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一線

「お兄ちゃん……ねーお兄ちゃん……」


「なんだよ?」


 今日の睡の声色はどこか真剣味を帯びていた。俺も少し緊張してしまう。


「お兄ちゃんは私のことどう思ってますか?」


 その言葉の真意を測りかねながら俺の気持ちを答える。


「最高の妹……かな」


「それじゃダメなんですよ!」


 突然激高する睡。


「私はお兄ちゃんの全てでありたいし、お兄ちゃんの特別になりたいんですよ!」


「そんなことを言われても……俺はお前の兄だし、それ以上の関係があるか?」


「言う必要ありますか? 私はお兄ちゃんのことが好きなんですよ、あらゆる意味で、ね」


 ドキリとする。それは最近睡が踏み越えてこなかったラインの話だ。そこを超えれば兄妹には戻れないかもしれない、そんな恐怖があった。


「今更なんでそんなことを……」


「私は我慢ができないんです! お兄ちゃんが私のことを見ていてくれないのが大いに不満なんですよ! 私はお兄ちゃんの全てになりたいんです! 妹であり母であり姉であり娘であり友達であり、恋人でありたいんです!」


 俺はため息をつく。


「欲張りだなあ……」


「今更でしょう?」


 その言葉に俺は考える。何時までこの関係が続けられるのだろうか? 正直いい加減にしておくべきだと思った。きっといつかはこの話にたどり着いたのだろう、避けられない結末に……


「なあ睡……いろいろと面倒なことになるのは分かってるのか? きっとロクなことにならないことだって多くあるぞ?」


「覚悟の上ですよ」


 その言葉にはふざけている様子は欠片もなかった。ただただ俺を求めるだけの心であり、全てを失うという覚悟も秘めていた。


「お兄ちゃんは私と地獄に付き合ってくれる気は無いんですか?」


 俺の返答は決まっていた。


「――――――――」


 そうして俺と睡の物語は一つの終わりを迎え、新しい関係が始まった。それはきっと世間一般からすれば歓迎されるものではないのだろう、褒められることは決してない。


 それでも俺たちだけは『満足』していた、きっとこれからも後悔も絶望もするだろう。それでもこの隣にいる希望だけは守っていこうと思う、それが俺の決意だ。


 きっと未来は暗く、曲がりくねっているのかもしれない。でも俺の隣にいるコイツがいればどこへだって行ってもいい、俺はそう思えたのだった。

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