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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹はコーヒーが飲みたい

「眠い…………」


 眠たそうにしている妹を見て俺は言う。


「睡、コーヒー飲むか?」


 気怠げな妹は気のない返事を返してくる。


「いただきましょうかね……最近エナドリばっか飲んでましたし」


 睡はそう言って机に突っ伏した、どうやらあまり体調が良くないようだ。どうせまたソシャゲでも夜更けまでプレイしたといったところだろうか。もはやいつものことなので詮索する気にもならなかった。


 最近新しく買った全自動コーヒーメーカーに豆を足して自動モードでスイッチを入れる。水は昨日の夜に既に朝の分を入れてしまっている。


 ゴリゴリと豆がミルで挽かれる。香りが漂ってくるが睡の方は無反応だった。


 コポコポと沸騰したお湯が垂れていく。サーバーに黒々とした液体が溜まっていく。


「睡、砂糖とミルクはいつも通りでいいか?」


「うーん……今日はブラックでお願いします」


 睡が珍しいことを言う。


「お前ブラック飲めたっけ?」


「眠いんですよ……ふぁ……ブラックの方が目が覚めそうじゃないですか?」


「そういうことなら」


 俺は二つのマグカップを取り出し、砂糖もミルクも無しで二杯のコーヒーを注ぐ。香りはいいが、睡が飲めるかどうか不安だった。フワッと香りが広がるが、睡の方は気にした様子も無い。


「ほら、これ飲んで目を覚ませ」


「ありがとうございます……」


 睡はカップを受け取って口をつける、非常に苦々しい顔をしながら少しずつすすり始めた。


 俺はコクリと一口飲みながら極端に不味いわけではないことを確認する。睡のカップが減っていないのは不味いからではないのだろう。


「で、どうしたんだ? またソシャゲを深夜までやってたのか?」


「ちがいますよぅ……人をソシャゲ廃人みたいに言わないでください……眠いのは漫画を読んでたからですよ」


「漫画ねえ……スマホで読んでたのか?」


 睡は頷く。


「そうですよ、それが何か?」


「いや、スマホだと細かいところが読めないんじゃないかと思ってな」


 そう聞くと睡は不敵に笑う。


「その程度のことを考えない私ではないですよ! コレを見てください!」


 睡が差し出した手には随分と大きめのAndroidスマホが乗っていた。タブレットほど大きくはないが、スマホにしてはあまりにも巨大だった。


「でかいな……」


「ええ、電子書籍用に昔買ってたやつなんですよ」


 そういえばAndroidはiPhoneと違ってアプリ内からデジタルコンテンツに課金できるんだったか……? iPhoneに慣れた身からすると多少便利そうに思えた。


「へぇ……で何を読んでたんだ?」


「兄妹モノの本を適当に買いあさって片っ端から読みあさってました」


 どうやら妹は欲望に忠実らしい。なんだかコーヒーが少し苦く感じた。


 俺は昨日の夜、隣の部屋で何が起きているかを知らずに呑気に眠っていたようだ。というか兄妹モノが夜更けまで読みあさるほどたくさん見つかることに驚いた。


「ちなみに魔法のカードが数枚犠牲になりました」


 睡がそう付け加える。俺はプリペイドカードが一体何枚使用されたのか聞くのは精神衛生上良くないと判断して詮索するのはやめておいた。


「ふぅ……ちょっと目が覚めたので朝ご飯作りますね」


「無理するなよ? 一応ゼリードリンクはまだ何個かあるはずだからな」


 睡は困った顔をする。


「お兄ちゃんはすぐそうやって楽をしようとするんですから……妹の手料理にもっと感謝してくださいよ?」


 睡はキッチンに立って卵を割っている。ベーコンも焼いているようでいい香りが漂う。


「ところでさ?」


「なんですか?」


「どんな本読んでたんだ? 兄妹モノとは聞いたがそんなにたくさんあったっけ?」


 睡は顔を真っ赤にして素っ気なく答えた。


「お兄ちゃん、本物の十八禁書籍って案外少ないものなんですよ?」


「えぇ……」


「ちなみに私が読んだのはちゃんと全年齢版ですよ? まあ言論の自由って素敵ですよね?」


「言論の自由ってそういうことに使うために保証されてるんじゃないと思うがな……」


 先人達が必死になって勝ち取った言論の自由がエロ描写を正当化するために使われていると知ったら泣くんじゃないだろうか……


「お兄ちゃん、朝ご飯ですよ! どうぞ!」


 そういってプレートが置かれた。普通にトーストとベーコンエッグが乗っていた。ああやって話しながらでも平気で料理が作れるあたり腕は確かなのだろう。


 パンにバターを塗って囓りつつ、卵を箸で食べていると睡が俺の方を見て楽しそうにしていた。


「何かいいことでもあったのか?」


「いえ、昨日読んでいたマンガの出だしがこんな感じだったなって思いまして……」


 勝手に日常に不健全な描写を見出すのはやめて欲しい。内心の自由や言論の自由を自由に使いこなす妹には呆れる。


「マンガとリアルを混同しないようにな?」


「ええ、リアルのお兄ちゃんがベストなのには変わりありませんよ」


 どこか会話に行き違いがあるような気がするのだが、一応は理解してくれたようなので俺も黙っておくことにした。


「睡、課金はほどほどにしておけよ?」


「ええ、先人も偉大な言葉を残していますからね! 『博打は手をつけてはいけない金に手をつけてからだ』こんな言葉がある位なんですから私の課金なんて大したことないですよ!」


 先人も随分と罪深い言葉を残してくれたものだ……しかしコイツがお金に困っているのを見たことがないので確かに問題の無い使い方をしているのだろう。俺には想像もつかないがな。


「ただ……ただですねえ……」


 睡が突然泣きそうな目でこちらを見てくる。


「石が……石を買うお金が無くなったんですよ……」


 どうやらソシャゲに使う金を電子書籍に使ってしまったらしい。違いは大して無いし、なんならその場で使い切って終わりなガチャに使うよりは電子書籍に使った方が建設的ではないかと思うのだが、睡は心底後悔しているようだった。


 ガチャはほどほどにしておけといいたいのだが、無茶はしないのが睡の課金の特徴なのでそれを言うのはやめておいた。


「ごちそうさま」


 そんなことを話している間に食べ終わってしまった。


「じゃあ学校へ行きますかね……」


「そんなに悲しそうにして……ガチャがそんなに引きたいのか?」


「そりゃあそうじゃないですか! あの肌がひりつく感覚は何度味わっても楽しいですよ?」


「頼むから自分で金を稼ぐようになっても廃課金するのはやめてくれよ?」


 妹の将来が心底心配になった。無理の無い課金とかいって食費を削るタイプだなコイツ。


「大丈夫ですよ!」


「その根拠はどこから出てくるんだかな……」


 睡は微笑みながらいった。


「お兄ちゃんより優先することはないですからね!」


 そう言ってさっさと玄関に行ってしまうのだった。


 俺はなんだかキツネにつままれたような気分で少したじろいだものの、時間が無いので玄関に向かうのだった。


 ――妹の部屋


「このお兄ちゃん最高ですね! どうして私のお兄ちゃんはこのくらい過激にならないのでしょう?」


 私に魅力がないんですかね……


 そんな考えを振り切ります。きっと私の魅力にお兄ちゃんが気づいてないだけですね!


 私は電子書籍をじっくり読んで心の安定を得てから就寝するのでした。

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