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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹のフルコンボ

「はぁ……」


 睡がため息をついている。理由は知っているのだが俺が口を出すと不機嫌になりそうなのでやめておいた。


 実のところ、さっき睡に声をかけたタイミングが悪かった。リズムゲームで終盤だったのだ。睡はちょうどフルコンボ手前だったらしく俺に気をとられて一回外してしまった。そしてフルコンボは泡となって消えたのだった。


「じー……」


 俺の方をじっと見てくる睡、暗に謝罪と何か賠償をしろといいたいのだろう。フルコンボが決まってから俺に返答するという選択肢もあったはずなのに俺に気をとられたのは睡だ。正直なところ俺にそんなものの責任を求められても困るんだが。


「じー……」


「あのさあ睡、何か言いたいことがあるなら言ってくれよ? そりゃあ少しくらいは悪かったなって思ってるよ? でもそんな恨みがましく見られても困るんだよ」


 俺が正直にそう言うと睡は少し考え込んでから答えた。


「お兄ちゃんが私のフルコンを阻止したということで少しくらいは私に優しくしてくれてもいいんじゃないかなーって思うんですよね」


「別に止めたくて止めたんじゃないが……つーか音ゲーは部屋でやってくれないかなあ」


「お兄ちゃん! 悪いと思ってるんですよね?」


 にこやかな睡の迫力に負けて俺は頷く。


「では、お兄ちゃんが私のいうことを聞くくらいのことはなんでもないですよね?」


「う……ま、まあ多少のお願いは聞くかな」


「よろしい! それではデートしましょう!」


 ニッコリした良い笑顔でそう言うね無、とても楽しそうだった。


「デートって……何をするんだよ?」


「ふふふ……そうですね、お兄ちゃんに今回使ったスタミナ分の補填用のプリカでも買っていただきましょうかね?」


 ここは片田舎、デートスポットなどというしゃれたものは存在しない、多少変かもしれないがGoogleのプリカを売っているようなところでさえここではデートに行く場所の選択肢の一つだった。


「じゃあコンビニでいいか?」


「もうちょっと場所は選びましょうよ……せめてショッピングモールくらいでしょう?」


「ちょっと遠いじゃん」


「はいはい、グダグダ言わない! 自転車で行けるんだから十分近いんですよ!」


 そんな暴論がまかり通るのが我が家の力関係だった。ちなみに自転車でも結構歩いていかないといけない程度には距離がしっかりと有った。だからこそ俺が渋ったわけだ。


「ほら! いきますよお兄ちゃん!」


 そうして手を引っ張られるまま俺たちはショッピングモールへと向かった。


 そうしてしばらく自転車をこいで、ようやくモールに着いた頃には俺は息を切らしていた。一方睡の方は平気そうな顔をしているので基礎体力の違いだろうか?


「はいはい、お兄ちゃんはだらしがないですねえ、体力くらいつけておいてくださいよ?」


「うっさいな……俺はインドア派なんだよ」


「しょうがないですねえ……手を引いてあげますから速く歩いてください! 帰りの時間もちゃんと計算しておかないといけないんですよ?」


 今からここからの帰途を考えると気が重くなった。しかし睡は平気そうなので俺がグダグダ言うのも申し訳ない気もする。


「わかった……歩く……歩くから急かさないでくれ」


 俺は何度かそういって深呼吸をしてから歩を進めた。


「よろしい」


「で、あの曲の練習にいくら使ったんだ? 課金額くらいは返すぞ?」


 スタミナ課金している以上それなりの練習はしたのだろう。


「え!? ああ……そうですねー……アイス買ってくれたらチャラにしますよ?」


「え? そんなもんでいいのか?」


「ええ! 私は心の広い妹ですから! ……初回な……よねえ……」


「どうかしたか?」


 なんか露骨に動揺している様子だが……


「まあまあ、さっさとアイスクリームショップに行きますよ!」


 グイグイ引っ張られて俺たちはモールを歩いて有名アイスクリームショップに並んでいた。


「睡はなんにするんだ?」


「私はストロベリーで、お兄ちゃんは?」


「俺はチョコチップかなあ」


 そうしてしばし待っていると順番が来たので二つアイスを注文して受け取った。


 先にイートインに座っている睡の所へ行って一つを渡す。


「これでいいのか?」


「ええ、私のメンタルは随分と癒やされましたよ?」


「さいでか」


 その辺のスーパーでかって来りゃあいいじゃないかと言ってはいけない、睡は随分と雰囲気を大事にする奴だ。百円で買える格安アイスでは納得しなかっただろう。


「まあそれはそれとして、課金用カードを買ってもらえるなら歓迎はしますよ?」


「はいはい、買ってあげるよ、千五百円でいいか?」


 俺はバリアブルカードの最低金額を提案した。一万円とか平気で課金するコイツとは多分理解し合うことはできないだろう、俺は微課金派だ。


 無課金では周回が難しいときだけ少し石を買っているのだが、睡の方は毎回イベントがあるとその時一番高いイベント用のアイテムを買っている様子だった。よく家計に影響が出無いものだとは思うがそこが節約の秘訣なのだろう。


「お兄ちゃんにしては気が利きますね!」


 良い笑顔でそう言う睡。しっかりとここのショップの一つでプリペイドカードを売っているのは知っている。


 俺が半分くらいアイスを食べたところで睡が俺のアイスにパクついてきた。


「『お兄ちゃんの』アイスもいいですね!」


「お前は遠慮というものを知らんのか……」


「お兄ちゃんのアイスは妹が自由に食べてもいいんですよ?」


 無茶苦茶な理論を振りかざす睡。議論では勝てないと判断して俺は諦めた。


 そうしてアイスも食べ終わったところでモールの電気店に向かう。そこにはちゃんとプリペイドカードが吊り下げてあった。


「じゃあお兄ちゃん! コレをお願いしますね!」


 そう言って一枚を差し出してくる。俺はそれを受け取ってレジに向かった。レジで千五百円を払ってそのカードをアクティベートした。


「ほら、これでいいのか?」


「問題無いですね、お兄ちゃんはちゃんと責任をとってくれるいいお兄ちゃんです!」


「はいはい、責任はとったのでもうチャラな?」


「しょうがないですね、コレで許してあげましょうか。でも時々デートに誘ってくれてもいいんですよ? 例えカードを買ってもらえなくてもね?」


 そうして俺たちは帰宅をすることになったのだが、その時に食べたアイスクリームのカロリーを全部使ったんじゃないかというくらいにはくたびれたのだった。


 ――妹の部屋


「いやあ、棚ぼたってあるんですねえ!」


 私は思わずほくそ笑みます。何しろあのフルコンボは『初挑戦』だったのですからね。お兄ちゃんには一言も伝えてはいません、聞かれませんでしたからね。


 私の信条「聞かれてないことまで答えない」ということを実践しているだけですから!


 そして私は音ゲーを止めて課金した金額は妹ゲーのガチャに使ったのでした。

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