表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/179

妹と新しいスマホ

「ふぅむ……コレはなかなか……」


 睡が何やら小声でスマホの画面に声を上げている。何を見ているのだろうか? まあこの手のことは関わらないのが一番と昔から言われているので俺はしれっと無視をしようと目をそらして目の前の食事に取りかかった。


 スクランブルエッグもトーストもよくできており、卵の少しの塩気がパンへの食欲をそそる。今日も何事もない平和な一日……


「お兄ちゃん! これどう思いますか?」


 平和な一日とはいかなかったようだ。睡がこちらにスマホの画面を突き出してくるので、俺は嫌々その画面を見る。そこにはよくあるスマホの画像が写っていた、普通じゃないとすれば価格が100$って事くらいだろうか。


「お前……またスマホを増やす気か? いくら安いからって地雷を踏みにいくのは感心しないが」


 100ドルのスマホって時点で明らかに地雷であるはずなのに、睡が表示しているサイトはAmazonではなくもちろんキャリア公式でもなく、直訳したのであろう怪しい日本語が飛び交ういかにもなサイトだった。


「ふふふ……地雷の一つや二つ踏み抜かないと物事を見抜く目はつきませんからね!」


「100ドルでAndroidがまともに動くわけないし、値段の時点で核地雷なのが目に見えてるんだよなあ……」


 呆れてため息をつくものの、睡の方は掘り出し物を見つけたという気分らしく楽しげにしていた。


「そもそもその手のサイトクレカ使えないところが多いだろう? 要するにクレカ会社も『あそこはやべー』って認識だから使えないようになってるんだよ、支払い方法にクレジットカードが無い時点でヤバいサイトだって気がつこうよ」


 俺の嘆願も睡は全く気にしていないようで、スマホを眺めながら楽しそうにしている。あとあと泣くことになっても知らないからな……


「ところでお兄ちゃん、一つ聞きたいのですがスペックがRAM8G、ROM128Gになってるんですけど信用できると思いますか?」


「ないな、現時点でその値段でそのスペックはまず無い。ベンチ回したら落ちるレベルのものに決まってる」


 俺も遊びでガジェットを買うことはあるが一通り遊んだら捨てて構わないレベルのものしか買うことはない。日本円にして一万円を超えるものを怪しげなネット通販に頼るもんじゃない。


「ちなみに解像度はフルHDらしいです」


「もうすでにヤバい香りしかしない」


「なんと5G通信に対応!」



「やめろよ! どこからどう考えても地雷案件だろうが! わざわざ地雷を掘り起こして踏みつけるような真似をするんじゃない!」


 そりゃあまあいずれ6G通信が登場して実用レベルになって半導体の集積密度が一気に増えればあり得ない話じゃない。しかし現時点で5Gすらまともに整備されておらず、ミリ波なんてほとんど飛んでないのに対応を謳うのはどう考えても危険信号だ。


「お兄ちゃんは慎重すぎるんですよ! もっとリスクをとっていかないと立派な大人になれませんよ?」


「立派な大人は地雷ガジェットを収集したりしないんだよなあ……」


「というかそんなもの買って一体何に使う気だ?」


「お兄ちゃんとのメッセンジャー用と、動画用はもうあるのでギリギリ動けばいいレベルのSNS用が欲しいんですよね」


 情報が抜かれるとまでは言わないが……正直全くお勧めしないブツだった。どう言えば分かってもらえるんだろうな。


「素直にそこそこのミドルレンジ一個買ったらどうだ? それなりに使える外国産をAmazonでも売ってるだろう?」


 睡はそこは否定しないらしい。分かっていても地雷に突っ込む性格は誰に似たんだろうか……


「でもせっかく安いのですし……」


 言っても聞かなそうなので俺は自分の黒歴史を睡に披露することにした。


「ちょっと待ってろ、『安いもの』がどういうものなのか教えてやる」


「へ!?」


 あっけにとられる睡を尻目に俺は自室へと帰り、押し入れからジャンク用の箱を取り出す。その中から安さだけに釣られて買ったものを一個手に取り睡のところへ持って行く。


 キッチンでは睡が相変わらすスマホを眺めていたので、俺が一台の()()()()()を差し出す。


「なんですかコレ? お兄ちゃんのスマホですか?」


「ああ……そうだな。昔安かったからノークレームノーリターンで買った一台だ」


「へぇ……」


 ジャンク品でも定期的にバッテリーの膨らみ等がないかチェックしているので充電不要で起動する。その使えないスマホがホーム画面を表示した。


「何の変哲もないホームですね……お兄ちゃんの趣味全開のアイコンが並んでるかと思ったんですが」


 俺だって根拠無く買い物に反対しているわけではない、苦い経験から学んだことから安いだけのものを買うのに反対しているんだ。


「ちょっと操作してみるといい」


「へ!? お兄ちゃんのスマホを自由にしていいんですか? 最高ですね! 私の手腕で調べつくしてあげましょう!」


 そうして睡はとりあえず動画の閲覧履歴を見てみようと思ったらしい、YouTubeのアプリを開いた、そしてスマホは……無慈悲にもそのアプリを強制終了した。


 始めはたまたま何かとかち合った偶然の落ち方だと思っていたようで四、五回ほどそれを繰り返して『このスマホではYouTubeアプリが動かない』と言うことに気がついたらしい。


 次いでSNSを検索しようとツイッターのアプリを起動する、起動した瞬間先ほど同様に落ちた。


 我慢強い睡は各種メッセンジャーを起動する、アカウントを移行していないので起動しても何も無いのだがそもそも起動しないので何も無いことにすら気がつけないのだった。


 次第にアプリの起動で全て落ちることを学んだらしく、今度はブラウザを開こうと試みる。


 ブラウザは一応起動した、しかし睡の指が動いてからそれなりにラグが発生してからスクロールやページ遷移が行われる。イライラしている様子を隠そうともしないが粘り強くYouTubeまでたどり着いたらしい。


 そしてページを開いた瞬間……ブラウザが落ちた。


「はぁ!? なにコレ!? 全く何も動かないじゃないですか!? ネットすら見れないってコレは実はスマホに見えるただの石版なのでは……」


 結局、睡が俺のスマホの中身を僅かばかりでも覗くことは出来なかった。そもそも重要なデータをいれていないというのもあるし、ファイラすら起動すると落ちるので中身がなんなのか、ファイルの中身以前に名前すら表示されなかった。


「お兄ちゃん、コレどこで買ったんですか?」


「どことは言わないけど日本のお隣の国の激安通販」


「えぇ……」


 あきれ果てたように睡が言った。


「お兄ちゃん、もう少しお金の使い方は考えた方がいいかと思いますよ?」


「お前が買おうか悩んでたものだってこれとそう変わらんよ」


「マジですか……?」


「マジ」


 そう、まともな価格帯からかけ離れている商品がまともであるわけは無いのだった。


 そんなどうしようも無い事実を突きつけられ、いよいよ睡は落ち込んで諦めたのだった。


 余談だが浮いたお金でその日の夕食のお肉がいつもより多かったのだった。


 ――妹の部屋


「うぅ……お兄ちゃんの黒歴史……そそりますが残念ですねえ……」


 私は新型を買ったら旧型はお兄ちゃんの部屋の近くに隠してかんs……もとい、見守りカメラとして運用するつもりでした。残念ですがその野望は崩れ去ってしまったようでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑面白かったと思った方は上の☆から評価を入れていただけると大変励みになります
 強制ではありませんしつまらないと思ったら☆1を入れていただいても構いません
 この小説で思うところがあった方は評価していただけると作者が喜びます
 現在のところ更新頻度も高いのでそれを維持するモチベとしてブックマークには日々感謝しております!
 更新を追いたい方はブックマークしていただけるととても嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ