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お兄ちゃんの側には私がいるからそれでいいよね? 正ヒロインになりたい妹の努力と執念の日々!  作者: にとろ
一年生二学期

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妹と頭痛薬

 今日、俺は一人で朝食を食べている。対面に睡はいない。何故かと言えばアイツが頭が痛いと言いだしたからだ。偏頭痛自体は割とあるが、朝起きられないほどのものは珍しい。


 いや、実際は一度起きてきたのだが端から見てさえ体調が悪そうだったので寝てろと言ったのだった。さすがにあの状態で朝ご飯を作ってくれとは言えなかった。


 ロキソニン、カロナール、アスピリン、PL、セデスと様々な頭痛薬のストックを持っている俺だが、あそこまで酷いように見える頭痛に効くかどうかは怪しかった。


 個人的に最強の純正アスピリンと行きたいところだが、睡はまだ朝食を食べていない。空っぽの胃に放り込むにはアスピリンは少しキツすぎた。


 結局、ややマイルドなカロナールかPLを持って行こうと考えた。頭痛だけならカロナールでいいだろう。風邪による頭痛ならPLの方がいい。


 なんにせよ本人へ聞かないとどういう症状なのか分からないので睡の部屋へ向かった。


 そして部屋の前に来た時に……ドアが開いた。


「あ゛……お兄ちゃん……朝ご飯作りますね」


「寝てろ! 頼むから寝ててくれ!」


 俺は懇願した。顔色が白っぽくなっている妹に働いてもらうわけにはいかない。


「でも……」


 しょうがないな……


「じゃあ今日はお前が寝てる間は俺がつきっきりで看病するよ」


「さあて横になりますかね! すぐに寝たくなりました! ……あいたた……」


 頭痛に響くくらいの勢いの良い答えをしてベッドに横になったのだった。まあこれで起き出して無茶はしないだろう。


「よし、じゃあ痛み止めを持ってくるから待ってろ」


「ふぁい……」


 睡はそう言ってベッドに倒れ込む。俺は睡に『吐き気とかは? 熱はあるか?』と尋ねてみた。


「どっちも無いですね」


 と答えが返ってきたので風邪では無く偏頭痛だろう。風邪薬のPLである必要は無いと判断してカロナールを部屋に取りにいった。


 部屋に戻って引き出しを開けると幸い全ての薬が揃っていた。睡の空腹状態を考えると今はカロナールにするべきだろう。半分が優しさでできているアスピリンの錠剤は持っていなかった。まあアレの優しさの正体はただの胃薬だし、主成分はアスピリンなので俺はどちらかと言えば純正の方が好みだった。


 カロナールを6錠、シートから切り取って持って行く。


「睡、入るぞ?」


「どうぞー! うぇ……」


 元気よく言って頭に響いたのか苦しげな声が返ってきた。節度を守って欲しいなあなどと考えていた。


 ドアを開けると睡はちゃんとベッドで寝ていた。顔色が多少青白いが、寝ていた分だけ多少先ほどよりマシになっているようだった。


「ほら、これを飲め」


 スポドリのボトルとカロナールを一錠手渡す。睡はそれを愛おしそうに受け取ってからシートから出して飲み込んだ。


 これで多少はマシになるだろう。そう思いながら部屋を出ようとしたところで呼び止められた。


「お兄ちゃん! 看病してくれるんですよね?」


 その言葉を思い出して俺は睡の部屋に留まることにした。


「お兄ちゃん」


「なんだ?」


「大分楽になってきました、で、ちょっとお願いなのですが……」


「なんだよ、この際お願いくらい聞いてやるぞ」


「じゃあ手を握っててくれますか?」


 布団から出ている睡の手を握る。ぬくもりと柔らかな感触が伝わってくる。心地よい感触だった。


 俺は睡の手を左手で握りながらもう片方の手でスマホを操作していた、睡の方はあっという間に眠ってしまったのだが、その手を離すのがなんだか約束を違えることになるような気がしたので握ったままにしていた。


 昼飯は……ゼリードリンクのストックがまだあったな。胃に何か入れればアスピリンだってそれほど問題無く飲めるはずだ。空腹状態だと強力な鎮痛剤が使いづらいという困ったことがあるがこの調子なら昼飯くらい食べられるだろう。


 俺は片手でソシャゲのデイリーボーナスをもらってスリープさせる。手持ち無沙汰になり再びスマホを使ってニュースを検索する。これといって興味のあるものは無かった。


 そろそろ時計の短針が真上を指し始めていたため睡を起こして部屋を出ることにした。


「睡、昼飯持ってくるからちょっと離れるぞ」


「お兄ちゃんの手料理ですか?」


「俺だっていい加減自分の腕前くらい分かってるよ」


 そう言って睡の手を離してキッチンに向かった。ブロックのカロリーメイトかゼリードリンクかで悩んだのだが、結局ゼリーの方が飲みやすいだろうと言うことでゼリーのパウチを一つ持って、自分用にカロリーメイトを持って睡の所へ行った。


「ほら、昼飯だ。食べたらアスピリンを持ってくるよ」


「ありがとうございます、大分落ち着いてきましたよ……朝は頭が割れるかと思いましたからね」


「それはまた随分と……」


「偏頭痛ってどうにもならないんですよね……お兄ちゃんも時々痛そうにしてますよね?」


「ああ、多分遺伝みたいなものなんだろうな……」


 理不尽な話だがこの手の体質は遺伝してしまうことが多い。兄妹揃って頭痛持ちというのもおかしなものではない。


「じゃあアスピリン取ってくるな」


 そう言って俺は部屋に戻ってアスピリンを一錠、シートから出して持って行く。理由は不明だがアスピリンはシートを二錠ずつに切り取れる線が入っていない。不便な気もするが何か理由があるのだろうか。


「睡の部屋に入って睡にスポドリのおかわりと大きめの錠剤を一つ手渡す。アスピリンは何故か錠剤のサイズが大きいなとは思う。その分効き目も強いのだが……


 コクリと錠剤を飲み下してもう一度俺の方に手を伸ばしてきた。俺は手を握ってやると睡はすぐに目を閉じた。


 俺はやることが無く、床に寝て手を握ったまま意識を落としてしまった。


 気がつくと睡が俺の顔を覗き込んでいた。


「うわっ!?」


「お兄ちゃん、人が大変な時に寝ないでくださいよ……」


「ああ、悪い……」


「まあお兄ちゃんのおかげですっかり良くなったのでいいとしましょうか」


 微笑みながらそう言う睡。偏頭痛は理由も無く起きるが、良くなる時も理由は無いので時間が解決してくれることがほとんどだった。


 睡は元気そうに言った。


「じゃあお兄ちゃん! 夕食は任せてくださいね!」


「大丈夫なのか?」


 心配してそう尋ねるが睡はガッツポーズをして答える。


「お兄ちゃんのおかげですっかり良くなりましたよ! ま、晩ご飯を楽しみにしててくださいね!」


 そう言って俺の手を引いて部屋を出た。寝ている間に一体何があったのかは分からないが、睡の顔が少し赤くなっていたことを疑問に思ったが、体調は間違いなく良さそうなので俺は深く考えるのをやめた。


 ――妹の部屋


「はぁはぁ……お兄ちゃんの寝顔……いいですねぇ……じゅる……」


 お昼に私が少し寝ている間、お兄ちゃんも寝てしまったのかベッドの脇で無防備な寝顔を晒していました。それは大変愛おしいものでしたが、私は寝ている相手に何かをするほど無茶はしません。


 お兄ちゃんが気づかないようにそっとスマホを手元にたぐり寄せて無音カメラを起動します。


 ポチポチポチ


 シャッターのボタンを連打して大量に撮った成果を眺めながら私は幸せに眠りにつくことができました。

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