツにとって俺は全てらしい。俺はそんな立派な人間ではないし、妹の一生を背負えるほどメンタルが強くもない。


「あんまり期待されても困るんだがな……」


 そうこぼすと睡は俺の方をしっかりと見据えて言った。


「お兄ちゃんがどう考えてるかは知りませんがね、少なくとも私にとっては限りなく大事な存在ですよ?」


「そういうものか……」


 きっとこのあたりを議論したところで結論は出ず平行線をたどるだろう。不毛な議論を続ける気にもならないのでさっさと朝食をかき込む。牛乳と穀物だけの朝食はなんだか味気ないような気もした。


「「ごちそうさま」」


「よし、じゃあ久しぶりの登校といくかな……」


「うぅ……面倒くさいですね……」


 食器を軽く洗ってから鞄を持って玄関に向かう、睡はようやくといった感じで気怠げに鞄を持ち上げた。


「よし、準備はいいか?」


「オーケーです! しょうがないですね……行くとしますか!」


 こうして俺たちにとっての休みが終わり、登校を始めることになった。


 玄関を開けて外に出ると九月にもなったというのにかなりの熱気が俺たちを包む。やはり昨日まで八月だっただけはあってまだまだ夏といった空気をしている。


「暑いな……さっさと行こうか」


「ですね……」


 俺たちは足早に学校に向かっていった。幸い学校にはエアコンが実装されているのでそこまでたどり着けば冷房の恩恵にあずかれる。


 スタスタ……スタスタ……


 そんな様子で歩いていると聞き慣れた声がかかった。


「おはよう! 誠と睡ちゃん!」


「おはよ、重」


「おはようございます、重さん」


 俺たちも暑さにうんざりしながらもしばらくぶりの幼馴染みの挨拶に答える。


「二人とも元気ないわねえ……」


「この暑さで屋外に出されてそこまで元気なお前の方が謎だよ」


 何故こうも元気なのか? さっぱり分からないがとにかく重は調子が良さそうだ。


「まあ……二人に会えるしね……」


「どういう意味ですか?」


 睡が胡乱な目で重をにらむ。


「あら、睡ちゃんに会うのだって楽しみにしてたわよ?」


「ほほう……つまりはお兄ちゃんに会えるのも楽しみだったと?」


「いや、私も退屈しててねー! 二人といると退屈しないからね?」


 睡は納得はいっていないようだが、ひとまずその答えを受け入れたようだった。


「しょうがないですねえ……じゃあお兄ちゃん、重さんも一緒に行きましょうか」


「俺は別に構わないぞ」


 睡は不機嫌そうに頷いて再び学校に向かって歩き出した。そうしてしばらく歩いたところでようやく学校に着いた。校舎に入るなり冷房が漂ってきて非常に気持ちいい。


「ふぁ~~……生き返りますね!」


「そうだな、九月でも冷房がちゃんと効いてて良かったよ」


 最悪、もしかしたら暦の上では秋と言うことで冷房が切られている可能性も考えたが杞憂だったようだ。


 教室に入るともはや日常となった俺たちに注目するクラスメイトもおらず、自然に睡に引っ張られつつ席に着いた。


 少しするとようやく担任がやってきた。


 ガララッ


「うーし、お前ら休んでるやつはいないな? 休み明けは面倒なんだよなあ……この時期が来なくなるやつ多いんだわ」


 この先生の発言はクラスから脱落した人が出るのを心配したのではなく、おそらく不登校や退学者が出ると面倒くさいと言うだけの話だろう。


「ったく……せっかくお前らが休んでるから私らは面倒ごとの種が無かったっつーのに……」


 もはやただの愚痴になっていた。この女教師は基本的に事なかれ主義で、生徒の心配ではなく自分の地位の方が優先なのだろう。クラスを見渡して空席がないのを確認して一息ついていた。


 その後、一通りの出席を取って講堂への移動となった。


 講堂では相変わらず退屈な話を延々することが得意な校長が政治家もかくやといった長文の挨拶を読んでから休み明けの心得が生徒指導から伝達された。もっとも『真面目に学校に来い』程度のことなので、そもそも学校に来ていない生徒がいればソイツに伝わることは無いだろう。


 講堂はさすがにエアコンが効いておらず、教師陣が平気な顔をして退屈な話を続けていた。そんな中俺たちの担任は暑そうに休み明けの案内をうちわ代わりにして自分をあおいでいた。ぶれない人だな……


 ようやくお話が終わったが、幸いなことに長話で倒れた人はいなかった。皆頑張ってるなあ……


 始業式が終わって教室に戻ると引率していた担任もだらけきった態度になった。どうやら講堂での態度はまだ控えめなものだったらしく、教室に着くなりネクタイを緩め第一ボタンを外してから俺たちに宣言した。


「いいか、お前達が明日からの小テストで悪い点取ったら私が白い目で見られるんだからな? 頼むから真面目にやれよ!」


 学力の心配と言うよりは指導力不足を指摘されるのを心配しているようだった。


 その後、ありきたりな休み明けの注意をした後で俺たちに檄を飛ばす。


「お前ら、学校が面倒くさいってのはよく分かるが私の平和な生活のために明日も登校しろよー!」


 そう言われて、それをもってHRは終わりとなり解散することになった。


 ちゃちゃっと帰宅の準備をしてから睡に声をかける。


「じゃあ帰るか?」


「ですね」


 そうして二人で帰宅をすることになった。学校を出るなり熱気が俺たちにまだまだ夏が終わっていないことを教え込んできた。


 そうして帰宅後。


「睡、ちょっと聞きたいんだが……?」


「なんでしょう?」


 今日が暑い日であることは予想済みだった。だからここにその対策をしていたはずなのだが……


「冷凍庫にアイスが入ってなかったか?」


「へ!?!? いいいいいいいええええええええええ!?!? 全然そんなものは見たこともないですね!?」


「狼狽えすぎだろ……」


「まあアイスの一つくらい構わないけどな」


 自宅に空調が効いていなければ全面戦争になるところだが、この家にはエアコン様がいるのでそれほど腹も立たなかった。ただ無言でエアコンの設定温度を二度下げたのだった。睡も悪いと思っているのかそれに異論を唱えることは無いのだった。


 ようやく一日が終わる頃、俺はネットを閲覧しながら南極の写真を眺めていた。一つ分かったことは寒い地域の写真をいくら見ても現実は変わらないという残酷な事実だけだった。


 ――妹の部屋


「お兄ちゃん! お兄ちゃんのアイス……食べちゃいました」


 お兄ちゃんは怒りませんでしたが少しだけ罪悪感があります。私はその日、寝る前まで冷たい料理で簡単に作れそうなものを探すのでした。

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