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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年夏休み編

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妹の膝枕

 俺はエアコンの効いた自室で寝転んでだらだらしていた。いや、もちろん勉強はやった。今日のノルマはこなしたので後は寝て過ごすだけだろうと判断したうえで寝転んでいる。


 決して考えなしにだらけているわけではない。しかし第三者から見ればだらけているように見えるだろう。それはしょうがない。


「お兄ちゃん! お昼ご飯ですよー!」


 睡の声が響くので俺はキッチンに向かう事にした。多分俺に料理は向いていないのだろうというわけで、特別理由が無ければ睡に任せる事にした、適材適所というやつだろう。


 部屋を出るなり熱気が身体を包んで夏という季節が嫌になってしまう。この熱いのに頑張るなんてマゾなんだろうか? そんな事を考えながらキッチンへ歩いていく。


 キッチンへ着くと再び冷気が俺を冷やしてくれる、部屋の強い冷房ほどではないがひんやりとした空気が部屋の中に詰まっている。


「ふぅ……涼しいな」


「お兄ちゃんは暑さに弱すぎでしょう、氷属性か何かなんですか?」


「多分無属性だな」


 睡がため息をつく。呆れ顔でテーブルを指さした、そこには俺が先だって失敗したチキンライスを卵で包んだオムライスが置いてあった。ちなみに全く卵が破れたり、形が崩れたりしていない。やっぱり向き不向きはあるな!


「私が丹精込めて作ったオムライスですから美味しいですよ?」


「ああ、食べるか」


 こうして俺たちは食事を始めた、睡のオムライスは形の崩れも味のミスも全く無く良いできだった。


 半分くらい食べたところで睡が話を始めた。


「さて、お兄ちゃんはこうして美味しいオムライスを食べる事ができているわけですが、私に感謝していますか?」


 ん? なんだか話がきな臭いような?


「感謝してるって、すごく感謝してるぞ」


 とりあえずそう答えると睡が食い気味に俺に話をする。


「ということはご褒美があってもいいですよね? お兄ちゃんは生活能力が無いんだから私がカバーしてあげてるんですよ?」


「だから感謝してるって」


 睡は言質を取ったとばかりにニヤリとした。


「と言う事でお兄ちゃん、食後にお願いがあります」


 そんな事になって俺は食事がスローペースになったのだった。コイツのお願いだと何が来るか分からないからな、気をつけておこう。


 食事が八割方終わったところで睡が『お願い』について話し出した。


「それでですね……そのお兄ちゃんには……して欲しいなと」


「え? よく聞こえないんだが……?」


「お兄ちゃんに膝枕をして欲しいです!」


 えぇ……俺の膝枕なんて微塵も気持ちの良いものではないと思うんだが? しかしまあ、睡にお世話になりっぱなしなのもアレだしなあ……


「睡、本当にそれでいいのか?」


 正直微妙なお願いに驚いている、別に俺が損をするわけではないが、睡にとって何が嬉しいのか分からない。


「私は大変嬉しいですよ! 是非ともお願いしたいですね!」


 と、まあそんなわけで睡の膝枕をすることになった。


「ごちそうさま」


「ごちそうさま」


 睡はニコニコしながら食器を片付けていく。俺が手伝おうかと思ったところ「お兄ちゃんにはこれから楽しませていただきますので」とやんわりと断られてしまった。


 じゃー……カチャカチャ


 食器が片付いていくのだがなんだか睡の手つきが滑らかではない、どことなく緊張しているのかカクついていた。


「ふぅ……片付け終わりです!」


「お、おう……」


 こちらを向いて笑いながら言う睡に迫力を感じながらも一応頷いておいた。


「ではお兄ちゃん……ハァ……ハァ……膝枕をですね……」


「息が荒い! 分かったから!」


 俺は椅子から降りてソファに座る、ぽんぽんと膝を叩くと睡が隣に座ってきた。そして俺に顔を近づけて再び聞く。


「じゃあ……本当にいいんですね?」


「べつにいいよ、減るもんじゃなし」


「では、おねがいします!」


 ポンと横に倒れて俺の膝に頭を載せてきた、なんとなく予想は付いていたが非常に軽い。


「ふぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!! お兄ちゃんの膝枕!!!!!!」


 俺は呆れて聞く。


「そんな嬉しいか? 俺の膝とかゴツゴツしてて気持ちよくないだろ?」


「いえいえいえいえ!! 決してそんなことはなくってですね、非常に気持ちいいと言いますか……その……興奮しますね……」


「……好きにしてくれ」


 俺は諦めて睡の頭を手でなでる、サラサラの髪が非常に心地よい。俺と同じシャンプーを使っているはずなのに、どこで髪質に差が出ているんだろうか?


「その……お兄ちゃん……とっても気持ちいいですね?」


「そうかい」


 息が荒かった割には結局睡は眠ってしまった。膝の上で寝られると動くわけにもいかず非常に困る。起きた時に俺がいないと文句をたらたら言われそうだ。


 俺はスマホを取りだしてソシャゲを消音モードでプレイする。デイリーミッションをこなしてボーナスの意思を受け取ってからふと考えた。


 少し悩んでからカメラを起動させて睡の顔をパシャリと撮影した。横向きに寝ているので顔の前に差し出して写真を撮ったのだが、見えないところで睡はよだれを垂らしながら眠っていることに気がついた。人の膝の上でその寝方は勘弁して欲しいな。


 そして……することが無くなった。いや、妹を膝の上に載せてできることなんてスマホくらいしか無い。下手に動くとまた文句を言われそうだ。


 俺は黙って素数でも数えようかと考えたが、真っ先に思いついた素数が3だったあたりまともに素数を判別できないので早めに諦めた。2は素数なんだよなあ……


 そして悶々とテレビを見ようにもリモコンに手が届かず、スマホのバッテリーの限界にチャレンジすることになった。


 ソシャゲでボーナスをゲットしてガチャを回してみるが、残念なことに最高レアリティはでなかった。困ったことに最近推しのキャラが実装されたのでそれのために石を大量に使ったのでガチャに使う石がほとんど無かった。


 残った端数の石で数回ガチャを回してみたがレアが一回出たきりで残りはノーマルしか出てこなかった。


 いよいよ膝の上の睡を意識し始めることになったので気を紛らわせようとニュースアプリを起動してみる。相変わらず画面に表示されたニュースにナチュラルにプロモーションが入っている、こういう広告の出し方は正直嫌いなのだが、この際それは置いておいてゴシップを読んでみる。


 世間では不倫だの汚職だので忙しいらしいが現在の俺はそれどころでは無い、なんなら政治家の汚職より個人的には膝の上で微動だにしない妹の方が切羽詰まった問題だ。


 ダメだ、まともにニュースが頭に入らない……


「んん……?」


 そこでいよいよスマホのバッテリーもヤバくなってきたところでようやく睡が目を覚ました。


「はっ!? お兄ちゃん!? ええ!? 私、寝ちゃってましたか?」


「それはもうよく眠ってたよ」


 俺は一安心してそう言う。


「お兄ちゃん……私に何かしましたか?」


「何もしてないって」


「チッ……ハッ!? よだれが!?」


 どうやら自分がだらしなく寝ていたことに気がついたらしく、口のまわりを拭って俺に向き直る。ようやく膝の上の頭をどけてくれた。


「お兄ちゃん、ありがとう……じゃなくて!? ごちそうさま……でもなくて!? ご迷惑かけました!」


「いや、普通にありがとうでいいって」


「お兄ちゃん……私にそそられましたかね?」


「この顔に対してか?」


 俺はスマホを取りだして妹のだらしない寝顔を表示して見せてやる。


「ぴゃおおおうううううう!?!?!?」


 睡が言葉にならない悲鳴を上げた。


「おおお兄ちゃん!? どうかその顔のことはご内密に……」


「ハハハ……分かってるって、ナイショ、だな?」


「はい! 二人だけの秘密です!」


 そう言って笑顔で俺の隣を離れていった。俺は座っていると膝が妙に軽く感じてその日はソファに座るのはやめたのだった。


 ――


「ふぇふぇふぇ……ぐへへ……フフフ……」


 お兄ちゃんとの秘密が一つ増えました! やりました! 私の大勝利です!


 とまあ秘密にした内容が私のだらしない寝顔だという点に目を瞑れば割と悪くないないようです。なのですが……


 眠れません……


 お兄ちゃんの膝が頭の下に無いベッドで、お昼寝をたっぷりした私は結局眠れないのでした。

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