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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹とジェネリックエナドリ

 俺がキッチンでゴミを片付けていたところ、なんだかゴミ箱が重いことに気がついた。


 燃えないゴミのゴミ箱でありそれなりに重いことは不思議ではない、しかし全開捨てた時に比べて明らかに重量が増していた。


「あ、お兄ちゃんゴミ捨てですかー? コレもお願いしますね」


 そう言って睡は袋に入った缶をテーブルに置いた。ドシリと音がするくらいにその袋は重かった。


「お前なぁ……ため込みすぎだぞ?」


「大丈夫ですよ! 安いですから」


 そういう問題ではないのだがなあ……というかエナドリっぽいのだがこんなに買う金があるんだろうか?


「なあ睡、エナドリに頼りすぎじゃないか?」


「そりゃあ安いんですから買うに決まってるじゃないですか!」


「安いったって百五十円くらいはするだろうが……」


「五十円」


「は?」


「一本五十円ですよそれ」


「五十円って……その安さは怖くね?」


 そんな安いエナドリあるのかよ……普通に怖いんだけど……


「安いの見つけちゃいましてね、ついつい箱買いしちゃったんですよ」


 エナドリを箱買いとはまた気前のいいことだ。あまりお勧めはしたくないが……


「ちなみにカフェインが足りない時は錠剤を使ってます!」


「カフェイン錠剤は寿命を縮めるからやめなよ……」


 アレは確かに効く、しかしカフェインをそのまま摂るとどうにも健康上良くないような気がしてならない。もっとも、俺も行き詰まった時などにお世話になるからとやかく言えた立場ではないのだが。


「一度使うとやめられないんですよねえ……体がカフェインを求めるっていうか」


「気持ちはよく分かるがあんまり危険なことに手を出すのはお勧めしないよ、せめてコーヒーにしないか? 俺が淹れるからさ」


 睡は複雑そうな表情をする。


「お兄ちゃんのコーヒーは確かに美味しいんですけどカフェイン錠剤とはまた別のジャンルなんですよね……」


 俺はため息をついて言う。


「コーヒーが欲しいなら一杯いれてやるよ。カフェイン多めがいいんだな?」


「そうですね、錠剤に頼りすぎるのも良くないですし、お兄ちゃんの一杯を頂きましょうか」


 俺はミルに豆を放り込み、タンクに水を注ぐ。今回はカフェイン多めとのことで水の量に比べて豆を多めに使用した。


 ガリガリと豆が砕かれて沸騰したお湯が注がれていく。ドリップ音を聞きながら睡に聞いてみた。


「一体何にそこまでエナドリを使うんだ?」


 睡から即返答が返ってきた。


「そりゃもちろんゲームですよ?」


「ゲームに身を削るのはやめて欲しいのが正直な感想かな」


 ゲーミングというのは大概たいしてアピールポイントが無い時にとりあえず主張しておくものだが、毒にも薬にもならない分まだマシなのかもしれない。


 少なくともカフェインを大量に撮るよりはかなりマシであろう事は予想に難くなかった。


 なお、ゲーミングと名のつく飲み物には大抵カフェインが入っているが、錠剤に比べたら微々たるものだ。少なくとも一錠100mgとかをポンと摂取できたりはしない、錠剤一錠と同じ量のカフェインが欲しければそれなりに飲む必要がある。


 コボッ


 そんなことを考えているうちにドリップが終わったようだ。


 二つのマグカップを取り出して二人分を注ぐ。いい香りが漂ってくる。


 コトリと二つのマグカップをテーブルに置いて睡に最近の話を聞いた。


「で、なんでそんなにゲームに熱心になってたんだよ?」


 コクリと睡が一口コーヒーを飲んでから愚痴ってきた。


「ランク落ちしたんですよ、こんなことがあっていいはずがありません! そんなわけで落ちたランク分のスコアを稼ごうと思って必死だったわけですね」


「それにしたってエナドリだけでもこれだけの量だぞ? それに錠剤を追加なんてしたら体に悪いだろうが」


 ちっちっちと睡が指を振る。


「お兄ちゃん、私は明日死んでもいいような生き方をしてるんですよ? 負けてもいいやなんて生き方はできませんね!」


 なんとも刹那的な生き方が好きなやつだ。


「そんな生き方をしてるといつか死ぬぞ?」


「人は誰だって死ぬものでしょう?」


 誰も屁理屈で返せとは言っていないのだが……とにかく睡は長生きしたい気持ちはないらしい。


「俺はお前に長生きして欲しいんだがなあ……」


 ちょっとあざといことを言ってみる。


「まあお兄ちゃんが居る間は死にませんから安心してください。ちなみにお兄ちゃんが居ないと私は死にますよ?」


「命を使ってお願いをするのはやめろよ……どこかのカードゲーマー並みに命を気軽にかけるんじゃない!」


 一生のお願いという言葉はあるが、たいていの人は一生のお願いを人生で何回もしている気がする。


 そんな命の軽さを睡が公言してからコーヒーをグビグビ飲み干した。


「プハァ! やっぱりお兄ちゃんのコーヒーはいいですね!」


「それは何より、で、カフェイン錠剤をやめる気にはなったか?」


「ああ、ちょうど切れてるのでしばらく補充をやめましょうかね……お兄ちゃんのご希望ですし」


「ついでにこの量のエナドリもどうかと思うぞ?」


 睡はそれについては首を振る。


「エナドリ無しに生きていけと!? 私は一日の始まりをエナドリで過ごしてるんですよ?」


「そんなことを堂々と言われてもなあ……」


 酒やドラッグよりはよほどマシなのだが、単に比較対象がおかしいだけでエナドリで一日を始めるのもどうかとは思う。


 ちなみに現在睡が捨てた缶の中にはサメ柄のものだったり、牛が描いてあったりする比較的王道のものから、どっから持ってきたのだろう? と疑問になるような見たこともない物も捨ててあった。


 どうやらいろいろなエナドリを経てたどり着いたのが『安ければいい』という基準らしい。酒で言うならストロングなアレが近いだろうか? いや飲んだことはないんだけどね?


「大体、その辺のジュースより安く売ってるんですよ? そりゃあ飲むに決まってるじゃないですか!」


 えぇ……ジュースより安いのか……


「どれだけ安いんだよ……」


「ざっくりコンビニで500ml一本買うお金で三本買ってあまりが出るくらいですかね」


「安すぎるだろう……」


 コンビニが高いのかコレが安いのかよく分からなくなってきた。


「エナドリってジャンル開拓した人が高値をつけただけで安さを求めればどこまでだって安くなるんですよ!」


「牛や怪物に失礼だろうが!」


 睡はまあまあと俺をいなしてから冷蔵庫から一本取りだしてきた。


「私はもう飲んでますし、お兄ちゃんも一本どうですか?」


 睡の差し出してきたエナドリを飲もうか少し悩んだのだが、ここで断ったらコイツが今日飲むエナドリが一本増えるなと直感して素直に受け取った。


「どうぞどうぞ」


 睡に促されてプルタブを開ける。


 ゴクリと飲むとごく標準的なエナドリの味が広がった。


「どうです? 結構いけるでしょう?」


「不味くはないけど……」


 缶を回転させて成分表を見る。当分とカフェインとアルギニンをガン積みした成分表になっていた。


「飲んでたら健康に悪そうだな……」


 俺のそんな一言を睡は鼻で笑った。


「生きるために多少の犠牲はつきものですよ!」


 そう言って笑う睡の顔にはどこか狂気じみたものを感じたのは俺の気のせいだろうか?


 なお、その夜は意外と値段の割にカフェインがちゃんと入っていたらしく寝付けないのだった。


 ――妹の部屋


「プハァーーーー! 生き返りますねえ!」


 私は新しく補充したエナドリから一本を飲んでいました。それは安いものだったのですが……


「お兄ちゃんも気に入ってくれませんかねえ……」


 私はお兄ちゃんと趣味を合わせたい妹なので、お兄ちゃんの好みにコレがかなうといいなあと思うのでした。

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