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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹とウィークリーボーナス

「ぎゃあああああああああああああああああああ」


 朝からやかましい声が響き渡る。アレはソシャゲで失敗した時の泣き声だ、俺はそういうのに詳しいんだ。


 俺は朝のコーヒーを飲むためにキッチンに向かう。日曜日の朝から元気な声を上げている睡も直に来るだろう。


「お゛に゛いじゃあああああああああああああああんんん」


「うるさいぞ、どーせまたソシャゲでランク落ちしたとかそんなことだろ? いつものことじゃないか静かにしろよ」


 俺に抱きついて泣いてくる睡、いつものことだがよくよく飽きないものだと思う。


 ピッ


「コーヒーのドリップが終わったからとりあえず飲ませろ、話はそれから聞いてやる」


「うぅ……お兄ちゃん……最近冷たくないですか?」


 肩を落としてそう言う睡。


「そう言ってもな……しょっちゅうしょうもないことで泣きつかれてたらそりゃあそうなる」


 睡は頬を膨らませて不満をあらわにする。


「お兄ちゃんは冷たいです! ちょうど妹がとんでもないことになっているというのに!」


 俺は目を細めて聞く。


「で、その『とんでもないこと』って何?」


 睡はそれについて滔々と語った。


「私のプレイしているゲームのウィークリーボーナスをもらい損ねたんです! ウィークリーですよ!? 一週間! 一週間が無駄になったんですよ!」


「無駄って……別にいいじゃん」


「だってウィークリーボーナスってガチャ一回分の石なんですよ! それだけのものをフイにしたら悲しくもなるでしょう!」


 俺は知っている。コイツが恒常ガチャで輩出されるキャラは大抵のゲームでコンプしている。そもそもガチャなんて引く必要性があまり無いんだ。


「どうせガチャっていっても一回くらいの分だろ? 一週間ミッションコンプして三百円くらいの得って割に合わなくないか?」


「お兄ちゃんは分かっていませんね。ガチャを一回引くということは天井に一回分近づくということですよ! コレはとても重要でしょう?」


 俺は睡に聞いてみる。


「天井まで回して欲しいキャラがいるのか?」


「うーん……まあ新規実装される可能性はありますし……」


「今は無いんだろう?」


 睡は首を振る。


「ちっちっち、可能性はゼロではないんですよ? 可能性があるだけでそれを追い求めるのがゲーマーなんです! 昔のゲーマーは小数点以下の確率に夢を求めたらしいですよ?」


「それを求めた人はガセ情報に怒ってたけどな」


 大丈夫な攻略本の神髄といったところだろうか。


「とにかく! お兄ちゃんは私を慰めてください! ウィークリーを逃したかわいそうな私を慰めてください!」


「はいはい、かわいそかわいそ……」


 俺の慰め方も雑になる、たかだかソシャゲのウィークリーボーナスにここまでこだわれるのも大変な生き方だなあ……


「もっと心を込めてくださいよ!」


「ガチャ一回分の心なんてこの程度しかこもらんよ」


 睡の不平をさらりと流す、一々聞いていたらキリがない。


 俺は手に持ったカップから温度の下がったコーヒーを飲む。話しているうちに温くなってしまったが、苦味が俺を冷静にさせた。


「ガチャなんて単発で回そうものならノーマルしか出ないじゃないか? 十連ならともかく単発回せないからってやけになるなよ」


 ソシャゲのガチャは一回回すだけならノーマルが普通に出る。多くのソシャゲで十連を回せば最低一枚はレアが輩出される物が多い。単発ガチャで最高レアを当てるなんて神業のようなものだ。


「でも……お兄ちゃんとこの前デートした日にログイン忘れてたんですよ? コレはもう半分はお兄ちゃんに責任があると言ってもいいのでは?」


「責任転嫁にもほどがある」


 しかも誘ったのは睡の方じゃねーか……俺には一ミクロンたりとも責任はねーよ。


 理不尽な責任論に呆れかえってしまう。


「とにかく! 私は大変悲しんでいるのです! ちゃんと慰めて甘やかしてください!」


「はいはい、お詫びに俺が料理でも作ろうか?」


「いいいいいいええええ!?!?!? 結構です!? 俄然元気が湧いてきました! なので昼食は私が作るのでお兄ちゃんの料理は勘弁してください!」


「一体俺の料理はどういう扱いなんだ……」


 睡は淡々と答える。


「普通の料理は炒めただけで蛍光グリーンにチャーハンが発色したりしませんよ? アレですか? ゲーミングチャーハンでも目指してるんですか?」


「俺は普通の料理を作っただけなんだがな……」


 じゃあお昼は睡の作った料理か。悪くない、少なくとも俺よりは料理が上手いのだろう。問題は味音痴の俺には味の違いがさっぱり理解できないということだ。


 俺は自分のスマホを取り出しデイリーミッションをこなす。バトル数回が地味に面倒くさい、スキップチケットを実装すればいいのに、などと思ってしまう。


 ボスを倒してちょうどデイリーボーナスを獲得できたので俺はスマホをしまって本を読むことにした。最近出たラノベだが積み本にしていたのを少しずつ消化していっている。


 そして読み終わり中途半端なところで終わったので続きが出ているのか確認する。今読んだ巻の発行年が去年なので遅筆でなければおそらく打ちきりなのだろう、新刊は確認できなかった。


 謎が謎を呼ぶと本の帯には書いてあったが、謎を呼んでいるのは確かだな。問題があるとすればそれが謎のまま完結すらしていない永遠の謎になったことだろうか。


「お兄ちゃん! ホットサンドができましたよ! お昼にしましょう!」


 そうして食卓に着いてから睡に一言問いかけた。


「今日はログイン忘れてないな?」


「? ああ! そうでした! ログインしないとウィークリーもらえないんでした!」


 睡はログインだけしてログボをもらったら、スマホをしまっていつも通りの昼食となった。


「ソシャゲも程々にしておけよ?」


そんな俺の忠告に睡は曖昧に微笑むだけだった


 ――妹の部屋


「うぅ……私としたことが、ウィークリーをもらい忘れるなんて不覚にもほどがあります!」


 今まで続いていたログイン日数の記録もリセットされてしまいました。ログインだけでもしようと誓っていたのに……


 それというのもお兄ちゃんが安易に私とのデートなどに応じるのが悪いのです! つい浮かれてしまったじゃないですか!


 私は理不尽な怒りを抱えながら眠りました。

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