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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年夏休み編

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ペプシが無い

「お兄ちゃん! 大変です!」


 睡の叫びがキッチンに響く、声が高いので非常にやかましい……


「なんだよ、ゴキでも出たか?」


 睡が悲痛な叫びを上げる。


「ペプシが切れてます! ストックが切れてました!」


 思った以上にどうでもいい内容で呆れる、好きにすればいいじゃないか。


「買えば? プリカにチャージするなりコンビニでギフト券を買うなりすれば箱単位で買えるだろ?」


 睡はその意見に対して不服そうに言う。


「お兄ちゃん、私が常飲しているものを切らすという失態をしたのが分かりますか? 下手をすればコカコーラだって切らしてたかもしれないんですよ?」


「俺はペプシでもオランジーナでもモンエナでもいけるから……」


 睡は悔しそうに歯ぎしりする。


「ぐぬぬ……お兄ちゃんのなんでもいける舌はガバガバですね……もうちょっと味にこだわりましょうよ……」


 睡はなんだか不服そうだが、もっといろんな飲み物にチャレンジするべきじゃ無いかと思うんだがな。睡はペプシ過激派なのでそれについて言っても聞かないだろうな。


「じゃあお兄ちゃん、コーラを買いに行きましょう! 私にとっては非常事態です!」


「いや、普通に別の飲み物にチャレンジすればいいじゃん? コーラ以外にも俺が買ってるエナドリのストックとかもあるしさ……」


 そう、清涼飲料水自体は結構いろいろ買っている、いつも何かが冷蔵庫に入っているのでペプシがちょうど切れていると言った事態も十分起こりえる、コカコーラの管理は俺がしているがペプシコーラの管理は睡の担当だ。後は適当に好きなジュースを突っ込んでいるので自分の飲み物は自分で管理するのが基本だ。


「いけません! 私にはこだわりがあるのです! この際ペプシならジャパンコーラでも妥協するので一緒に買ってきましょう!」


 現在冷房のよく効いた室内にいる、外は熱波が地表を焼いていてアスファルトからジリジリと暖まった空気が目に見えるくらい浮き上がってきている。無論そんな場所にわざわざ出ようとは思わない。


「外がアホみたいに暑いしさ、素直に冷えてるもので妥協しないか? この暑い中出歩くのは苦行に近いんだが?」


 睡は深く頷いて一言言う。


「お兄ちゃん、苦しい時は分け合うのが兄妹ってものですよ?」


 ニコッとしてから言うのだが……


「暑さは二人で行っても半分にはならないんだよなあ……」


 その言葉はついぞ睡に届くことは無かったのかスマホを取りに部屋に帰っていた。幸いなことに現金はSuicaにチャージ済みなので財布を用意する必要は無い、便利な世の中になったような気がするが、スマホが財布の代わりになっただけのような気もする。


「お兄ちゃん! お待たせ!」


 そう言って睡はスマホを手に持ってきた、キャッシュレスもいいものだが現金を全く持たないというのも不安だな……古い考えなのだろうか? 俺は多少の現金とApple Watchそれにスマホを手に持って暑い中出歩く羽目になったのだった。


 玄関を出て、即熱気が吹き込んでくる、俺たち冷房をフル活用しているような連中からすればまるで護摩行のごとき暑さだ。出来ることなら自販機で冷たいサイダーでも飲みたい気分だった。しかしサイダーなら冷蔵庫にあるので自販機で勝つ必要は無い。そもそもその辺りからして俺が出張る理由が全く無いんだ。


「睡、何処に買いに行くんだ?」


「うーん……スーパーだとジャパンコーラなんですよね。本家ペプシが飲みたいのでコンビニにしましょう!」


「俺の舌ではどっちも一緒な気がするんだがな……」


 睡は胸を張って言った。


「私は違いの分かる女ですから!」


 そうして近所のファミマに行ったのだった。近所にあるのがたまたまファミマだったのでここに来たが、あの独特の入店音は入って早々目立ってしょうがないので変更して欲しいな。あの音が大きいため、入ってきたら中にいる客からの注目を浴びるのはしょうがない、喫茶店の控えめなドアベルを見習って欲しいものだ。


 ふと、睡の方に目をやると、カゴに大量のペプシを詰め込んでいた。まとめて飲んだら糖尿病になってもおかしくないような量だ。


「お前……そんなに買うの?」


「もちろんです! お兄ちゃんだってこの暑い中何度も出かけたくは無いでしょう?」


 思うところは有るが、確かにペプシが切れているなんて理由で真夏や真冬に付き合わされたのではたまったもんじゃ無い、ここはこれをまとめて買っておけば当面のところそれを飲んで過ごせるし問題無いか……


 満足いくまで買ったのか、レジに向かおうとする睡に俺は声をかけた。


「睡、プリカにチャージしておくかギフト券買っておいた方がいいんじゃないか? 家から出ること無く必要な分が買えるぞ?」


 睡はこちらに向いてため息を一つ吐いた、まるで俺が何も分かっていない幼児のようなものを見る目で俺を見ている。


「お兄ちゃん、今日はペプシが切れたからお兄ちゃんとデートが出来たわけです。つまりこれからも私の買物に付き合ってくれる方が嬉しいのは確定じゃ無いですか?」


 要するに『苦行は道連れ』という意味だろうか? そんなことを主張するからクラスで浮くんだぞ、とは思ってしまったが、ついぞ口に出さなかった。俺にもそのくらいの分別はある。


「お兄ちゃん、私がここで純正のペプシを買い支えておけば定番商品としてずっと店頭に並ぶかもしれないんですよ? そこで遠慮するなど愚の骨頂!」


「まあ、好きなら買えばいいんじゃないか? ところで見たところ手が重さで震えてるみたいだが持って帰れるのか?」


 睡は黙って俺を指さした。


 ピンポンパンポーン


 コンビニを出た俺の両手には、環境を無視してレジ袋をもらってなお、ギリギリ持てる量のペプシが入った袋があった。


「睡、もうちょっと手伝ってくれてもよくない!?」


「私は店内で散々もっていたので」


 しれっと答える睡に少しイラッとした。


 と、まあ、そんなことがあったのだが無事家にたどり着いた。俺は疲れがヤバかったのでコーラでは無く冷蔵庫に入っているモンエナのオレンジをごくごくと飲み干した。


 多少はさっぱりと意識がはっきりしてくる。そこで俺が汗だくなのに思い至った。


「睡、ちょっとシャワー浴びてくるな」


 睡はチッチッチと指を振った。


「こういうときは妹に先を譲るべきですよ?」


 その断言で俺は順番を後に回されたのだった。せめてもの救いは冷房が効いていることだろうか、もっともきつめの設定なのか汗が冷えて必要以上に体温を奪い逆に寒くなってきてしまった。


 自室に戻ろうか思案していると睡が出てきて「お風呂空きましたよ」というので俺は即お風呂でシャワーを浴びて、ペプシを運んだ時にかいた汗を流した。


 キッチンに戻ると睡が「二本の」ペプシを冷蔵庫から取り出していた。


「お兄ちゃん! 頑張ってくれたのでペプシを一本サービスしますよ!」


 そう言って俺の前に一本差し出された。


 それを飲んで美味しかったのだが、その美味しさが炎天下での労働の後だから美味しいのかコカコーラより優れているのかは俺には判断がつかなかった。


 ――妹の部屋


 私としたことが……抜かりました。ペプシの在庫切れなんてほとんど起こしたことが無いのになんでこの暑い日によりにもよって無くなるんでしょうね……コカコーラ社の陰謀でしょうか?


 私はお兄ちゃんがペプシをそれなりに美味しそうにしていたのを思いだして、細かいことはいいのでお兄ちゃんと趣味があるかも知れないということだけでも、少し心が躍るのでした。

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