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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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ソシャゲのいつもの

「うーん……」


 睡がスマホの画面を見ながら唸っている。もはやいつものことなのでとやかくとは言わない。


 そう、大型IPのソシャゲがこの前リリースしたばかりだ。ソシャゲに目がない睡なら確実にプレイしていると思われる。ついでに言うならそれがMOBAだったため声をかけて敗戦しようものならグチグチ言われることが確定しているので俺は放っておく、君子危うきに近寄らずとはよく言ったものだ。


 味方ガチャ等という碌でもない言葉があるとおり、集団で戦うとギスギスはつきものだ。即死ギミック付のボス戦で全滅することを大縄飛びと揶揄されるのも当然と言っていい。


「お兄ちゃん!」


「俺は付き合わないぞ」


「まだ何も言ってないじゃないですか!」


「どーせソシャゲを始めようって言いたいんだろう? 俺は今でさえログインボーナスで一杯一杯の数をやってるんだからな? これ以上増やしたらキャパを超えるんだよ」


 しかし睡は食い下がる。


「まあまあ、そう言わずに! やれば絶対面白いですよ! 面白くなかったら桜の木の下に埋めてくれて構いませんよ!」


 なんだか『ババーン』という効果音が聞こえてきそうな言葉を言っている睡。いつものことなので相手をしていられない。


「死体を埋めたところで桜が咲くまで半年くらいあるがな……」


「そういう細かいところが嫌われるんですよ!」


「お前マルチで負けると機嫌が悪くなるじゃん? ゲームを楽しむことなら好きだけどそれを元にギスギスはしたくないかなあ……」


 ギスギスオンラインという名前の某ゲームのリスペクトはしなくていいです。


「そんな言い方はないでしょう? 負けるも勝つも運次第って言うじゃないですか!」


「納得はしないんだろう? 大体俺が初日からプレイしているお前とマルチ組んだりしたら大変なことになるだろうが!」


 ゲームによるがプレイヤーランクが違うとマルチが組めなかったり、レベル水準を低い方にデバフされることが多い。


「それにボイチャをしたくない、俺がコミュ力無いことくらい知ってるだろう?」


 ボイスチャット怖い、大体なんで地声でチャットをしなければならないのか、普通にVOICEROIDでも使えるようにしてくれればいいのに……


「どうもお兄ちゃんには成功体験が足りないようですね! いいでしょう! 私がお兄ちゃんを見事に勝利させてゲームの楽しさを教えてあげましょう!」


「なんでそういう結論になるのかなあ……」


「さあお兄ちゃん! レッツインストール!」


「分かったよ、分かったからくっついて俺のスマホを覗き込むんじゃない」


 詮索されるとやましいものが無いわけでもないのでそれに目を付けられる前にゲームをストアからインストールした。


 光回線なのでそれなりの大きさのゲームでもあっという間にダウンロードが終わってインストールされる。俺のスマホのストレージにこのサイズの何回プレイするか分からないゲームをインストールするのはどうなんだろうなあ、等と思いながらインストールが進んでいく。


「お兄ちゃん! インストールできましたか?」


「できたよ、アカウント登録するからちょっと待ってくれ」


「はーい」


 俺はパスワードマネージャを起動してメールアドレスを登録してパスワードを生成する。許される限り最長の文字数でパスワードを決める。


 人間の記憶力の限界に挑む気は無いのでパスワードの管理はソフト任せになってしまっている。どこもかしこもパスワードを要求するので人間の脳がコンピュータに追いつかなくなってきている。


「それではフレンド登録しましょうね! お兄ちゃんとのフレンド登録……ふふふ」


「フレンドどころかストーカーなんだよなあ……」


「何か言いましたか?」


「気のせいじゃないかな」


 耳ざとい奴だ。というかゲームらしいゲームをスマホでやる事って滅多にないよな……基本数値を比べて勝ち負けのあまり戦略性の無いゲームに慣れきってしまった。


「フレンドコードはコレなので招待送ってくださいね?」


「はいよっと……」


 俺はフレンド画面を開いて招待コードを入力する。名前は『NEMU』というアカウントが登録された。


「これでいいのか?」


「ちょっと待ってくださいね……」


 睡はスマホを見つめて操作してからゆっくり頷く。


「問題無いですね、では早速マッチを始めるとしましょうか!」


「え!? いきなり!? 俺はまだチュートリアルもやってないんだけど……」


「やって覚えろって話です!」


 そう言ってスマホを操作する。俺のアプリにマッチの招待が届いた。


「やるしかないか……」


「お兄ちゃん! なんでも度胸ってやつですよ!」


「はいはい、男らしいことで……」


 こうして俺たちの初陣が始まった。


「お兄ちゃんは上ルートをお願いしますね! 私は中央を抑えますので」


「下は?」


「初期からのフレンドが抑えてくれるそうなので安心していいですよ!」


 俺はバーチャルパッドを操作して上の方向へ移動する。敵陣の破壊が目標だが3vs3なので向こうも上に戦力を割いていた場合俺がいきなり殴り倒される可能性もある。


 ドキドキしながら上方に移動すると、敵陣がガラガラで鎮座していた。


「え? 敵は……?」


「フフフ……中央と下に全力を割いてきてますからね、私がいれば一騎当千の戦力ですよ? 向こうだって他に割いていたら私たちが本部を抑えると分かっているんでしょう」


「そういうもんか……」


 こうして俺の初陣は無人の拠点を制圧するという大事なミッションで終わった。悲しいことに俺に戦力を誰も差し向けてこなかった。どうやら放置して置いても良い敵と判断されたらしい。


「なあ睡、なんで俺の方向へは誰も来ないんだ?」


「ああ、対戦前に相手のステータス確認できるんですけど、レベルキャップまで到達して制限にかかっていたら、制限項目が黄色の文字になるんですよ。お兄ちゃんの場合は全部真っ白でしょうから怖いのは私たちと判断したんでしょう」


 なんとも悲しいことだが俺のキャラは邪魔されることはなく敵陣を一つ抑えたところで向こう側からサレンダー(降参)が入って試合は途中でコールドゲームとなった。


「やりましたね! 私たちの勝利です!」


 睡は大変嬉しそうにそう言っていたが俺は自分が戦力と見なされなかったことを悲しく思うのだった。


 その晩、俺は睡に追いつくのは無理にしても野良で参加して足を引っ張らない程度には頑張ることにしてチュートリアルをプレイした結果翌朝起きるのが辛くなってしまったのだった。


 ――妹の部屋


「このミッションクリアの画面はスクショしておきましょう!」


 私たち二人の共同作業! なんて素敵なんでしょう!


 私は満足感もたっぷりに眠ることができました。


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